国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。イギリスは鳥インフルエンザ発生による影響を考慮して、通常は禁止している家禽肉の解凍品の販売を、このクリスマスシーズンの間、一時的に緩和した。一方、EU/EEA加盟数カ国では2021年9月以降、鶏肉製品や生鮮鶏肉が原因食品である可能性が高いサルモネラ感染が発生している。
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【アイルランド、イギリス】通常は禁止の家禽肉解凍品の販売を七面鳥等について一時許可
アイルランド食品安全局(FSAI: Food Safety Authority of Ireland)は、欧州連合(EU)域内では、家禽肉(七面鳥肉など)を冷凍した後に解凍して販売することは許可されていないことを、製造業者、輸入業者および小売業者に注意喚起している。EUにおける家禽肉の出荷・販売は、生鮮(冷凍処理を経ていない)、冷凍または急速冷凍のいずれかの状態でなければならない。
現在の鳥インフルエンザ発生による影響を考慮し、英国(UK)は家禽肉の出荷・販売規制を一時的に緩和した。2022年のクリスマスシーズンの間、英国は、冷凍後に解凍した家禽肉の一部について「解凍品」と明確に表示したうえでの製造および販売を許可する予定である。現在、イングランドおよびウェールズは、上記のような製品の製造および販売を許容するとしている。しかし、北アイルランドには自国の規定があり、国内で販売されるこのような製品に今回の緩和措置は適用されない。
アイルランドの食品事業者は、英国でこの種の製品が一時的に許可されても、EUの規則は変更されていないことを認識すべきである。
英国食品基準庁(UK FSA: Food Standards Agency, UK)は、冷凍後に解凍された七面鳥・鴨・肥育鶏・ガチョウ肉製品が「冷蔵品」としてクリスマスシーズンまで販売されることについて、イングランドおよびウェールズの消費者向けに助言を発表している。
このような製品はラベルに「解凍品」と明確に表示されるべきであり、この表示のある製品は家庭での冷凍保存に適するものである。
この一時的な変更(解凍された家禽肉の販売は通常は許可されていない)は、2022年11月28日から12月31日まで販売される七面鳥・鴨・肥育鶏・ガチョウ肉製品の一部を対象としており、鶏肉には適用されない。
【欧州】欧州での鶏肉RTE製品に関連のサルモネラは患者196人
欧州疾病予防管理センター(ECDC: European Centre for Disease Prevention and Control)と欧州食品安全機関(EFSA: European Food Safety Authority)の合同迅速アウトブレイク評価によると、2021年9月以降、欧州連合/欧州経済領域(EU/EEA)加盟数カ国、イスラエルおよび英国において、1件のサルモネラ(Salmonella Mbandaka シークエンスタイプ(ST)413)感染アウトブレイクが発生している。2022年11月8日までに、欧州の症例定義にもとづき患者計196人が報告されており、国別の内訳は、チェコ(n=5)、エストニア(n=3)、フィンランド(n=89)、フランス(n=10)、ドイツ(n=2)、アイルランド(n=1)、オランダ(n=1)、英国(n=81)およびイスラエル(n=4)である。患者19人が入院し、5人が敗血症を発症した。英国の患者1人が死亡した。
フィンランドおよび英国で実施された患者への聞き取り調査の結果にもとづくと、サンドイッチやラップサンドなどに使用されることがあるそのまま喫食可能な(RTE:readyto-eat)鶏肉製品や生鮮鶏肉が原因食品である可能性が高い。フィンランドの患者15人が3つのブランドの6種類のRTE製品の喫食を報告した。これらの15人は全員が少なくとも1種類のRTE鶏肉製品を喫食していた。
これらの製品のうち2種類は同じブランド名で市場に流通しており、エストニアの食品業者A社およびフィンランドの食品業者B社が取り扱っている。フィンランドの食品安全当局は当該製品とエストニアのA社との関連を指摘した。しかし、具体的なバッチの特定や微生物学的エビデンスによってこの関連性を立証することはできなかった。
感染源・汚染源を特定するためには、公衆衛生・食品安全当局によるさらなる調査が必要である。
(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)
食品安全情報へのリンク
- 食品安全情報
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
- 食品安全情報(微生物)No.26(2022.12.21)
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2022/foodinfo202226m.pdf
今号の目次
【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. テキサス州産の生牡蠣に関連して複数州にわたり発生しているノロウイルス感染アウトブレイク(2022年12月15日付初発情報)
【欧州疾病予防管理センター(ECDC)/欧州食品安全機関(EFSA)】
1. ECDC-EFSA 合同迅速アウトブレイク評価:欧州連合/欧州経済領域(EU/EEA)加盟数カ国、イスラエルおよび英国で発生中の鶏肉の喫食と関連している可能性があるサル
モネラ(Salmonella Mbandaka シークエンスタイプ(ST)413)感染アウトブレイク
【欧州疾病予防管理センター(ECDC)】
1. 鶏肉に関連して複数国にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Mbandaka シークエンスタイプ(ST)413)感染アウトブレイク
【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and
Feed)
【Eurosurveillance】
1. 飲用水に関連してイタリア北東部で発生したクリプトスポリジウム症アウトブレイク
(2019年8月):微生物学的調査および環境調査
【英国食品基準庁(UK FSA)】
1. クリスマス時の供給量を確保するために一部の家禽肉製品が冷凍後に解凍されて冷蔵品として販売されることについて消費者向け助言を発表
【アイルランド食品安全局(FSAI)】
1. 解凍した家禽肉の販売は許可されていないことを、製造業者、輸入業者および小売業者に注意喚起
【ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)】
1. 安全が最優先:消費者保護に取り組んだ20年間を振り返る国際シンポジウムを開催
【ProMED-mail】
1. コレラ、下痢、赤痢最新情報(34)