国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。FDAは食品中の化学物質の安全性を確保するために、どのようなアプローチを強化していくのかを発表した。FDAはまた、リンゴジュース中の無機ヒ素のアクションレベルに関する最終ガイダンスを発表した。欧州食品安全機関(EFSA)は、水産品のBAC、DDACおよび塩素酸塩の残留について暴露評価を実施した。
注目記事
【FDA】食品に添加される化学物質をレビューするFDAの新しいアプローチが食品の安全性をどのように強化するか
米国食品医薬品局(FDA)は、食品に含まれるまたは添加される化学物質の安全性を確保するための今後の活動ビジョンを発表した。
※ポイント:FDAが食品の化学物質に係わる安全性確保のために、どのようなアプローチを強化していくのかが紹介されています。FDAは組織内でリスク管理と評価を担当しているので両方の要素が入っていますが、たとえば、Cramer分類の決定木の拡張版を独自に開発、動物試験の代替法の使用、認可物質の市販後レビュー体制の構築、汚染物質規制の実行可能性と達成可能性の評価法の開発、食品安全の問題の優先順位付けシステムの開発、新興問題を検出するためのモニタリング体制の構築などです。このビジョンをFDAがどのように具現化していくのかが興味深いです。
【FDA】FDAはリンゴジュース中の無機ヒ素のアクションレベルに関する最終ガイダンスを業界向けに発表
FDAは最終ガイダンスを発表し、リンゴジュース中の無機ヒ素のアクションレベルを10ppbと決定した。アクションレベルに拘束力はないが、超過した場合には、FDAが強制措置を講じるかどうかを判断することになる。
※ポイント:リンゴも含めて果実ジュース中の汚染物質の基準値は乳幼児が飲むことを想定して策定されることが多いです。以前からご紹介しているように、米国では乳幼児における有害元素の暴露量を低減させるための計画「Closer to Zero」を遂行中であり、先に鉛のアクションレベル案が2023年1月に発表されました。次いで、無機ヒ素についての提案が2024年に予定されています。そのためFDAは、今回決定したリンゴジュース中の無機ヒ素のアクションレベルについて、より低くすることが可能なのか、汚染実態データをさらに収集してCloser to Zeroの一環で見直す予定であるとの但し書きをしています。
【EFSA】魚および魚製品中の塩化ベンザルコニウム(BAC)・塩化ジデシルジメチルアンモニウム(DDAC)および塩素酸塩の存在に関連するリスク評価
欧州食品安全機関(EFSA)は、魚および魚製品中のBAC、DDACおよび塩素酸塩の残留について、2012年〜2021年のモニタリングデータをもとに暴露評価を実施した。
※ポイント:BACとDDACは農薬の有効成分としては認可されていませんが、消毒剤などに使用されています。EUでは食品から高濃度に検出される場合があるため、10年ほど前から食品安全の課題となっています。そのため2014年(委員会規則1119/2014)に暫定MRL0.1mg/kgが設定され、2023年2月(委員会規則2023/377)には植物性の品目のみ0.05mg/kgに引き下げられました。ただし、当初EUはBACとDDACの監視対象を全食品としていましたが、現時点で暫定MRLの設定対象の品目に魚および魚製品は含まれていません。そのためEFSAにリスク評価が依頼されました。今後、欧州委員会でEFSAの評価結果を踏まえてガイダンスレベルやMRLが検討されるでしょう。
(安全情報部第三室)
食品安全情報へのリンク
- 食品安全情報
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
- 食品安全情報(化学物質)No.12(2023.06.07)
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2023/foodinfo202312c.pdf
- 食品安全情報(化学物質)No.12(2023.06.07)別添
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2023/foodinfo202312ca.pdf
今号の目次
【WHO】
1. 出版物
2. 食品安全についての健康講演
【FAO】
1. Codex
【EC】
1. 査察報告書
2. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)
【EFSA】
1. ビタミン B6の耐容上限摂取量に関する科学的意見
2. #EUChooseSafeFood が賛同国を増やして帰ってくる!
3. 葉酸/葉酸塩の耐容上限摂取量の更新のための準備作業
4. 欧州委員会は EFSA の次期長官の募集を開始した
5. 魚及び魚製品中の塩化ベンザルコニウム(BAC)・塩化ジデシルジメチルアンモニウム
(DDAC)及び塩素酸塩の存在に関連するリスク評価
6. 新規食品関連
7. 農薬関連
【FSA】
1.12の飼料添加物用途の安全性評価
2.2022年北アイルランドの健康的な食品バスケットの費用はどのくらいか?
【FSS】
1. 自主的なカロリー表示ガイダンス
2. 食品法実施規範2019
【BfR】
1. 蜂蜜に含まれるグラヤノトキシンについての Q&A
2.「次世代リスク評価」:ベルリン会議で化学物質の新たな検査方法を話し合う
【RIVM】
1. 食品販売店に焦点:指標とデータ源の可能性の概要
2. スチレンの変異原性と発がん性についてのデータの概要
【ANSES】
1. より保護的なナノマテリアルの定義の採用を求める
2. 食品中のカビ:変異原性と発がん性の毒素の特定
【FDA】
1. IFT レポートは食品トレーサビリティ向上のための協力とイノベーションを推奨する
2. FDA はリンゴジュース中の無機ヒ素のアクションレベルに関する最終ガイダンスを業界向けに発表
3. 食品に添加される化学物質をレビューする FDA の新しいアプローチが食品の安全性をどのように強化するか
4. 遺伝子改変動物の研究段階食品使用許可に関するウェビナーを発表する
5. 米国における乳児用調製乳の供給、市場競争及び規則に関する全米アカデミーの研究を発表する
6. 乳児用調製乳の食品成分と包装要件に関するウェビナー
7. 消費者向け情報
8. 警告文書
【EPA】
1. 花火イベントの後の過塩素酸塩を評価する研究に約250万ドルを与える
【CFIA】
1. カナダ食品検査庁が環境中の永遠の化学物質に対処するため対策を講じる
2. 食品安全検査報告
3. リコール情報
【FSANZ】
1. 食品基準通知
【TGA】
1. 偽のセマグルチドバイアル
【MPI】
1. 公衆衛生警告
【香港政府ニュース】
1. 食品規則における保存料に関する改定案(Cap.132BD)
2. 食品の有害物質(改正)規則2021が本日から段階的に開始される
3. プレスリリース
4. 違反情報
【MFDS】
1.日本産輸入食品の放射能検査の結果
2. 輸入「コウタケ」真偽確認検査の結果、偽コウタケ3製品を摘発措置
3. 消費期限、気になる点を解消します!
4. コンビニ健康食コーナーのモデル事業拡大
5. 市民と共に安全なオンライン流通環境づくり
6. オンライン流通畜産物業者を点検した結果、10カ所を摘発
7. 高齢者、食品添加物摂取の評価結果、安全なレベル
8. 国民が安心する食の安全! 健康的な大韓民国! 食薬処が共にします
9. 政府、積極的な行政を展開し、済州島オレンジ農家の困難を解消
10. 回収措置
【SFA】
1. 農場から食卓まで:1つの緑色のロゴがどのようにして地元の農産物を後押しするか
2. 定期的に見直される食品添加物の規制基準
【HSA】
【FSSAI】
1. 全インドで乳及び乳製品サーベイランス2023を行う
【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から
・ProMED-mail4件
別添
【BfR】日用品のビスフェノール A:FAQ