国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。欧州食品安全機関が食品に含まれる低分子の有機ヒ素化合物のリスク評価に関する科学的意見を発表した。EUのフードサプリメントワーキンググループは、フードサプリメントへの添加が禁止または制限されるべき物質のリストを含む第一次報告書を発表した。
注目記事
【EFSA】食品中の低分子有機ヒ素化合物のリスク評価
欧州食品安全機関(EFSA)が、食品に含まれる低分子の有機ヒ素化合物のリスク評価に関する科学的意見を発表した。EFSAは2009年に食品中のヒ素について評価を実施したが、当時はデータ不足のため低分子の有機ヒ素化合物や、アルセノベタイン、アルセノ糖(arsenosugars)、アルセノ脂質(arsenolipids)のような複雑な有機ヒ素化合物のリスクについては評価できなかった。今回の評価では、他の低分子有機ヒ素化合物についてはデータが不足していたため、対象をモノメチルアルソン酸(MMA(V))とジメチルアルシン酸(DMA(V))に限定し、暴露マージン(MOE)のアプローチを適用することにした。
MMA(V)については、ラット試験での下痢による体重減少を重要な健康影響としたベンチマーク用量信頼下限値(BMDL10)の18.2mg MMA(V)/kg体重/日を基準点として導出した。MMA(V)の推定摂取量に基づくMOEは健康上の懸念を示すものではなかった。一方、DMA(V)については、ラット試験での膀胱腫瘍の発生の増加を重要な健康影響としたBMDL10の1.1mg DMA(V)/kg体重/日を基準点として導出した。EFSAはDMA(V)には遺伝毒性と発がん性がありそうだと判断し、健康影響への懸念を生じるか否かの判断の規準となるMOEを10,000とした。DMA(V)への推定暴露量をもとに算出したMOEが10,000を下回ったことから、EFSAは食品に含まれるDMA(V)への暴露はヒトの健康への懸念を生じると結論した。
※ポイント:今回の科学的意見は、2024年1月に発表された食品中の無機ヒ素に関する科学的意見に次ぐものです。ECは他に、複雑な有機ヒ素化合物に関する評価と無機ヒ素および有機ヒ素の複合暴露に関する評価の2つの科学的意見の提出をEFSAへ要請しており、2025年初旬に発表を予定しているとのことです。食品中のヒ素については、これまでより毒性の強い無機ヒ素が注目されてきましたが、今後はデータの充実とともに有機ヒ素と合わせて総合的にリスクを検討することが求められるでしょう。
【BVL】「フードサプリメント」作業部会の第一次報告書
EUのHeads of Food Safety Agencies(HoA)が2019年に設立したフードサプリメントワーキンググループ(HoA WG FS)が、ヒトの健康に対する潜在的リスクを踏まえ、フードサプリメントへの添加が禁止または制限されるべき物質のリストを含む第一次報告書を発表した。WGは、ドイツ連邦消費者保護食品安全庁(BVL)とオランダ食品消費者製品安全庁(NVWA)が議長を務め、26名のメンバーからなる。2020年から作業を開始し、本報告書では117物質が分類され、優先順位が付けられた。
※ポイント:EUでは、フードサプリメントに添加できるビタミン・ミネラルとその化合物、並びにその他の物質をRegulation(EC)No1925/2006で規制しています。本報告書では、当該規則のもとフードサプリメントへの添加を禁止または制限する候補物質として最終的に13物質(植物含む)を提案しています。さらに65物質は新規食品制度の対象となることも指摘しています。EUでは新規食品と判断されたものについては、EFSAの評価で安全性が確認され、ECによる認可を取得できなければ食品(フードサプリメント含む)および食品の原材料として使用することはできません。
【WHO】
(注目記事のまとめ:安全情報部第三室)
目次
1. 世界的なトランス脂肪排除に関するWHOの5年間のマイルストーン報告書は2023年までの最新の進捗状況を示す
2. 出版物
【FAO】
1. EU-FAO、より効率的で包括的、強靭で持続可能な農業食料システムに向けてパートナーシップを活用
2. Codex
【EC】
1. 持続可能な食品ビジネスとマーケティングを奨励する行動規範
2. 廃棄物枠組み指令:理事会、廃棄物枠組み指令の改正に向けた協議を開始
3. 出版物
4. 査察報告書
5. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)
【ECHA】
1. 検査官は、製品に含まれる混合物の分類と表示をチェックする
2. ECHA、有害化学物質1件を候補リストに追加
【EFSA】
1. 食品中の低分子有機ヒ素化合物のリスク評価
2. EFSAは一流の科学者を5年任期でパネルに採用
3. 食品添加物関連
4. 食品酵素関連
5. 健康強調表示関連
【FSA】
1. 羅漢果(ラカンカ)の非選択的水溶性煎じ液:規則(EU)2015/2283第4条2項に基づく新規食品としての位置づけの判断
2. ポイントオブコンタクト技術のガイダンス
【COT】
1. COT会合:2024年5月21日
【BVL】
1.「フードサプリメント」作業部会の第一次報告書
【BfR】
1. 高レベルのカプサイシンには健康リスクがある
2. 食品安全の強化―意見交換の促進
3.「mikroco-wissen(ミクロの知識)」が英語で開始
【ANSES】
1. 汚染物質の検出:試験所の能力を評価する新たなスコア
2. ANSESとフランス生物多様性庁は生物と環境の健全性を支援するパートナーシップ協定を結ぶ
【VKM】
1. ルチンとケルセチン-フードサプリメント摂取の健康リスク
【FDA】
1. FDAは食品への臭素化植物油(BVO)の使用を認める規則を取り下げる
2. FDAは食品プログラムの優先ガイダンストピックの更新情報を発表する
3. 疾病調査:Diamond ShruumzブランドのMicrodosing Chocolate Bars(2024年6月)
4. FDAは食物アレルゲン表示に関する懸念についてBimbo Bakeries社に警告書を発する
5. GFI #187A 及び#187Bに関するFDA動物バイオテクノロジーウェビナー:動物における遺伝性の意図的なゲノム改変
6. 着色添加物認証に関する報告:2024会計年度第3四半期、4月1日-6月30日
7. リコール情報
【CFIA】
1. カナダ政府は2024年飼料規則の公布を発表する
【PHAC】
1. カナダ政府は健康的な食生活を促進する取り組みに投資する
【APVMA】
1. APVMA農業有効成分規格の改正について
【NSW】
1. リコール情報
【香港政府ニュース】
1. 食品警告
2. プレスリリース
3. リコール情報
【MFDS】
1.日本産輸入食品の放射能検査の結果
2.「鹿胎盤幹細胞」食品の不法輸入・販売を摘発
3. チャンポンなど中華デリバリー店、ミールキット無人販売店などの点検の結果、25カ所を摘発・措置
4. 食薬処-検疫本部、輸出入畜産物の安全管理協力ために手を取り合う
5. フードQR、食品安全の新しい道を作る
6. 健康的な韓国を率いる「食医薬ヤングリーダー」募集7. リコール情報
【SFA】
1. プレスリリース
【HSA】
1. HSA警告:禁止及び強力な成分を含む3つの製品が発見された;消費者3人が有害事
象を経験した
【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から
・ProMED-mail1件
- 食品安全情報
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
- 食品安全情報(化学物質)No.14(2024.07.10)
- https://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2024/foodinfo202414c.pdf