小規模工場のカンピロバクター

No.22(2023.10.25)

鶏肉(イメージ)

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。英国食品基準庁は、処理羽数が少ない小規模食鳥処理場に関連するカンピロバクター症感染リスク評価を行った。

注目記事

【英国】小規模食鳥処理場のカンピロバクター症リスク評価

 英国食品基準庁(UK FSA: Food Standards Agency, UK)は、処理羽数が少ない小規模食鳥処理場に関連するカンピロバクター症感染リスク評価を行った。

 英国の食鳥処理場は、小規模処理場(low-throughput、年間処理羽数が750万羽以下)または大規模処理場(high-throughput、年間処理羽数が750万羽を超える)のいずれかに分類されている。大規模処理場で製造された鶏屠体では、カンピロバクター汚染レベルが通常モニタリングされている。しかし、通常検査の経済的負担により、小規模処理場についてはすべての施設で検査が実施されているわけではない。今回行われたリスク評価は、小規模処理場に特化したサンプリング計画が適切かどうかについて、FSAがリスクベースの政策決定を行う際に役立てるために委託実施された。

 全体としては、高レベルの汚染(>1,000CFU/g)が検出された検体の割合は、小規模処理場と大規模処理場とで有意な差は認められなかった。小規模処理場および大規模処理場の年間処理羽数を考慮すると、大規模処理場はより多くのカンピロバクター患者の発生に関連していると推定された。

 小規模処理場でのサンプリング要件の適用には一貫性がなく、不合格の場合の改善措置についての情報もない。したがって、現行のサンプリング要件の変更による部位別リスクへの影響の差異を特定することは不可能である。しかしながら、英国内で消費される家禽肉に占める小規模処理場の家禽肉の割合は低いため、小規模処理場での公的サンプリング要件の変更は、英国の全人口におけるカンピロバクター症患者総数に大きな変化を生じさせる可能性は低い。

【Eurosurveillance】ノルウェーのカンピロバクター感染リアルタイム調査

「Eurosurveillance」に掲載された、「カンピロバクター感染による胃腸疾患アウトブレイクの発生予測を共有するための One Health リアルタイムサーベイランスシステム(ノルウェー、2010年第30週〜2022年第11週)から。

 ノルウェーの地方自治体における2010年第30週〜2022年第11週の胃腸疾患による受診の週別データ、カンピロバクター陽性のモニタリングデータおよび気象データを用いて、時空間ランダム効果モデル(spatio-temporal random effects model)を作成し、胃腸疾患アウトブレイクの1週間の発生予測を行った。

 気温および降水量の時差による共変量、およびブロイラー検体からの2週間遅れのカンピロバクター検出数が、ヒトの胃腸疾患の受診件数の増加に関連していた。アウトブレイクの発生予測は自治体間で有意な差が認められた。

 ブロイラーにおけるカンピロバクターサーベイランスはヒトの胃腸疾患アウトブレイクの発生予測に役立つ可能性がある。給水システムのモニタリングなど、環境から患者へのカンピロバクターの伝播が考えられる経路に沿って実施されるサーベイランスは、アウトブレイクの発生予測を向上させる可能性がある。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.22(2023.10.25)
https://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2023/foodinfo202322m.pdf

今号の目次

【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. 生のクッキー生地に関連して複数州にわたり発生したサルモネラ(Salmonella
Enteritidis)感染アウトブレイク(2023年7月13日付最終更新)

【カナダ公衆衛生局(PHAC)】
1. 公衆衛生通知:イワシに関連してフランス Bordeaux で発生したボツリヌス症アウトブレイク(2023年10月4日付最終更新)

【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and
Feed)

【Eurosurveillance】
1. カンピロバクター感染による胃腸疾患アウトブレイクの発生予測を共有するための
One Health リアルタイムサーベイランスシステム(ノルウェー、2010年第30週〜
2022年第11週)

【英国食品基準庁(UK FSA)】
1. 処理羽数が少ない小規模食鳥処理場に関連するカンピロバクター症感染リスク

【アイルランド保健サーベイランスセンター(HPSC Ireland)】
1. フランス Bordeaux の飲食店に関連して発生しているボツリヌス症アウトブレイク

【ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)】
1. ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)の第11回夏季アカデミーが終了 ― 食品安全のための国際レベルでの科学交流を支援