大麻草成分の安全性を調べる

No.13(2022.06.22)

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。欧州食品安全機関(EFSA)は大麻草成分のカンナビジオール(CBD)の評価を進めている。米国FDAはダイエタリーサプメントに関する新たな教育計画を開始した。世界食品安全デー関連記事を別添としてまとめた。

注目記事

【EFSA】カンナビジオールの新規食品評価、新しいデータが出るまで保留

 カンナビジオール(CBD)は大麻草(Cannabis sativa L.)の成分であり、化学的にも合成される物質である。新規食品としてのCBDの認可申請が欧州委員会(EC)へ多数提出されたことを受けて、ヒトにおけるCBD摂取の安全性について欧州食品安全機関(EFSA)の意見をまとめるよう要請された。現在、ECには150件以上のCBDの新規食品申請が届いており、そのうち19件についてEFSAが評価中である。

 EFSAは、CBDによる肝臓、消化管、内分泌系、神経系、および人々の精神的な幸福に与える影響に関するデータが不足していること、また動物試験で生殖への重大な有害影響が観察されているもののヒトへ及ぼす影響がどの程度なのかが不明であることなどを理由に、現時点ではヒトへの安全性を立証できないと結論した。

※ポイント:CBDは、ここ数年の食品安全の問題の中でも注目度の高いものの一つです。ECに提出された申請数の多さに驚くとともに、それだけ差し迫った問題なのだろうと感じました。CBDについてはEU以外の地域でも対応が進められています。とくに米国食品医薬品局(FDA)が重視しており、食品への添加が認められていないため違法製品の監視を強化するとともに、あらゆる情報が不足しているとして積極的かつ計画的なデータ収集を実施しています。

【FDA】ダイエタリーサプリメントに関するFDAの啓発活動

 米国FDAが、ダイエタリーサプメントに関する理解を深めることを目的に、消費者向けの情報提供を充実させるとともに、「あなたの知識を追加する」(Supplement Your Knowledge)と題した新たな教育計画を開始した。教育計画では、消費者、教育者、医療従事者に向けて、それぞれに適した情報をファクトシート、動画、教材として提供している。とくに10代の若者への教育に力を入れており、FDAは高校生の教師用ガイド(全80ページ)を作成・公表している。

※ポイント:米国ではダイエタリーサプリメント健康教育法(DSHEA)が1994年に制定されてから25年が経過したしたことを機に、制度の大幅な見直しや対策の強化が行われています。前々号(No.11)で紹介した新規ダイエタリー成分の執行裁量や、今回の啓発活動もその一環です。FDAはこれまでにもダイエタリーサプリメントに関する情報提供や注意喚起は行ってきましたが、教育活動の推進を大々的に打ち出したのは今回が初めてでしょう。

【別添】世界食品安全デー関連記事

 2022年6月7日、第4回世界食品安全デーにあたり、WHO/FAOによるウェビナー開催や、各国の関係機関から食品安全への意識を高めるための声明などが発表された。それらの記事をまとめて今号の別添として紹介する。

(安全情報部第三室)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.13(2022.06.22)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2022/foodinfo202213c.pdf
食品安全情報(化学物質)No.13(2022.06.22)別添
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2022/foodinfo202213ca.pdf

今号の目次

【WHO】
1. イベント
2. 国際がん研究機関(IARC)

【FAO】
1. FAO と WFP は飢餓が数十カ国の安定を脅かし広範な食料危機が迫ることを警告
2. FAO 評議会は気候変動と科学と革新についての新しい10年戦略を承認
3. Codex

【EC】
1. AGRIFISH 評議会での Kyriakides コミッショナーの発言-輸入農産物・食品に健康環境基準を適用することについての報告書
2. 化学農薬の使用とリスクとより有害な農薬の使用トレンド
3. 食品接触物質評価
4. 査察報告書
5. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. カンナビジオールの新規食品評価、新しいデータが出るまで保留
2. 遺伝子組換えテンサイ H7‐1の新しい配列情報のリスク評価
3. 農薬関連
4. 新規食品関連
5. 飼料添加物関連
6. 食品接触物質関連
7. 食品酵素関連

【FSA】
1.2022年6月の FSA 理事会ペーパーが発表される
2. 研究プロジェクト

【DEFRA】
1. 政府の食料戦略
2. 技術革新が食料生産の増加を後押しし、英国の農家に返す

【ASA】
1. ASA 裁定

【BfR】
1. 食品中のエチレンオキシドの健康リスク

【RIVM】
1. 土壌システム中マイクロプラスチック、発生源から保護目標までの道のり。土壌中マイクロプラスチックについての既知知識

【DGCCRF】
1. ナノ粒子と組み合わせたコリスチン:より少量の抗生物質で同程度の有効性

【FSAI】
1. リコール情報

【FDA】
1. ダイエタリーサプリメントに関する FDA の啓発活動
2. FDA は洪水や悪天候の影響を受けたヒト及び動物用の食品生産者のための新しいリソースページを発表
3. FDA 乳児用調製乳情報更新
4. 消費者情報:乳児用調製乳の供給
5. FDLI年次会議での Califf コミッショナーの発言
6. 警告文書
7. リコール情報

【EPA】
1. EPA は市販の泡消火器やその他の使用の PFAS の全国検査戦略による最初の検査命令を発行

【NIEHS】
1. NIEHS 報告書

【NIH】
1. 新しいマルチビタミン標準物質が公表された

【FSANZ】
1.2022年関係者フォーラム-将来に備えた食品基準
2. 食品基準ニュース
3. 食品基準通知

【香港政府ニュース】
1. CFS はマグロの切り身による食中毒を積極的に追跡調査する
2. ニュースレター
3. 違反情報

【MFDS】
1.日本産輸入食品の放射能検査の結果
2. 食薬処、オンライン販売の農・水産物収去検査の結果発表
3. 食薬処、リスク評価政策委員会を構成して民・管の協力強化
4. 食品安全国を知らせる応援団(サポーター)を募集!
5. マートの冷蔵庫にドアを設置してください!
6. 農・林産物の販売実態点検および収去検査の結果発表

【SFA】
1. 適正食品安全規範の遵守に関する通達

【FSSAI】
1. 淡水魚と海水魚の天然のホルムアルデヒド基準に関連する2021食品安全基準改定の運用に関する2006食品安全基準法 Section16(5)と Section18(2)(d)の2022年5月31日付の指令

【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から
・ProMED-mail2件

別添
世界食品安全デー関連記事