国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。米国FDAが食品由来疾患のアウトブレイクへの対応を紹介する動画を公開した。国内外の諸機関や食品事業者等と協力・連携して対策を講じるプロセスも解説している。「Eurosurveillance」は、飲用生乳に関連のO157:H7感染アウトブレイクと病原体性状解析法の迅速な利用についての論文を掲載している。
注目記事
【米国】動画:食品由来疾患アウトブレイクへの対応
米国食品医薬品局食品安全応用栄養センター(US FDA CFSAN: US Food and Drug
Administration, Center for Food Safety and Applied Nutrition)が食品由来アウトブレイクへの対応を紹介する動画を公開した。
FDAは、FDAが管轄する製品に関連したアウトブレイクに対応するため、米国疾病予防管理センター(US CDC)、各地域・州および国外の公衆衛生当局と協力して対策を講じており、この動画は、相互に複雑に関連することが多いこれらの対策がどの様に進められるかを解説している。さらに、CDCがその他の公衆衛生機関とどのように連携を取りながら消費者の疾患の原因を詳しく調査しているか、またその結果、FDAが管轄する製品の関連が特定された場合、FDAが当該アウトブレイクの原因をどのように調査し、汚染の可能性がある製品を小売店舗から撤去するために食品事業者とどのように協力するかについても詳細を説明している。
この動画はYouTubeで視聴可能である。
https://youtu.be/EeJwvAdJ-JU
【Eurosurveillance】論文:飲用生乳に関連のO157:H7感染アウトブレイクと病原体性状解析法の迅速な利用
2017年8〜10月にイングランドのワイト島(Isle of Wight)で、志賀毒素産生性大腸菌(STEC)O157:H7感染アウトブレイクが発生した。本アウトブレイクに関連した患者7人のうち、5人は届出義務システムを介して特定され、2人は全ゲノムシークエンシング(WGS)解析データの国内サーベイランスを介して特定された。
強化サーベイランスでの質問票への回答により、患者に共通する農場1カ所と、関連している可能性が高い飲用生乳(RDM:raw drinking milk)が特定された。PCR検査などの微生物学的検査を実施した結果、複数のRDM検体からSTEC O157:H7が検出された。患者の便検体、動物の糞便検体およびRDM検体から検出されたSTEC O157:H7のコアゲノムの一塩基多型(SNP)解析結果から、これらの分離株は遺伝学的に近縁であることが示された。
アウトブレイク対策として、RDMの販売一時停止と回収、農場訪問の制限などが実施された。患者、動物および環境の検体からのSTEC O157:H7の検出と解析に、従来の疫学サーベイランスと新しい検査方法を効果的に適用したことで、感染源を迅速に特定でき、アウトブレイク対策チーム(OCT:Outbreak Control Team)の対策を裏付けるエビデンスが得られ、有効な対策が迅速に実施された。
(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)
食品安全情報へのリンク
- 食品安全情報
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
- 食品安全情報(微生物)No.25(2022.12.07)
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2022/foodinfo202225m.pdf
今号の目次
【米国食品医薬品局食品安全応用栄養センター(US FDA CFSAN)】
1. 米国食品医薬品局(US FDA)が食品由来アウトブレイクへの対応を紹介する動画を公開
【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. エノキダケに関連して複数州にわたり発生しているリステリア(Listeria monocytogenes)感染アウトブレイク(2022年11月22日付更新情報)
2. ピーナッツバターに関連して複数州にわたり発生したサルモネラ(Salmonella
Senftenberg)感染アウトブレイク(2022年7月27日付最終更新)
【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and
Feed)
【Eurosurveillance】
1.2022年世界実地疫学デー:公衆衛生上の脅威に備えてヘルスシステム(保健医療制度)の態勢および対応を強化するため実地疫学者の能力向上を支援
2. 喫飲用生乳(RDM)に関連して発生し、高度な病原体性状解析法の迅速な利用により終息した志賀毒素産生性大腸菌(STEC)O157:H7感染アウトブレイク(イングランド、
2017年8〜10月)
【英国食品基準庁(UK FSA)】
1.2001〜2020年に英国産市販鶏肉から検出されたカンピロバクターの抗菌剤耐性(AMR)の傾向
【ProMED-mail】
1. コレラ、下痢、赤痢最新情報(33)(32)