FDA最新報告は標本を細分化

No.16(2022.08.03)

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。米国食品医薬品局は、食品中の元素に関するトータルダイエットスタディの最新の報告書を発表した。暴露評価がより実態に沿ったものとなっている。ノルウェー食品および環境に関する科学委員会は、魚の摂取に関するベネフィットとリスクの評価結果を発表し、また「モニタリングに重要な食品と化学物質」報告書も発表した。

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【FDA】FDAは新たなトータルダイエットスタディ報告書を発表

 米国食品医薬品局(FDA)が、食品中の元素に関するトータルダイエットスタディ(TDS)の2018-2020会計年度報告書を発表した。今期の調査では、307品目(食品、飲料品、水を含む)を対象に25元素(栄養素と有害元素の両方)を分析した。選択した栄養素には不足すると健康状態の悪化をまねく可能性があるカルシウム、ヨウ素、鉄、カリウムを含み、有害元素には乳幼児を対象にした「よりゼロに近づける計画」において優先度が高いヒ素、カドミウム、鉛、水銀を含んでいる。

※ポイント:栄養素と有害元素を合わせて25元素と、他国のTDSよりも幅広く測定しています。今期から新しいスタディデザインを用いて、以前よりもサンプリング地点と時期を細分化することで季節や地域による変動性をより考慮できるようにしたことと、TDSのデータと国民健康栄養調査(WWEIA)のデータを紐付けできるシステムを導入したことが大きなポイントでしょう。国民の代表的で膨大なデータを含むWWEIAと紐付けできるようにしたことで、暴露評価がより実態に沿ったものとなり、その他の利用についても可能性が広がるものと考えられます。

【別添 VKM】ノルウェーの食事の魚のベネフィットとリスクの評価

 ノルウェー食品および環境に関する科学委員会(VKM)が、魚の摂取に関するベネフィットとリスクの評価結果を発表した。この評価は、欧州食品安全機関(EFSA)が、汚染物質PCDD/FsおよびDL-PCBsとPFASs(パーフルオロアルキル化合物)の耐容週間摂取量(TWI)を大幅に下げ、ノルウェーの集団でTWIを超えることが確認されたことを受けて実施されたものである。

※ポイント:1,000ページに及ぶ大作です。新しい知見とその時の食生活の状況をもとに定期的に再評価を行っているようです。魚の摂取についてはリスクとベネフィットの両方を評価するのが主流となり、多くの国が魚の栄養面のメリットを踏まえて、魚の種類と汚染実態を考慮しつつ、制限することよりも食べることを推奨しています。

【別添 VKM】食品中の望ましくない物質のリスクランキング:どの食品がモニタリングに最も重要?

 VKMはノルウェー食品安全局からの要請を受けて、リスクに基づいたモニタリングを行うための基礎資料として、国民が消費する食品/食品グループのうち、望ましくない化学物質を1つ以上含み、モニタリングに重要と考えられる食品と食品グループを特定した報告書「モニタリングに重要な食品と化学物質」を公表した。

※ポイント:VKMは先に、食品に含まれる79の化学物質/グループを対象に、リスクの大きさに基づいた優先順位づけを実施しています(2019年)。今回の報告書は、それらの化学物質をモニタリングする対象の食品をどのように選択すればよいのかを記しています。国によって食生活が異なるので、これらの結果をそのまま日本に当てはめることはできませんが、優先順位付けの判断規準は応用できるので、よい参考になると思います。

(安全情報部第三室)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.16(2022.08.03)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2022/foodinfo202216c.pdf
食品安全情報(化学物質)No.16(2022.08.03)別添
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2022/foodinfo202216ca.pdf

今号の目次

【WHO】
1. 国際がん研究機関(IARC)

【FAO】
1. より回復力のある農業のための原子力技術
2. 農業食料システム転換のためには科学と革新が重要な加速因子
3. Codex

【EC】
1. 欧州委員会はおもちゃのコバルトの安全性についての予備的意見にパブリックコメントを開始
2.2022年7月18日の農業水産業評議会
3. 査察報告書
4. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. EFSA の科学評価のための問題の定式化
2. リスク評価方法論の研修コース:不確実性の分析、根拠の重みづけ評価と生物学的妥当性の評価
3. 科学的助言の確実性の程度:リスク管理とコミュニケーションへの密接な関係
4. 複数化合物暴露のリスク評価に関する EFSA 国際ワークショップ
5. 募集:化学物質リスク評価及び食事暴露評価に関する訓練コースを開発するパートナー
6. 農薬関連
7. 飼料添加物関連
8. 食品接触物質関連
9. 食品酵素関連
10. 遺伝子組換え関連

【FSA】
1. 英国の食用昆虫業界に関して明確にするための意見募集を開始する
2. FSA が改訂狩猟ガイダンスを発表する

【ASA】
1. ASA 裁定
2. CBD マーケティング:新興起業家向けの簡潔なガイド

【BfR】
1. どのくらい危険なのか? ドイツ連邦リスク評価研究所設立20周年を記念したカバーストーリーが掲載された「BfR2GO」新号
2. シガテラ:海産魚介類に含まれるシガトキシン(藻類毒素)による中毒例

【FSAI】
1. ウクライナ危機がもたらす食品表示の課題に関するガイダンスの更新
2. リコール情報

【FDA】
1. FDA は強化に向けた主要な FDA 内活動の評価を実施する
2. FDA はフッ素化ポリエチレン製の食品と接触する容器に関する RFI を発行
3. Robert M. Califf, M.D.の FDA 食品プログラムに関する口頭証言
4. FDA は新たなトータルダイエットスタディ報告書を発表
5. FDA は食品包装材における特定のフタル酸エステル類の使用を制限し、最新の食品接触用途及び安全性データに関する情報提供を求める文書を発行する
6. FDA は公衆衛生をより適切に保護するための規制監視ツールの最適なアプローチについて詳述する
7. 有害事象報告の調査:French Lentil & Leek Crumbles(2022年6月)8. 食品中の天然毒素
9. リコール情報
10. 警告文書
11. 公示

【OSTP】
1. 情報要請;連邦 PFAS 研究開発戦略に情報提供するための重要なデータギャップとニーズを同定する

【FSANZ】
1. 食品基準通知

【MPI】
1. 食品に関する苦情に対応する新しいオンラインツール

【香港政府ニュース】
1. ニュースレター
2. プレスリリース
3. 違反情報

【MFDS】
1.日本産輸入食品の放射能検査の結果
2. 毛髪健康関連、健康機能食品開発が可能になります
3.「韓薬処方名」関連オンライン不当広告、不法行為の点検結果
4. 禅食と貝類の毒素管理を強化
5. 食品安全国、簡単に理解して活用できます!
6. 夏の虫・カビ異物混入予防このようにしてください!
7. 早朝配送農産物を配送前検査で消費者の安心を向上
8. 食用氷など夏季多消費食品の収去検査の結果

【SFA】
1. リコール情報

【HSA】
1. HSA は安全性と品質基準を満たした健康サプリメント食品と伝統医薬品のローカルデータベースを確立するための自主的な届け出に関する取り組みを開始する

【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から

別添

【VKM】
1. ノルウェーの食事の魚のベネフィットとリスクの評価
2. 食品中の望ましくない物質のリスクランキング:どの食品がモニタリングに最も重要?