消費者は天然物のリスクを軽視

No.11(2024.05.29)

いなごの佃煮(イメージ)

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。シンガポール食品庁とFAOの科学者は、新規食品(NFPS)の安全性を検証する新しいレビューを発表した。ドイツ当局は、食品のリスクについて、多くの人々は天然由来リスクを過小評価し、合成由来リスクは過大評価する傾向にあることを指摘している。今年の世界食品安全デー(世界食品安全の日。6月7日)のテーマは「食品安全:予期せぬ事態に備えましょう」。

注目記事

【FAO】新たな食料源及び生産システムの安全性を検証する新しいレビュー

 シンガポール食品庁と国連食糧農業機関(FAO)の科学者による「新たな食料源及び生産システム」(New food sources and production systems:NFPS)に関する総説が学術雑誌に掲載された。本総説では、NFPS製品である植物由来タンパク質、海藻、クラゲ、昆虫、微生物タンパク質のほか、細胞性食品の生産、精密発酵、垂直農法、3Dフードプリンティングに由来する食品に関連する既知の食品安全上のハザードについて概説している。その結果、新たな食品について安全上のハザードの大半は従来の食品でも確認されているが、中には新しい原材料、投入物、製造工程から発生する独自のものもあることが判明した。

※ポイント:総説はオープンアクセスで、市販されているNFPS製品を対象に、品目及び生産システムごとの微生物的ハザード・化学的ハザード・物理的ハザード、NFPSのリスクアナリシス、NFPSに関する規制的枠組み、今後の課題についてまとめています。著者らは、NFPSの規制について国際的な調和を促進させるためには、政府、食品業界、研究界の利害関係者が一丸となって取り組む必要があると述べています。

【BfR】食品中の天然毒素:多くの人々が健康リスクを認識していない

 多くの人々が、食品に含まれる化学物質、汚染物質、マイクロプラスチックの残留物を懸念している。だが、多くの食品に天然由来の毒素も含まれていることはあまり知られていない。ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)の消費者モニター調査(16才以上の1,012名対象)によると、食品に含まれる残留物(植物保護製品由来など)と汚染物質(重金属など)についてはそれぞれ回答者の63%と62%が懸念しているのに対し、天然に生じる植物毒素を懸念していたのは27%であった。「調査結果から、天然由来リスクは過小評価され、合成由来リスクは過大評価される傾向にあることが明らかになった」とBfR長官Andreas Hensel博士は述べた。

※ポイント:食品に天然に含まれる毒素に対する消費者の懸念が低いというのは、我が国も同様だと感じています。天然の毒素を含む食品であっても、昔の人が安全な食べ方を見つけ伝承してきたわけです。ですから、従来と異なる新しい方法(とくに抽出や濃縮)で食すことは非常にリスクが高いということをこの機に知っていただきたいと思います。

【紹介】厚生労働省HPより:世界食品安全の日(6月7日)

「世界食品安全の日」の今年のテーマは、「Food safety:prepare for the unexpected」(食品安全:予期せぬ事態に備えましょう)です。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/codex/index.html

ツールキット日本語版が下記URLで入手可能ですので、ぜひご覧ください。

*2024年6月7日世界食品安全の日:コミュニケーションツールキット

https://www.mhlw.go.jp/content/001255852.pdf

【FAO】

目次

1. 新たな食料源及び生産システムの安全性を検証する新しいレビュー

2. 第34回 FAO 欧州地域会議が開幕、農業食料システムの回復力強化に焦点

3. FAO、AI とデジタル革命が世界の農業食料システムを変革する可能性を強調

4. Codex

【EC】

1. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【ECHA】

1. ECHA、殺生物剤に関する意見募集を合理化

【EFSA】

1. FoodEx2メンテナンス2023

2. Rheum palmatum L. 、Rheum officinale Baill. とその 交配種、Rhamnus purshiana DC. 、Rhamnus frangula L. 及び Cassia senna L. の製剤の安全性に関する追加の科学的データに関する科学的意見

3. 食品酵素関連

4. 食品接触物質関連

5. 農薬関連

6. 香料グループ評価

7. 飼料添加物関連

【FSA】

1. 超加工食品

2. ステークホルダーの回答の概要:様々な規制製品の認可申請に関する協議(2024年春)

3. 食品衛生格付け方式、表示の監査及び事業調査2022:テクニカルレポート

【FSS】

1.2023年スコットランドの外食部門における「Food on the go(店外飲食食品)」のカロ

リー量の分析

【COT】

1. 母親の食事に含まれる鉛のリスクの可能性に関する COT 声明:要約

2. COT会合:2024年5月21日

【BfR】

1. 食品中の天然毒素:多くの人々が健康リスクを認識していない

2. 水生毒素:藻類の毒素がヒトの健康に与える影響

3. リスクコミュニケーション:パンデミックからの教訓

【RIVM】

1. 飲料水源を保護するための対策の評価

【ANSES】

1. 食品用の動物福祉の表示を開発するためにどのような科学的基準を用いることができ

るか?

【CAFIA】

1. CAFIAは外国産アテモヤ・トンプソンの果実(ロット重量2.64トン)から基準値を超える6種類の農薬を検出した(基準値の7倍の農薬もあり)

【FDA】

1. FDA はタラ粉の市販後評価について情報を更新する

2. ダイエタリーサプリメント成分及びその他の物質に関する情報

3. レストラン及び食品小売店の監督に責任をもつ州及び準州政府当局による FDA Food Code の採用

4. 警告文書

5. リコール情報

【NTP】

1. ICCVAM 公開フォーラム2024年5月

【EPA】

1. EPA、飲料水の水質に関する国民の認識を向上させる最終規則を発表

2. EPA、ニューメキシコ州環境局が PFAS およびその他の新興汚染物質の検出と対策に

1,890万ドルを受領すると発表

【USDA】

1. USDA、新プログラムとパートナーシップで生産者のオーガニック生産への移行を緩

和、オーガニック市場の創出と拡大のための投資を発表

2. バイデン-ハリス政権は、何百万人もの子供たちの飢餓に対処し、健康的な食生活を改

善するための新しい夏季栄養プログラムを開始

【FSANZ】

1. 食品基準通知

2. リコール情報

【香港政府ニュース】

1. ニュースレター

2. プレスリリース

3. 違反情報

【MFDS】

1.日本産輸入食品の放射能検査の結果

2. フタル酸エステルの人体暴露水準、有害影響の懸念はない

3. 農家の手作り加工食品、直取引売場で手軽に購入できる道が開かれる

4. 泡除去用食品添加物を疾病治療剤と偽った業者など10カ所を摘発・措置

5. 家庭の月に備え健康機能食品の製造・販売業者を点検、5カ所摘発、オンライン上の不当広告89件を摘発・措置

6. 食薬処、オンライン中古取引プラットフォーム会社と共に違法製品の個人取引を根絶

7. 国民の不便解消のために健康機能食品の個人間取引モデル事業を実施

8. 食薬処、ハーブ類の残留農薬基準整備のための現場訪問

【SFA】

1. シンガポール食品統計2023

2. プレスリリース

【その他】

・ProMED-mail3件

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.11(2024.05.29)
https://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2024/foodinfo202411c.pdf