核技術を用いたシガテラの観測

No.16(2024.08.07)

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国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。国際原子力機関は、核および同位体技術を通じてシガテラのモニタリング能力を構築している。欧州食品安全機関は食品のリスク-ベネフィット評価に関するガイダンスを更新した。フランス当局は、アスリート用サプリ等に関するリスクを改めて警告している。米国FDAは食品中のマイクロプラスチックに関するウェブサイトを開設した。

注目記事

【IAEA】核技術で検出される魚介類汚染

 シガトキシンは、主に熱帯地域の藻類が産生する毒素である。食物連鎖により特に大型の魚に蓄積する可能性があり、摂取した人間にリスクをもたらす。このような有害藻類の大発生(harmful algal blooms, HAB)により汚染された魚介類の摂取が原因で、世界中で毎年数千人の中毒者が出ている。国際原子力機関(IAEA)は、他の方法と比較して水産物中のバイオトキシンをより迅速に特定し、発生を正確に特定することができる核および同位体技術を通じて、シガテラのモニタリングの能力を構築してきた。

 2023年、国連食糧農業機関(FAO)、IAEA、政府間海洋学委員会は、HAB早期警告システムの構築に関する技術ガイドを発表しているので紹介する。

【EFSA】食品のリスク-ベネフィット評価に関するガイダンス

 欧州食品安全機関(EFSA)が食品のリスク-ベネフィット評価(RBA)に関する2010年のガイダンスを更新した。RBAの対象となる化学的ハザードは、主に評価対象の食品に含まれる汚染物質である。RBAは、対象とする問題の複雑さのレベルと、データやリソースの入手可能性により異なる。従って本ガイダンスは、継続的に進化するRBAに資するいくつかのアプローチを提供することを目的としている。更新版では、従来の段階的RBAアプローチを保持しつつ、いくつかの新たな要素を含めている。

【ANSES】アスリート用フードサプリメントと強化食品のリスク

 タンパク質、アミノ酸、植物抽出物で強化したフードサプリメントや食品を、アスリートはプロもアマチュアも、筋肉の増強や体脂肪を減らすために摂取している。フランス食品・環境・労働衛生安全庁(ANSES)は、2016年に発表した最初の警告を踏まえ、アスリートの健康と薬物検査への影響の両方に対する当該製品の摂取リスクを再び警告する。

 2016年から2024年2月の間に、アスリート用フードサプリメントの摂取に関連する可能性のある有害影響154件がニュートリビジランス計画へ新たに報告され、そのうち18件はとくに深刻なものと判断された。2人が死亡し、4人が命に関わる症状を呈した。心血管系への影響が最も多かった。

【FDA】食品中のマイクロプラスチック及びナノプラスチック

 米国食品医薬品局(FDA)が、食品中のマイクロプラスチック及びナノプラスチックに関する専用ウェブサイトを開設した。主に環境を通じてマイクロプラスチックとナノプラスチックがフードサプライに入り込んでいることを示すエビデンスがあるが、食品で検出されるレベルがヒトの健康にリスクとなることを示すものではない。食品中のマイクロプラスチックに関する研究は多数あるが、標準化された定義、参照物質、サンプルの収集と調製の手順、適切な品質管理などの情報が不足しており、現状の科学では、規制上のリスク評価に情報を提供できる能力は限られている。FDAは、マイクロプラスチックとナノプラスチックに関する規制上の決定を目的とした分析法の開発、妥当性の確認、実施のための一般的なアプローチを提供した。

目次

【FAO】

1. 会議報告書:食品安全性化学物質リスク評価における腸内マイクロバイオームに関するFAO技術会議

2. Codex

【IAEA】

1. 核技術で検出される魚介類汚染

【EC】

1. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】

1. 食品に含まれるテトラブロモビスフェノールA(TBBPA)とその誘導体に関する科学的意見の更新

2. 飼料に含まれる汚染物質のリスク評価における動物の食餌暴露

3. フードチェーンにおける新興化学物質リスクのスクリーニング(SCREENER)

4. EUにおける化学物質への総暴露量を推進させる行動のロードマップ

5. 食品のリスク-ベネフィット評価に関するガイダンス

6. 食品や飼料の成分へのリードアクロス法の適用

7. システマティックレビューの自動化を支援するデータ基準の開発戦略

8. 公衆衛生とリスク評価を背景としたバイアスのリスクに焦点を当てたヒトの観察的疫学研究の根拠の迅速な評価のためのツールの開発

9. 新規食品関連

10. 食品接触物質関連

11. 農薬関連

【FSA】

1. 飼料用昆虫の飼育に使用される現在許可されていない廃棄物ストリームの安全性を評価するためのデータ情報の提供

2. 蜂蜜リスクプロファイル

3. 消費者調査(2024年4月〜2024年6月)

4. 国境通知

5. リコール情報

【COT】

1. COT会合:2024年7月9日

【BfR】

1. マイクロプラスチック粒子は脳卒中のリスクを高める? BfRは血管の沈着物(プラーク)に含まれるマイクロ及びナノプラスチックに関する研究を評価した

【ANSES】

1.2023年の年次報告書

2. アスリート用フードサプリメントと強化食品のリスク

3. ANSESとANSMのパートナーシップ強化

【FDA】

1. 食品中のマイクロプラスチック及びナノプラスチック

2. 疾病調査:Diamond ShruumzブランドのMicrodosing Chocolate Bars(2024年6月)

3. FDAは消費者に対し、OPMS(Optimized Plant Mediated Solutions)Black Liquid Kratom(クラトム)を使用しないよう警告する

4. FDAの公衆衛生警告(シナモン製品中の高濃度の鉛含有)

5. FDAは米国における乳児用調製乳の供給、市場競争、規制に関する米国アカデミーの研究を発表する

6. 警告文書

7. リコール情報

【EPA】

1. EPA、農薬の飛散(スプレードリフト)から人々を守るための新たな早期対策を発表

2. EPA、農薬マラチオンからの保護案を発表

3. EPAは3種のネオニコチノイドの種子処理用途に関する職業暴露評価の更新版を発表

4. バイデン-ハリス政権、有害物質規制法の下、市民を有害な化学物質への暴露から保護するための最新の行動を取る

5. EPA、殺虫剤から絶滅危惧種をよりよく保護するための戦略案を発表

6. EPA、シンジェンタ社提案のジカンバ除草剤に関する意見公募を開始

【USDA】

1. 最新情報-2024年7月19日

2. 化学実験室のガイドブック

3. 食品安全とアレルゲンへの認識の栄誉賞

【CPSC】

1. CPSCは、摂取の危険性があるため、3種のマグネット玩具の使用を直ちに中止するよう消費者に警告;マグネット玩具に関する連邦安全規制違反

【CFIA】

1. カナダ政府は、卵製品の代替となる植物ベース食品の表示に関するガイダンス案についての意見募集を開始する

【FSANZ】

1. 食品基準通知2. リコール情報

【APVMA】

1. 農薬規制ニュースレター2024年7月号

2. パラコートとジクワットの再検討に関する規制決定案

3. APVMAが農業・動物用化学物質のリコールプロセスを明確化

【TGA】

1. 安全性警告

【香港政府ニュース】

1. ニュースレター

2. プレスリリース

【MFDS】

1. 日本産輸入食品の放射能検査の結果

2. 合理的な食品添加物基準の改善で多様な食品開発を支援

3. 韓国の鶏肉・水産物・ハチミツ製品の欧州連合(EU)輸出資格を維持

4. 食薬処、デンマーク獣医食品庁の韓国産辛味ラーメンの回収措置を迅速に解決!

5. 食薬処、社会福祉施設及び産後養生院など給食施設の衛生点検、18カ所を摘発

6. リコール情報

【SFA】

1. SFAは食品業界との5年間にわたる強力な協力関係を祝う

2. プレスリリース

【その他】

・ProMED-mail2件

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.16(2024.08.07)
https://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2024/foodinfo202416c.pdf