国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。米国とカナダで、有機生鮮イチゴに関連している可能性があるA型肝炎アウトブレイクが発生しており、当局が調査している。懸念のあるイチゴはすでに販売されていないが、保存されていた箇所の消毒などの助言がある。
注目記事
【米国/カナダ】有機生鮮イチゴが関連の可能性あるA型肝炎
米国疾病予防管理センター(US CDC: Centers for Disease Control and Prevention)、複数州の公衆衛生・食品規制当局および米国食品医薬品局(US FDA)は、複数州にわたり発生しているA型肝炎アウトブレイクを調査している。
患者の発症日は2022年3月28日〜4月30日。情報が得られた患者17人のうち12人が入院した。死亡者は報告されていない。
疫学・追跡調査で得られたエビデンスは、有機栽培の生鮮イチゴが本アウトブレイクの感染源である可能性が高いことを示している。関連している可能性がある「FreshKampo」ブランドおよび「H-E-B」ブランドの当該イチゴは既に保存可能期間が過ぎているため、米国内では現在は販売されていない。当該イチゴは、「H-E-B」「Kroger」「Safeway」「Sprouts Farmers Market」「Trader Joe’s」「Walmart」「Weis Markets」「WinCo Foods」などの小売チェーンで販売された可能性がある。
患者の発症前2〜7週間の食品喫食歴およびその他の曝露歴について聞き取り調査が実施された。聞き取りが行われた患者13人のうち10人が有機栽培の生鮮イチゴの喫食を報告した。
カナダ公衆衛生局(PHAC: Public Health Agency of Canada)は、連邦・複数州の公衆衛生当局、米国疾病予防管理センター(US CDC)および米国食品医薬品局(US FDA)と協力し、カナダと米国で発生している1件のA型肝炎アウトブレイクを調査している。カナダ国内では2州(アルバータ、サスカチュワン)で患者が発生している。
現時点で得られている調査結果にもとづくと、FreshKampoブランドの有機栽培の輸入生鮮イチゴの喫食がカナダの患者の感染源となっている可能性が高い。患者の多くが発症前に有機栽培の生鮮イチゴを喫食したと報告した。
FreshKampoブランドの当該イチゴはアルバータ州およびサスカチュワン州のCo-op(生活協同組合)の複数店舗で患者が2022年3月5〜9日に購入したもので、現在はカナダ国内では販売されていない。
消費者向け助言
- FreshKampoブランドの有機栽培の生鮮イチゴをアルバータ州およびサスカチュワン州のCo-opの店舗で2022年3月5〜9日に購入し冷凍保存しているかどうかを確認すべきである。保存している場合は喫食せずに全て廃棄すること。入手先が不明なイチゴも廃棄すべきである。
- 当該イチゴが保存されていた引き出し、棚、容器などは、台所用消毒剤(消毒剤容器に記載の使用方法に従う)による洗浄および消毒、または漂白剤であることをラベル表記したスプレーボトル内で調合した漂白剤溶液(家庭用漂白剤5mlに対し水750mlの割合)による漂白および水洗いを行うこと。
- 当該イチゴ(購入後冷凍したものも含む)を既に喫食した場合、またはA型肝炎に一致する症状がみられる場合は、直ちに医療機関を受診すべきである。曝露後14日以内であればワクチン接種によりA型肝炎の感染を予防できる。
- 食品の調理や喫食の前後、トイレの使用後およびおむつ交換の後は手を洗うこと。
- A型肝炎であると診断された場合は、食品・飲料の調理や提供を行うべきでない。
【イギリス】子羊肉・七面鳥肉の抗菌剤耐性に関する調査結果
英国食品基準庁(UK FSA: Food Standards Agency, UK)が国の行動計画(NAP:National Action Plan)の一環として英国の市販子羊肉・七面鳥肉における抗菌剤耐性(AMR)に関する初めての調査結果を発表した。本報告書は、英国において2020年10月〜2021年2月にかけて市販の子羊肉・七面鳥肉から分離された細菌の各種抗菌剤耐性(AMR)に関する試験結果を報告したものである。
英国食品基準庁(UK FSA)は、戦略的優先課題として抗菌剤耐性に取り組むための国の施策において、市販の子羊肉・七面鳥肉から検出される大腸菌およびカンピロバクターの抗菌剤耐性について実施した全国調査の結果を発表した。
食肉から検出される抗菌剤耐性菌に関するこれまでの調査は、英国の市販牛肉・豚肉・鶏肉を中心に実施されていたため、子羊肉および七面鳥肉については比較可能なデータが不足している。食肉での抗菌剤耐性に関する現行のサーベイランスにおいて不足しているエビデンスを補うため、今回、とくに大腸菌およびカンピロバクターにおける抗菌剤耐性に焦点を当てた調査の実施が求められた。
本調査では、市販の子羊肉製品および七面鳥肉製品それぞれについて210検体ずつが検査され、主な結果は以下の通りであった。
- AmpC型βラクタマーゼ(AmpC)/基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生性大腸菌が子羊肉2検体および七面鳥肉24検体から検出されたが、カルバペネム耐性は検出されなかった。
- 伝達性のコリスチン耐性遺伝子を保有する大腸菌が七面鳥肉3検体から検出された。英国の市販七面鳥肉からこの耐性型が検出されたのは今回が初めてであったが、FSAによるリスク評価の結果、リスクは非常に低いと判断された。
- 七面鳥肉検体のカンピロバクター汚染率は11%であった。カンピロバクターでは、シプロフロキサシン、テトラサイクリンおよびナリジクス酸への耐性がとくに高頻度に確認された。
(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)
食品安全情報へのリンク
- 食品安全情報
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
- 食品安全情報(微生物)No.12(2022.06.08)
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2022/foodinfo202212m.pdf
今号の目次
【米国食品医薬品局(US FDA)】
1. 米国食品医薬品局(US FDA)が乳幼児用調製粉乳に関連して報告されているクロノバクター(Cronobacter sakazakii)感染に関する苦情を調査(2022年5月24日付更新情報)
【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. 有機栽培の生鮮イチゴに関連している可能性がある A型肝炎アウトブレイク(2022年
5月31日付初発情報)
2. ピーナッツバターに関連して複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella
Senftenberg)感染アウトブレイク(2022年5月26日付更新情報)
【カナダ公衆衛生局(PHAC)】
1. 公衆衛生通知:有機栽培の輸入生鮮イチゴに関連して発生している A型肝炎アウトブレイク(2022年6月2日付更新情報、5月27日付初発情報)
2. 公衆衛生通知:スポットエビ(spot prawn)に関連して複数州にわたり発生しているノロウイルス感染と胃腸疾患のアウトブレイク(2022年6月1日付初発情報)
【欧州疾病予防管理センター(ECDC)/欧州食品安全機関(EFSA)】
1. サルモネラおよびカンピロバクターの抗生物質耐性レベルは依然として高い
【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and
Feed)
【欧州食品安全機関(EFSA)】
1. 汚染率に関する2021年の検体ベースデータの報告ガイドライン
【英国保健安全保障局(UK HSA)】
1. 英国保健安全保障局(UK HSA)が韓国疾病予防管理庁(KDCA)との覚書に署名
【英国食品基準庁(UK FSA)】
1. 英国食品基準庁(UK FSA)が国の行動計画(NAP:National Action Plan)の一環として英国の市販子羊肉・七面鳥肉における抗菌剤耐性(AMR)に関する初めての調査結果を発表
【ProMED-mail】
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