非定型スクレイピーの知見不足

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。欧州で発生した複数の非定型スクレイピーのアウトブレイクに関連し、2年間にわたる強化モニタリングが実施された。カナダでキムチに関連してO157感染アウトブレイクが発生し、当局が回収警報を発出し、対象のキムチおよびこれらを使用した製品の喫食・使用・販売・提供をしないよう注意喚起している。

注目記事

【欧州】非定型スクレイピーの義務的強化モニタリング

 欧州で発生した複数の非定型スクレイピー(AS)アウトブレイク(2013〜2020年)に関連し、2年間にわたる強化モニタリングが実施された。その科学的データからASの伝染性に関するエビデンスが得られるか、また、ASの疫学に関する新しい知見が得られるかどうかについて、欧州委員会(EC)は欧州食品安全機関(EFSA: European Food Safety Authority)に見解を要請した。

 強化モニタリングは、ヒツジとヤギの両方またはいずれかのAS一次感染症例が報告された22カ国で行われ(ヒツジについては20カ国の計742群、ヤギについては11カ国の計76群)、そのデータセットが解析された。

 二次感染症例はヤギでは確認されず、ヒツジでは8カ国の計28群から計35例が確認された。
 解析結果にもとづき、不確実性およびデータ不足を考慮すると、自然条件下で動物間にASの伝播が起こり得ることを示す新しいエビデンスはないと結論付けられ、ASは伝染性疾患ではなく非伝染性疾患の可能性が高い(主観確率の範囲:50〜66%)と考えられる。AS感染群に関する欧州の強化モニタリングのデータの解析により、ASの既知の疫学的特徴の一部が確認されたが、依然として知見が大幅に不足していることが示された。

【カナダ】キムチに関連して発生しているO157

 カナダ公衆衛生局(PHAC: Public Health Agency of Canada)は、複数州の公衆衛生当局、カナダ食品検査庁(CFIA)およびカナダ保健省(Health Canada)と協力し、2州(アルバータ、サスカチュワン)にわたり発生している大腸菌O157感染アウトブレイクを調査している。

 現時点で得られている調査結果にもとづくと、本アウトブレイクはHankookブランド(ブランド名はハングル表示)のキムチ「ORIGINAL KIMCHI」に関連している。患者の多くが発症前に当該製品を喫食したと報告した。

 2022年1月28日、CFIAは、Hankookブランドのキムチ「ORIGINAL KIMCHI」の一部の製品について食品回収警報を発出した。この警報の対象は、2L容器で販売された内容量1,670gの製品。PHACは、回収対象のキムチおよびこれらを使用した製品の喫食・使用・販売・提供をしないよう注意喚起している。

 本アウトブレイクに関連して検査機関で大腸菌O157感染が確定した患者が2022年1月28日までに計14人報告されており、州別の内訳はアルバータ州(13人)およびサスカチュワン州(1人)である。

 患者の発症日は2021年12月上旬〜2022年1月上旬。死亡および入院は報告されていない。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.03(2022.02.02)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2022/foodinfo202203m.pdf

今号の目次

【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. BrightFarms ブランドの包装済み野菜サラダに関連して複数州にわたり発生したサルモネラ(Salmonella Typhimurium)感染アウトブレイク(2021年10月6日付最終更新)
2. 小型のカメに関連して発生したサルモネラ(Salmonella Typhimurium、S. Poona)感染アウトブレイク(2021年9月29日付最終更新)

【カナダ公衆衛生局(PHAC)】
1. 公衆衛生通知:Hankook ブランド(ブランド名はハングル表示)のキムチ「ORIGINAL
KIMCHI」に関連して発生している大腸菌 O157感染アウトブレイク(2022年1月29日付初発情報)
2. 公衆衛生通知:冷凍ホールカーネルコーン(粒のトウモロコシ)に関連して複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Enteritidis)感染アウトブレイク(2022年
1月21日付更新情報)

【欧州疾病予防管理センター(ECDC)】
1. コレラ -2019年次疫学報告書

【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and
Feed)

【欧州食品安全機関(EFSA)】
1.2年間にわたる非定型スクレイピーの義務的強化モニタリングの結果に関する科学報告書

【英国食品基準庁(UK FSA)】
1. 英国食品基準庁(UK FSA)および英国研究イノベーション機構(UK RI)が食品安全分野の研究のため一般市民と協力

【アイルランド食品安全局(FSAI)】
1.2022年2月10日に「Breakfast Bite」セミナーを開催:テーマは“食品安全研修”

【フィンランド食品局(FFA)】
1.2022年より食品規制のための手数料を事業者から徴収