国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。米国で複数州にわたって発生しているサルモネラ感染アウトブレイクについて、米国CDCは小規模飼育の家禽類を取り扱う際は衛生手順を遵守し、健康被害を防ぐように注意喚起と啓発活動を行っている。ドイツ当局は、欧州でのカンピロバクター感染は夏季と年末年始に増加することと、クリスマスや大晦日の後のカンピロバクターと相関のある料理、食材について報告している。
注目記事
【米国】小規模飼育の家禽類のサルモネラ
米国疾病予防管理センター(US CDC:Centers for Disease Control and Prevention)および複数州の公衆衛生当局は、複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Altona、S. Indiana、S. Infantis、S. Mbandaka、S. Typhimurium)感染アウトブレイクを調査するためさまざまなデータを収集している。
2024年5月16日までに、サルモネラ(S. Altona、S. Indiana、S. Infantis、S. Mbandaka、S. Typhimurium)アウトブレイク株のいずれかに感染した患者計109人が29州から報告されている。患者の発症日は2024年2月28日〜4月30日である。情報が得られた患者82人のうち33人が入院した。死亡者は報告されていない。
聞き取りが実施された患者70人のうち51人が小規模飼育の家禽類との接触を報告した。情報が得られた患者27人のうち18人が、発症前に家禽類を購入または入手していたことを報告した。患者はこれらの家禽類の購入場所として、複数の小売店舗および孵化場からの直接購入を報告した。これらの小売店には複数の孵化場が家禽類を供給していた。本アウトブレイクのすべての患者に共通する単一の供給業者は特定されていない。
CDCは、小規模飼育の家禽類を取り扱う際は衛生手順を遵守し、健康被害を防ぐよう注意喚起を行っている。
https://www.cdc.gov/healthy-pets/about/backyard-poultry.html
CDC および州の当局は家禽類を販売する孵化場や小売店と協力し、家禽類を初めて所有する人への啓発およびサルモネラの拡散防止に取り組んでいる。
【ドイツ】フォンデュやラクレットによるカンピロバクター感染を防ぐ
ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR:Bundesinstitut für Risikobewertung)発。
食肉・野菜を材料として使用するラクレットやフォンデュは、屋外が寒いときに屋内で暖まることができる方法として人気がある。しかし、これらの料理に使われる生の食肉には病原体汚染の可能性があり、準備や調理の際に、加熱せずに喫食される他の食品材料への交差汚染が生じる可能性がある。例として、皿やその他の食器類が複数の食材に共用される場合などが挙げられる。したがって、台所や食卓で生の動物由来食品を取り扱う際は、調理場所の適切な衛生状態が確保されるべきである。
ドイツおよび欧州連合(EU)域内で最も多く報告される食品由来細菌性疾患はカンピロバクター感染であり、2022年にドイツで43,166人の患者が報告された。報告されていない患者数はこの数を大幅に上回っていると考えられる。小児や若年成人が特に多く感染する。感染すると下痢症状を呈し、重篤な神経疾患や反応性関節炎を発症する場合もある。
カンピロバクター感染には季節性が見られ、夏季の数カ月間に患者数が増加する。また、年始の短期間にも患者数の増加が毎年みられている。ロベルト・コッホ研究所(RKI)の調査によると、クリスマスや大晦日の後のカンピロバクター腸炎患者の発生と、当該休暇期間中のミートフォンデュやラクレット料理の喫食との間に相関関係が認められ、特に鶏肉が顕著に関連していた。
(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)
目次
【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. 小規模飼育の家禽類との接触に関連して複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Altona、S. Indiana、S. Infantis、S. Mbandaka、S. Typhimurium)感染アウトブレイク(2024年5月23日付初発情報)
【欧州疾病予防管理センター(ECDC)】
1. エルシニア症-2021年次疫学報告書
【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and Feed)
【欧州食品安全機関(EFSA)】
1. 微生物リスク評価に関する科学ネットワーク(MRA Network)の2023年次報告書
【ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)】
1. フォンデュ料理やラクレット料理によるカンピロバクター感染などを防ぐための注意喚起
【ProMED-mail】
1. コレラ、下痢、赤痢最新情報(19)(18)(17)(16)
- 食品安全情報
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
- 食品安全情報(微生物)No.11(2024.05.29)
- https://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2024/foodinfo202411m.pdf