欧州でサルモネラ感染患者増加

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。欧州連合/欧州経済領域(EU/EEA)加盟5カ国および英国から2021年に計272人のサルモネラ感染患者が報告されている。国際食品安全当局ネットワーク(INFOSAN)は2021年第4四半期にINFOSAN事務局はWHO加盟86カ国および領土1カ所が関連した計64件の食品安全事例に対応した。

注目記事

【欧州】卵・卵製品に関連して複数国で発生しているサルモネラ

 欧州疾病予防管理センター(ECDC: European Centre for Disease Prevention and Control)発。2021年9月2日、フランスからサルモネラ(Salmonella Enteritidis ST11)感染患者の増加が報告された。2022年1月11日までに、欧州連合/欧州経済領域(EU/EEA)加盟5カ国および英国から2021年の確定患者計272人(フランス216人、スペイン22人、イギリス12人、オランダ12人、ノルウェー7人、デンマーク3人)が報告されている。成人男性2人の死亡が報告され、25人が入院した。患者60人が卵・卵製品の喫食を報告した。

 フランスで2021年に報告された一部の患者は飲食店の利用を報告し、これらの飲食店はいずれもスペインの包装施設から供給された卵を提供していた。当該卵はスペインの3カ所の農場由来であり、このうち1カ所からサルモネラアウトブレイク株が検出された。2021年後半にスペインおよびフランス以外の国で発生したS. Enteritidis ST11アウトブレイク株感染患者については感染源が特定できていない。

 今回の2021年のアウトブレイクは、2019年にオランダから報告された複数国にわたるサルモネラアウトブレイクと微生物学的に関連している。この2019年のアウトブレイクで患者が喫食していた卵は、追跡調査によりスペインの1カ所の農場との関連が特定されたが、2021年のアウトブレイクとの疫学的関連は特定できなかった。このことから、今回のアウトブレイク株による汚染はフードチェーン内または生産チェーンの初期段階で発生している可能性があり、汚染が広範囲に及んでいることが示唆される。

【WHO】国際食品安全当局ネットワーク(INFOSAN)2021年第4四半期報告

 世界保健機関(WHO: World Health Organization)発。2021年の第4四半期に国際食品安全当局ネットワーク(INFOSAN)事務局は、世界保健機関(WHO)加盟の延べ86カ国および領土1カ所が関連した計64件の食品安全事例に対応した。

 このうち生物的ハザード関連の事例は33件で、その内訳は以下のとおりであった。

  • サルモネラ属菌 10件
  • リステリア(Listeria monocytogenes) 10件
  • 大腸菌 3件
  • セレウス菌 1件
  • A型肝炎ウイルス 1件
  • ビブリオ属菌 1件
  • クロストリジウム属菌 1件
  • ボツリヌス菌(Clostridium botulinum) 1件
  • プリオン 1件
  • 黄色ブドウ球菌 1件
  • 赤痢菌(Shigella sonnei) 1件

 上記以外の残りの2件については生物的ハザードの詳細が不明であった。

 また、非表示のアレルゲン/成分に関連した事例は18件で、その内訳は以下のとおりであった。

  • 乳 4件
  • 大豆 4件
  • 卵 3件
  • ピーナッツ 3件
  • アーモンド・ピスタチオ 1件
  • ヘーゼルナッツ 1件
  • 貝類 1件
  • 小麦 1件

 物理的ハザード関連の事例は6件で、その内訳は以下のとおりであった。

  • ガラス 2件
  • プラスチック 2件
  • 異物 1件
  • 金属 1件

 化学的ハザード関連の事例は6件で、その内訳は以下のとおりであった。

  • メタノール 2件
  • アクリルアミド 1件
  • アミグダリン 1件
  • ヒスタミン 1件
  • パツリン 1件

 上記以外の残りの1件の事例についてはハザードの詳細が不明であった。

 INFOSAN事務局が本四半期に対応した上記64件の事例に関連した食品カテゴリーは以下のとおりであった。

  • 魚・水産食品 8件
  • 食肉・食肉製品 8件
  • スナック・デザート・その他の食品 8件
  • ナッツ・油糧種子 8件
  • 野菜・野菜加工品 5件
  • ハーブ・香辛料・調味料 4件
  • 乳・乳製品 4件
  • 砂糖・菓子 4件
  • シリアル・シリアルベース製品 2件
  • アルコール飲料 2件
  • 動物性・植物性油脂 2件
  • 果物・果物製品 2件
  • 複合食品 1件
  • 果物・野菜ジュース 1件
  • ノンアルコール飲料 1件
  • 栄養補助食品 1件

 上記以外の残りの3件については原因食品が特定されなかった。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.05(2022.03.02)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2022/foodinfo202205m.pdf

今号の目次

【世界保健機関(WHO)】
1. 国際食品安全当局ネットワーク(INFOSAN)2021年第4四半期報告(2021年10〜12月)

【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. 小規模飼育の家禽類との接触に関連して複数州にわたり発生したサルモネラ
(Salmonella Enteritidis、S. Hadar、S. Indiana、S. Infantis、S. Mbandaka、S.
Muenchen)感染アウトブレイク(2021年11月18日付最終更新)
2. 水産食品に関連して複数州にわたり発生したサルモネラ(Salmonella Thompson)感染アウトブレイク(2021年12月6日付最終更新)

【カナダ公衆衛生局(PHAC)】
1. 公衆衛生通知:冷凍マンゴーに関連して発生した A型肝炎アウトブレイク(2021年10月12日付最終更新)

【欧州疾病予防管理センター(ECDC)/欧州食品安全機関(EFSA)】
1. 卵・卵製品に関連して複数国にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Enteritidis シークエンスタイプ(ST)11)感染アウトブレイク
【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and
Feed)

【英国食品基準庁(UK FSA)】
1. ヒトのサルモネラ症アウトブレイクに関連したペットフード用冷凍マウスの撤去・回収を受け爬虫類の所有者向けに助言を発表

【オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)】
1. 欧州連合サルモネラリファレンス検査機関(EURL-Salmonella)のタイピング能力試験(2019年)
【ProMED-mail】
1. コレラ、下痢、赤痢最新情報(07)(06)