国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報（化学物質）No.20（2021.09.29）を発表した。
注目記事
【BfR】食品添加物と香料の検出性の向上
ドイツ連邦リスクアセスメント研究所（BfR）は、食品添加物や香料の分析法を開発し標準化を行うためのリファレンスラボを新設した。このようなリファレンスラボを設立したのはEUではドイツが最初である。
EUでは約320種類の食品添加物と約2,500種類の香料の使用が許可されているが、これまで比較的少数の食品添加物や香料に対してしか標準化された分析法は開発されていない。そのためドイツやEU全体では、食品添加物や香料の使用に関する体系的モニタリングの範囲が限定的であった。
新しいリファレンスラボでは、複数の添加物を同時に定量できるマルチ分析法の確立を目指し、まずはリスクベースで許容一日摂取量（ADI）が設定されている添加物を対象に考えている。
※ポイント：残留農薬検査ではマルチ分析法の導入が進められていますが、食品添加物の場合は個別分析法が利用されるのが一般的です。そのため、BfRが広く使用できるような添加物のマルチ分析法を確立したら画期的なことだと思います。
【FDA/CDC】デルタ-8テトラヒドロカンナビノールを含む製品について
デルタ-8テトラヒドロカンナビノール（デルタ-8THC）は、Cannabis sativa（大麻草/アサ）に含まれる精神活性物質である。C. sativaは、マリファナとヘンプに大別される。デルタ-8THCは大麻植物に天然に含まれる100種類以上のカンナビノイドの1つであるが、ごく微量しか含まれない。そのため高濃度のデルタ-8THCは、ヘンプ由来のカンナビジオール（CBD）から化学合成で製造するのが一般的である。
米国食品医薬品局（FDA）には、2020年12月から2021年7月にかけて、デルタ-8THC含有製品に関する22の有害事象の報告が届いており、うち19人がデルタ-8THCを含む食品（ブラウニー、グミなど）を摂取したことによる。さらに、全国中毒管理センターでは2018年1月から2021年7月31日の間にデルタ-8THC製品関連の報告を661件受信している。デルタ-8THC製品はFDAによる安全性評価や認可を受けておらず、公衆衛生を危険にさらすような方法で販売されている可能性があるとして注意を喚起している。
※ポイント：C. sativaに含まれるTHCと言うとデルタ-9THCが代表的で取り締まりの対象になっていますが、その一方で最近の米国では、デルタ-8THC製品による有害事象の報告が急増しています。とくに、製品の包装や表示が菓子類に似せてあるため子供が興味を持ちやすく、また成分表示されていない場合もあり、意図しない事故につながっているようです。
【FDA】FSMAの農産物安全規則が韓国語と日本語で利用できる
米国FDAの食品安全近代化法（FSMA）のもと策定された農産物安全規則（Produce Safety Rule）の韓国語訳と日本語訳を公表した。当該規則は、ヒトが消費するために栽培される果実や野菜の安全な栽培、収穫、包装、保管のための科学的根拠に基づく最低基準を初めて制定したものである。最終規則は、2016年1月26日に施行されている。
（安全情報部第三室）
食品安全情報へのリンク
- 食品安全情報
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
- 食品安全情報（化学物質）No.20（2021.09.29）
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2021/foodinfo202120c.pdf
今号の目次
【WHO】
1. 国際がん研究機関（IARC）
【FAO】
1. フードシステムサミット－「ニューヨークからローマに戻る」、FAO は結果の履行を主導する
2. Codex
【EC】
1.2020年次食品偽装報告書：欧州の食品偽装との戦いは COVID-19パンデミックの中でも続く
2. 食料不足と食品廃棄を減らす－欧州フードバンク連盟
3. 砂糖、塩、脂肪、繊維：包装済み食品とソフトドリンクはより健康的になったか？
4. 査察報告書
5. 食品及び飼料に関する緊急警告システム（RASFF）
【EFSA】
1. EFSA の専門家会議のニュース速報：FCM、酵素及び加工助剤に関する科学的パネル
2. EFSA ニュースルーム（新規食品に関する動画紹介）
3. 公開会議―食用糖類の耐容上限摂取量に関する科学的意見案
4. グリホサート：EFSA と ECHA が意見募集を開始
5. 農薬関連
【FSA】
1. FSA 理事会2021年9月
【FSS】
1. FSS 理事会-9月15日
2. スコットランドの外食産業分野における Covid-19の影響について
3. 学生向け: 清潔なキッチンでスマートに安全に
【BfR】
1. 食品中 PFAS：BfR は工業用化合物への重要な暴露を確認
2. ゴマに残留するエチレンオキシドの健康リスク評価
3. 食品添加物と香料の検出性の向上
【ANSES】
1. キノコ狩りの季節が今年は早い：中毒リスクを避けるように
【FSAI】
1. 食肉及び鶏肉のハラール表示の監査
2. 未殺菌の植物性発酵食品に関する食品安全ガイダンスを発行
3. リコール情報
【FDA】
1. FDA、FTC は糖尿病を治療すると表示するダイエタリーサプリメントを違法に販売した10社に警告する
2. FDA は「低コストまたはコストのかからない食品トレーサビリティーチャレンジ」の受賞者を決定する：ソリューションを紹介するウェビナーを企画する
3. FSMA の農産物安全規則が韓国語と日本語で利用できる
4. FDA はデジタルトランスフォーメーションの新たな部署を設立し、データと IT の近代化の取り組みを進める
5. デルタ-8テトラヒドロカンナビノールについて知っておくべき5つのこと
6. 警告文書
7. リコール情報
【CDC】
1. デルタ-8THC を含む大麻製品の入手可能性と報告される有害事象の増加
【USDA】
1. 培養肉に関する請願への回答
2. キット製品表示ガイドライン
3. USDA は遺伝子組換えを用いて開発したトウモロコシを規制解除する
4. 遺伝子組換えを用いて開発したリンゴの規制解除拡大
【FTC】
1. FTC は科学的根拠のない糖尿病治療法の表示を行った疑いのある10社に停止要求書を送付
【FSANZ】
1. 食品基準通知
【NSW】
1. リコール情報
【香港政府ニュース】
1. マカオ当局の報告-カリフォルニア州公衆衛生局（CDPH）によるワシントン州保健省からの米国内での高レベルの麻痺性貝毒（PSP）のため特定の貝類のリコールに関する通知
2. ニュースレター：食品中の部分水素添加油（PHO）の禁止
3. 違反情報
【MFDS】
1. 日本産輸入食品の放射能検査の結果
2. 食品由来の抗菌剤耐性低減化のための国際協力強化
3. ケトジェニックダイエット、正確に知って購入してください！
【HSA】
1. 食品（改正）規則2021
【FSSAI】
1. FSSAI はジャンクフードを規制するために「包装表面表示」を導入する計画
2. 統一保健大臣 Shri Mansukh Mandaviya が第3回州食品安全指数を発表
3. 異なる食品カテゴリー中のトランス脂肪についての全インド調査の結果について
【その他】
・ProMED-mail2件
・Eurekalert3件
