レバーパテ関連のリステリア

No.22(2022.10.26)

レバーパテ(イメージ)

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。Eurosurveillanceは2018年12月にオーストリア発生したリステリア症アウトブレイクに関する論文を掲載している。検体の追跡等から、食品メーカーが製造したレバーパテの喫食による可能性が高いと見られている。米国では生鮮サーモンの生食に関連して発生しているサルモネラ感染アウトブレイクが調査されている。

注目記事

【欧州】レバーパテ関連の可能性が高いリステリア症

 Eurosurveillance掲載論文。2018年12月下旬に、オーストリアのシュタイアーマルク州(Styria)にある飲食店(tavern)で会食をした32人のグループにリステリア症アウトブレイクが発生した。会食後に11人が胃腸炎症状を呈し、このうち1人は重篤な敗血症を発症した。

 患者は、当該地域の食品製造業者(X社)が製造した数種類の食肉製品およびパテの盛り合わせ料理を喫食していた。ヒト、食品、および当該飲食店とX社の環境から検体が採取され、リステリア(Listeria monocytogenes)検査が行われた。

 熱性胃腸炎患者由来の19便検体のうち、10検体がL. monocytogenes陽性であった。当該飲食店の無症状の従業員から採取された3便検体では、60歳代前半の女性由来の1検体のみがL. monocytogenes陽性であった。その他に、当該飲食店を訪れた24時間後に熱性胃腸炎を呈して入院した20歳代半ばの男性患者1人の血液培養検体からL. monocytogenesが分離された。

 ヒト由来以外の73検体のうち、食品由来2検体および環境由来1検体が L.
monocytogenes陽性であった。X社の食品2検体(燻製食肉製品、レバーパテが当該飲食店で採取され、両方の25g 検体がL. monocytogenes陽性で菌濃度は「<10CFU/g」であった。また、2019年1月にシュタイアーマルク州の保健当局がX社の製造施設の水路から採取した水検体もL. monocytogenes陽性であった。

 オーストリアでは本アウトブレイク株の検出例が過去になかったため、2019年1月28日に欧州疾病予防管理センター(ECDC)の欧州疫学情報共有システム(EPIS)を介して緊急問い合わせ(EPIS-UI-539)が発信された。これに対して、デンマーク、フィンランド、フランス、オランダ、ルクセンブルク、ポルトガル、スイスおよび英国がEPISプラットフォームを介して回答したが、本アウトブレイク株に関連する患者の報告はなかった。

 患者の積極的探索により、侵襲性リステリア症患者がさらに2人見つかった。この2人は当該飲食店およびX社が所在する2つの地区にそれぞれ居住していた。1人は血液培養からの分離株で確認された80歳代前半の患者で、当該飲食店を訪れていなかったが2018年11月に発症した。この患者はX社のレバーパテを地元の市場で購入して何度も喫食しており、感染が原因で死亡した。もう1人の患者は眼内炎を患っており、眼房の吸引液からの分離株で確認された50歳代半ばの患者で、当該飲食店を訪れていなかったが2018年12月23日に発症した。

 2018年12月21日にアウトブレイク発生が確認された後、当該飲食店およびX社では、地域の保健当局の監督下で専門洗浄業者による徹底的な洗浄が行われた。良好な衛生状態(複数回の検体採取でL. monocytogenesが検出されない)が確認されるまで、加熱処理が施された製品のみ販売が許可された。12月末以降に新規患者の報告はなく、本アウトブレイクの終息が宣言された。

【米国】生魚のサルモネラ

 米国疾病予防管理センター(US CDC: Centers for Disease Control and Prevention)、複数州の公衆衛生・食品規制当局および米国食品医薬品局(US FDA)は、複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Litchfield)感染アウトブレイクを調査するため様々なデータを収集している。

 患者26人のうち13人が入院した。死亡者は報告されていない。聞き取りが実施された患者16人のうち12人が、生魚、すしまたはポキ丼(※)の喫食を報告した。食事内容を詳細に覚えていた患者11人のうち、9人が生のサーモンの喫食を報告した。

 FDAの追跡調査から、これらのクラスターの患者が喫食した生鮮サーモンの供給元がMariscos Bahia社であったことが特定された。FDAは、Mariscos Bahia社の施設(カリフォルニア州 Pico Rivera)で複数のスワブ検体を含む環境検体を採取した。これまでに WGS解析が完了した検体のうち、少なくとも1スワブ検体からアウトブレイク株が検出されている。

 CDCは飲食店に対し、2022年6月14日以降にMariscos Bahia社から供給されたサーモン、マグロ、チリシーバス、メカジキおよびオヒョウを販売・提供しないよう注意喚起している。これらの魚は冷凍されていない生鮮魚の状態で飲食店に供給された。

※ポキはハワイ料理で生魚の和え物。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.22(2022.10.26)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2022/foodinfo202222m.pdf

今号の目次

【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. 生魚の喫食に関連して複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Litchfield)感染アウトブレイク(2022年10月20日付初発情報)
2. ペットのアゴヒゲトカゲ(bearded dragon)に関連して複数州にわたり発生している2件のサルモネラ(Salmonella Vitkin およびS. IIIb61:z52:z53)感染アウトブレイク
(2022年10月18日付初発情報)
3. ペットのアゴヒゲトカゲ(bearded dragon)に関連して複数州にわたり発生したサルモネラ(Salmonella Uganda)感染アウトブレイク(2022年6月16日付最終更新)

【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and
Feed)

【Eurosurveillance】
1. 飲食店でのレバーパテの喫食により発生した可能性が高いリステリア症アウトブレイク(オーストリア、2018年12月)

【アイルランド食品安全局(FSAI)】
1.2022年9月20日に「Breakfast Bite」オンラインセミナーを開催:テーマは“賞味期限”

【ProMED-mail】
1. コレラ、下痢、赤痢最新情報(29)