国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。「Eurosurveillance」は、多くの国の人が集まる場で人々が病原体に曝露した場合には、クレジットカード情報を使用することの有効性が注目されること、有効な国際協力ネットワークが重要であることを指摘する記事を掲載している。WHOによると、2023年にはコレラによる年間死亡者数が著しく増加した。
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【Eurosurveillance】クレジットカード情報および迅速な国際協力の重要な役割
Eurosurveillanceは、2023年フランスでのラグビーワールドカップ開催中にさまざまな国籍の患者が発生した食品由来ボツリヌス症アウトブレイクに関して、クレジットカード情報および迅速な国際協力の重要な役割を指摘する記事を掲載している(2023年11月)。
2023年9月10日、フランスのBordeaux大学病院は、ボツリヌス症が疑われる患者3人を地域の公衆衛生当局に報告した。3人全員が、利用日は異なるがBordeauxにある同じ飲食店Aを訪れ、缶詰のイワシのマリネを喫食していた。当該製品は、2023年9月1日に飲食店Aが製造した缶詰1バッチの一部で、9月1〜10日に提供されていた。
患者の国籍はさまざまであった。Bordeauxでは患者発生日前にラグビーワールドカップの2試合が行われ、多くの国から観光客が来ていた。飲食店Aの利用客を特定して連絡を取り、本アウトブレイク患者の居住国の公衆衛生当局に報告するため、調査が開始された。ボツリヌス症の重篤性およびアウトブレイク拡大防止対策の緊急性を考慮し、飲食店Aで使用されたクレジットカード情報を利用して、当該イワシを喫食した人の調査が行われた。
飲食店Aで注文された料理および使用されたクレジットカード情報のスクリーニングにより、イワシの缶詰を喫食した29人が特定された。このうち12人はすでに疑い患者に特定されており、14人はフランスまたは英国の保健当局の報告によると症状を呈していなかったことから、本アウトブレイクの患者から除外された。残り3人は症状を呈した英国国民で、9月13日に英国の救急治療室に急送されボツリヌス抗毒素を投与されていた。
フランス国内では9月11〜12日に、救急診療科などの医療機関に向けて専用の健康警報通知システムを介して多くの情報が発信され、一般市民には地域・国の報道発表を介してアウトブレイク情報が提供された。他国に対しては、欧州疾病予防管理センター(ECDC)のEpiPulseを介して情報が発信された。患者の居住国または患者治療に関わった国(英国、アイルランド、カナダ、米国、ドイツ、スペイン)の各公衆衛生機関の協力により、会議が開催された。9月11日、フランスの食品安全当局は、飲食店Aに対し、食品の保管、取り扱い、加工、販売および提供を禁止した。
フランスで発生した今回の食品由来ボツリヌス症アウトブレイクでは、曝露した人の迅速な特定および重症患者の発生防止のために、クレジットカード情報を使用することの有効性が注目された。また、2024年フランスでの夏季オリンピック開催を念頭に、多くの国の人が集まる場で人々が病原体に曝露した場合には、有効な国際協力ネットワークが重要であることも強調されている。
【WHO】コレラによる年間死亡者数が著しく増加
世界保健機関(WHO: World Health Organization)が発表した2023年の世界のコレラ発生状況の統計データから、患者数および死亡者数の増加が示された。2022年と比較すると、2023年の報告患者数は13%増加、死亡者数は71%増加した。コレラは予防可能で治療も難しくない疾患であるが、2023年はコレラによって4,000人以上が死亡した。
2023年にコレラ患者の発生を報告した国の数は45カ国であり、2022年の44カ国および2021年の35カ国から増加した。報告患者の38%が5歳未満の小児であった。
コレラは、汚染された食品や水を介して伝播する急性の腸管感染症である。衛生設備が不十分な地域でとくに被害が大きい。2023年は、紛争、気候変動、安全な水・衛生設備の不足、貧困、低開発、および紛争の発生・再発や天災による避難民の移動などがコレラアウトブレイクの増加の要因となった。
(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)
目次
【世界保健機関(WHO)】
1. コレラによる年間死亡者数が著しく増加―世界保健機関(WHO)が2023年のコレラ発生状況のデータを発表
【米国疾病予防管理センター(USCDC)】
1. デリカウンターで薄切りされた食肉製品に関連して複数州にわたり発生しているリステリア(Listeria monocytogenes)感染アウトブレイク(2024年9月25日付更新情報)
【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and Feed)
【Eurosurveillance】
1. ラグビーワールドカップ開催中に様々な国籍の患者が発生した食品由来ボツリヌス症アウトブレイク:クレジットカード情報および迅速な国際協力の重要な役割(フランス、2023年9月)
【アイルランド保健サーベイランスセンター(HPSC Ireland)】
1. アイルランドの胃腸疾患および人獣共通感染症(カンピロバクター症、2022年)
【ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)】
1. 安全な食品:公共施設における食品由来疾患を防ぐために(推奨事項のリーフレットを改訂)
【ProMED-mail】
1. コレラ、下痢、赤痢最新情報(55)(54)
- 食品安全情報
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
- 食品安全情報(微生物)No.21(2024.10.16)
- https://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2024/foodinfo202421m.pdf