欧州が二酸化チタン禁止を採択

国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。欧州委員会は二酸化チタンの食品添加物としての使用禁止を採択した。これに関するEFSAの意見書に対して英国の毒性委員会と変異原性委員会が評価を行い、それぞれの見解を公表した。一方、国連食糧農業機関が公表した報告書は、緊急に是正措置を講じない限り、SDGsの目標は世界レベルで達成不可能と示唆している。

【COT】二酸化チタン暫定ポジションペーパー

注目記事

【EC】食品安全:この夏で食品添加物二酸化チタン禁止

 二酸化チタンは、多くの食品に白色を与える食品添加物として使用されている。

 2022年1月14日、欧州委員会(EC)が、食品添加物としての二酸化チタン(E171)の使用禁止を採択した。この委員会規則(EU)2022/63はEU官報公表の20日後(2022年2月7日)の施行を予定している。適用には6カ月間の移行期間を設け、2022年8月7日までは施行前の規則に従って製造された食品の販売を認めるとしている。

 これは、2021年5月6日にEFSAが発表した新しい意見書において、E171の使用について健康への明確なリスクがあると結論付けてはいないが、遺伝毒性に関する懸念を排除できず、もはや安全とはみなされないと述べたことを受けての決定である。使用禁止の案については、昨年9月に加盟国が満場一致で同意していた。

【別添 COT】二酸化チタン暫定ポジションペーパー

 英国の毒性委員会(COT)と変異原性委員会(COM)が二酸化チタンに関するEFSAの意見書(2021)について評価を行い、それぞれの見解をまとめたポジションペーパーが公表された。

※ポイント:ポジションペーパーには、背景として、二酸化チタン評価に関するEUでの経緯と2021年のEFSA意見書の要点が丁寧に紹介されています。

 新しいEFSA意見書へのCOTとCOMの見解はほぼ一致していて、現時点では意見書の結論に同意できないとしています。理由として、EFSAが考慮したデータの質や信頼性が十分に確保されていないことを懸念しています。たとえば、二酸化チタンの粒子サイズが影響に関係する可能性があるが、EFSAの評価で考慮された遺伝毒性試験等の試料に含まれる粒子のサイズやその割合が不均一であり、結果も一貫しておらず、その根拠の重み付けにも疑問が生じると指摘しています。

 現時点ではEFSAの意見書にやや否定的な見解を示していますが、今後も検討を続けると述べていますので、その動向が注目されます。他国のリスク評価機関でも検討が進んでいるようなので、近いうちにそれらの意見も公表されるでしょう。

【FAO】2021年の食料農業関連SDGs指標の進歩を追跡する

 国連食糧農業機関(FAO)が管轄する食料と農業分野において、民間部門によるSDGsへの貢献度を測定する際に利用する21の指標に関するガイダンスとともに、その指標を踏まえた現状と傾向を評価した報告書を公表した。COVID-19のパンデミックの影響は、SDGsのいくつかの指標に及んでおり、改善どころか悪化しているものもある。全体として、食料と農業の分野での進展は依然として不十分であり、緊急に是正措置を講じない限り、関連するSDGsの目標は世界レベルで達成不可能であることが示唆される。

※ポイント:とても具体的に書かれたガイダンスなので、現在、食品事業者が活発に取り組んでいるSDGs事業の貢献度を測るのによい参考になると思います。

(安全情報部第三室)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.03(2022.02.02)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2022/foodinfo202203c.pdf
食品安全情報(化学物質)No.03(2022.02.02)別添
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2022/foodinfo202203ca.pdf

今号の目次

【WHO】
1. 水俣条約初期評価報告書レビュー:健康のための重要知見
2. ヒト健康リスク評価についての WHO ウェビナー-更新 WHO ツールキット

【FAO】
1.2021年の食料農業関連 SDGs 指標の進歩を追跡する
2. Codex

【EC】
1. 食品安全:この夏で食品添加物二酸化チタン禁止
2. さよなら E171:EU は食品添加物としての二酸化チタンを禁止する
3. 新興健康環境問題についての声明 II(2022)
4. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. ONE 会議2022―動画コンテスト近日公開
2. 植物保護製品のリスク評価における管理者、作業者、居住者、近傍者の暴露評価に関するガイダンス
3. COVID‐19パンデミックに関連した EU 機関の業務活動に関する調査結果の分析
4. マルハナバチと単独性のハチの特定の保護目標の定義を支援するための根拠の分析
5. バイオテクノロジーに由来する食品及び飼料のアレルギー誘発性やタンパク質安全性評価の開発ニーズに関する科学的意見
6. ビタミン類と必須ミネラル類の耐容上限摂取量の設定と適用のためのガイダンス
7. 農薬関連
8. 新規食品関連
9. 飼料添加物関連
10. 食品接触物質関連
11. 食品酵素関連

【FSA】
1. 英国の消費者の3分の1は実験室で育てられた肉を試したいと考え、4分の1は昆虫を試したいと考える
2. 我々の科学助言委員会に参加して
3. Emily Mile の関係者向け情報更新― Morrisons、ミルク、消費期限

【FSS】
1. 科学部長 Jacqui McElhine 氏による日付表示に関するガイダンス
2. 代替タンパク質への道を開く

【DEFRA】
1. 植物のゲノム編集研究に新たな力

【DHSC】
1. Defra の主任科学アドバイザーのテンサイへの Cruise SB の使用についての助言

【ASA】
1.「低アルコール」製品の広告に関する規則変更
2. ASA は繰り返し規則を破るインフルエンサーへの制裁を強化
3. ASA 裁定

【BfR】
1. 先端材料は安全で持続可能であるべき

【RIVM】
1. Nature Nanotechnology が RIVM のプラスチック研究を発表

【ANSES】
1. フィトセラピーとアロマセラピー:動物用医薬品のリスク評価を適応

【FSAI】
1. EFSA 意見書:二酸化チタン(E171)は食品添加物として使用する場合、もはや安全とはみなされない
2. Breakfast Bite イベント2月10日:食品安全トレーニング‐知っておくべきこと
3. リコール情報

【FDA】
1. FDA2021年レビュー‐人のために働く
2. 消費者と食品供給を守るために、2021年に FDA の食品プログラムが達成したこと
3. FDA は卵及び卵製品の安全性向上のための新たな卵規制計画基準を発表する
4. 軟体動物貝類向けマリンバイオトキシン管理のトレーニングビデオ
5. FDA は食品接触物質の認可の取り下げに関する手続きを見直し、理由を更新するための新しい規則を提案
6. 食品検査のための試験所認定に関する FSMA 最終規則:一目で分かる
7. FDA と Stop Foodborne Illness が第2回食品安全文化ウェビナーを共同開催
8. 警告文書

【USDA】
1. Pesticide Data Program(PDP)2020年次サマリー
2. FSIS は公衆衛生保護における2021年の成果をハイライト
3. よりゼロに近づける:我々の食品を守るために協力
4. 食品廃棄とその温室効果ガスと気候変動との関連
5. USDA-ARS とコーネル大学は最初の全国ヘンプウェビナーシリーズ提供で協力する

【FTC】
1. オミクロン変異株が増加する中、FTC はさらに多くの事業者に、彼らの製品が COVID-
19を予防あるいは治療できるとの虚偽の主張を止めるよう命令

【カナダ政府】
1. リコール及び安全性警告

【FSANZ】
1. 食品基準通知
2. 食品基準ニュース

【TGA】
1. 広告規約及び医療用製品のネーミングについて

【MPI】
1. 公衆衛生警告

【香港政府ニュース】
1. ニュースレター
2. 食品の有害物質(改正)規則2021
3. 違反情報

【MFDS】
1.日本産輸入食品の放射能検査の結果
2. 食薬処、お正月人気製品のオンライン不当広告178件を摘発
3. 食薬処長、輸入食品安全管理のデジタル転換を強調
4. 農薬・動物用医薬品の情報を一カ所に集約
5.「輸入食品法」重大違反行為申告時に報奨金を支給します
6. コエンザイム Q10など健康機能食品原料9種の再評価
7. EU、韓国食品に適用する輸入強化措置施行日を延期
8.日本、福島原子力発電所事故関連の食薬処対応および管理動向

【SFA】
1. 食品中の残留動物用医薬品
2.2023年までに100名の中途採用者を対象としたアグリテック分野の新しいキャリア転向プログラム
3. マンダリンオレンジの安全性について
4. 気候変動の時代に食の安全を維持する

【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から
・ProMED-mail

別添
【COT】二酸化チタン暫定ポジションペーパー