国立医薬品食品衛生研究所が集めた食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報から。米国農務省食品安全検査局のウシのと畜場および牛肉加工施設関連のガイドラインを改定した。米国で水産食品に関連のサルモネラ感染アウトブレイクが発生し、アウトブレイク株が検出された会社の製品回収が始まった。欧州食品安全機関の栄養・新開発食品・食品アレルゲンに関する科学パネルはコオロギ製品についての意見を発表した。
注目記事
【米国】ウシのと畜場および牛肉加工施設関連のガイドラインを改定
米国農務省食品安全検査局(USDA FSIS: Department of Agriculture, Food Safety and Inspection Service)は、ウシ(子ウシを含む)のと畜場および牛肉加工施設において志賀毒素産生性大腸菌(STEC)汚染リスクを最小限に抑えるためのガイドライン2件を更新し、これらの改訂版が利用可能になったことを発表した。
これら2件のガイドラインは、ウシのと畜場および牛肉加工施設においてSTEC汚染対策を行うための最良実施規範について、小規模および非常に小規模の施設向けに助言を提供している。FSISは、パブリックコメントへの対応として、ガイドラインの一部を明確化させた。一例を挙げると、「法令遵守」(compliance)という表現をガイドラインのタイトルから削除し、ガイドラインは提言であり新たな規制要件を付与するものではないことを明確にした。また、小規模および非常に小規模の施設にとって実用的とは思われない最良実施規範に関する提言も削除した。
【米国】水産食品に関連のサルモネラ
米国疾病予防管理センター(US CDC: Centers for Disease Control and Prevention)、複数州の公衆衛生・食品規制当局および米国食品医薬品局(US FDA)は、水産食品に関連して複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Thompson)感染アウトブレイクを調査するため様々なデータを収集している。
疫学データ、検査機関での検査データおよび追跡調査によるデータは、本アウトブレイクがNortheast Seafood Products社(コロラド州 Denver)により供給された水産食品に関連していることを示している。
情報が得られた患者89人のうち19人が入院し、死亡者は報告されていない。
コロラド州保健当局およびFDAは、患者が食事や買い物をした同州内の飲食店および食料品店で提供・販売された水産食品の供給元に関する追跡調査を行った。FDAは、これらの店舗のほとんどがNortheast Seafood Products社から水産食品の供給を受けていたことを特定した。FDAは同社の施設に立ち入り検査を行い、その際に採取した環境検体を検査しS. Thompsonアウトブレイク株を検出した。
2021年10月8日、Northeast Seafood Products社は、10月7日以降に同社施設で加工された一部の水産食品:「Haddock」(コダラ)、「Monkfish」(アンコウ)、「Bone-in Trout」(骨付きマス)、「Grouper」(ハタ)、「Red Snapper」(鯛)、「Red Rock Cod」「Ocean Perch」「Pacific Cod」(マダラ)、「Halibut」(オヒョウ)、「Coho Salmon」(ギンザケ)、「Atlantic Salmon Portions」(タイセイヨウサケ切り身)、「Lane Snapper」(キセンフエダイ)、「Tilapia」(ティラピア)、「All Natural Salmon Fillet」(天然サーモン切り身)、「Pacific Sole」(タイヘイヨウカレイ)、「Farm Raised Striped Bass」(養殖シマスズキ)などの回収を開始した。
【EU】コオロギの冷凍製品および乾燥製品の安全性
欧州食品安全機関(EFSA: European Food Safety Authority)の栄養・新開発食品・食品アレルゲンに関する科学パネル(Panel on Nutrition, Novel Food and Food Allergens、NDA パネル)は、欧州連合(EU)規則 Regulation(EU)2015/2283にもとづいて新開発食品(NF:Novel Food)に指定されたヨーロッパイエコオロギ(Acheta domesticus)の冷凍・乾燥製品の安全性について、欧州委員会(EC)から意見を要請された。
当該コオロギ製品は、(i)冷凍、(ii)乾燥、(iii)粉砕の3種類の製法が提案されている。当該コオロギ製品の主要成分は、乾燥製品ではタンパク質、脂肪および繊維(キチン)、冷凍製品では水分、タンパク質、脂肪および繊維(キチン)である。
NDAパネルは、当該コオロギ製品の汚染濃度はコオロギ用餌の汚染レベルに依存すると指摘している。また、設定された保存可能期間中に基準値を満たしている当該コオロギ製品について、製品の安定性に関する安全上の懸念はないとしている。
当該コオロギ製品のタンパク質含有量について、窒素-タンパク質換算係数を6.25として算出した場合、キチン由来の非タンパク態窒素が存在することから、タンパク質量は過大推定されるが、それでも含有量は多い。
当該コオロギ製品はスナックの形での使用、および様々な食品の成分としての使用が提案されている。対象の喫食者には一般消費者が想定されている。NDAパネルは、成分および提案されている使用条件を考慮すると、当該コオロギ製品の喫食に栄養上のデメリットはないとしている。
当該コオロギ製品の遺伝毒性および亜急性毒性(亜慢性毒性)に関する研究結果は申請者から提出されていない。過去のA. domesticus(AD)の使用歴または成分データから安全上の懸念がないことを考慮し、NDAパネルは安全性についてアレルゲン性以外の懸念はないと判断した。
NDAパネルは、喫食によりADのタンパク質に対する一次感作が誘発され、甲殻類・ダニ・軟体動物に対するアレルギー反応の原因となる可能性はあると考えている。また、コオロギ用飼料由来のアレルゲンが含まれている可能性もある。NDAパネルは、提案されている使用法および使用レベルにおいて当該コオロギ製品は安全であると結論付けている。
(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)
食品安全情報へのリンク
- 食品安全情報
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
- 食品安全情報(微生物)No.21(2021.10.13)
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2021/foodinfo202121m.pdf
今号の目次
【米国農務省食品安全検査局(USDA FSIS)】
1. 米国農務省食品安全検査局(USDA FSIS)がウシのと畜場および牛肉加工施設における志賀毒素産生性大腸菌(STEC)汚染リスク低減のためガイドラインを更新
【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. 水産食品に関連して複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Thompson)感染アウトブレイク(初発情報)
2. 米国の複数州にわたり発生している原因食品不明のサルモネラ(Salmonella
Oranienburg)感染アウトブレイク(2021年9月30日、24日付更新情報)
【欧州疾病予防管理センター(ECDC)】
1. 欧州疾病予防管理センター(ECDC)の研修プログラム「Cohort2022」のマニュアル
【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and
Feed)
【欧州食品安全機関(EFSA)】
1. 欧州委員会(EC)指令2003/99/EC および施行に関する決定2020/1729/EU の枠組における2021年の抗微生物剤耐性データの報告マニュアル
2. 欧州連合(EU)規則 Regulation(EU)2015/2283にもとづいて新開発食品(NF:Novel
Food)に指定されたヨーロッパイエコオロギ(Acheta domesticus)の冷凍製品および乾燥製品の安全性
【ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)】
1. ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)主催の第9回夏季アカデミーへの参加登録者数が過去最多