キクラゲに関連のサルモネラ

国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(微生物)No.20(2020.09.30)を発表した。

注目記事

【米国】キクラゲに関連のサルモネラ感染アウトブレイク

 米国疾病予防管理センター(US CDC: Centers for Disease Control and Prevention)、複数州の公衆衛生・食品規制当局および米国食品医薬品局(US FDA)は、キクラゲに関連して複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Stanley)感染アウトブレイクを調査している。

 患者の発症日は2020年1月21日〜8月26日である。情報が得られた患者32人のうち4人が入院した。死亡者は報告されていない。

 患者に対し、発症前1週間の食品喫食歴およびその他の曝露歴に関する聞き取り調査が実施された。その結果、情報が得られた患者18人のうち16人が飲食店でのラーメンの喫食を報告した。このうちの数人は同じラーメン店での喫食を報告しており、患者クラスターの一部である可能性が示されている。

 FDAおよび複数州の当局は、患者が喫食したキクラゲの供給元を特定するため追跡調査を実施している。これまでに収集された記録類を詳細に調査した結果、患者クラスターに関連した飲食店にWismettac Asian Foods社がキクラゲを供給したことが特定された。

 カリフォルニア州公衆衛生局(CDPH)は、1クラスターに関連した飲食店1カ所からキクラゲ検体を採取した。これらを検査した結果、Wismettac Asian Foods社から供給されたキクラゲ1検体からサルモネラが検出された。これを受け、2020年9月24日、Wismettac Asian Foods社は、Shirakikuブランドのすべての輸入キクラゲの回収を発表した。

 本アウトブレイク調査は継続中である。

【米国】FSMAの「意図的な異物混入」に関する小規模事業者への立ち入り検査

 米国食品医薬品局(US FDA: US Food and Drug Administration)は、FDAの食品安全近代化法(FSMA)における「意図的な異物混入(IA:Intentional Adulteration)」に関する規則の遵守状況を調べるため、小規模事業者を対象とした定期的立ち入り検査を2021年3月に開始すると発表した。

 大規模事業者の遵守猶予期限日は2019年7月であり、IA規則に定められた立ち入り検査を2020年3月に開始することが2019年発表された。発表後にコロナウイルス感染症(COVID-19)が流行し、移動制限や社会的距離の確保(Social Distancing)などの公衆衛生対策によって立入検査の実施が一時的に困難になり、FDAは、IA規則に定められた大規模事業者の検査など多くの定期的立ち入り検査の延期を余儀なくされた。

 COVID-19の流行によって業界と規制機関の両方に生じた特殊な状況を考慮し、FDAは、IA規則に定められた小規模事業者への定期的立ち入り検査を2021年3月に開始する予定とした。

【ドイツ】食品を保温保存する際の最低温度

●ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR: Bundesinstitut für Risikobewertung)は、保温保存する際に食品由来疾患を防ぐために守るべき最低温度について科学的に評価を行った。この研究では、高温で増殖でき、加熱済み食品に関連する疾患の原因になることが多い芽胞形成菌であるセレウス菌(Bacillus cereus)グループおよびウェルシュ菌(Clostridium perfringens)に焦点が当てられた。

 以前、BfRは食品の保温保存時の温度として65℃以上を推奨していた。最近までの文献情報およびBfRによる数理シミュレーションにより、B. cereus、B. cytotoxicusおよびC. perfringensは57℃を超える温度で増殖する可能性は低いことが示された。しかし、57℃を超えても60℃までは食品中での増殖が緩徐ながらも可能であることを報告している研究もある。

 これらの研究結果にもとづき、BfRは現在、加熱済み食品を喫食するまで少なくとも60℃以上に維持して保温するように助言している。欧州食品安全機関(EFSA)のBIOHAZパネル(生物学的ハザードに関する科学パネル)も、B. cereus感染による食品由来疾患患者の多くが、4℃以下または60℃以上で保存されていなかった生または加熱済み食品に関連していることを2016年に指摘している。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.20(2020.09.30)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2020/foodinfo202020m.pdf

今号の目次

【米国食品医薬品局(US FDA)】
1. 食品安全近代化法(FSMA)の「意図的な異物混入(IA)」に関する規則に定められた小規模事業者への立ち入り検査を2021年3月に開始

【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. キクラゲに関連して複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Stanley)感染アウトブレイク(初発情報)
2. 小規模飼育の家禽類との接触に関連して発生しているサルモネラ(Salmonella Hadar、S. Agona、S. Anatum、S. Enteritidis、S. Infantis、S. Mbandaka、S. I4,[5],12:i:-、S. Braenderup、S. Muenchen、S. Thompson、S. Typhimurium、S. Newport)感染アウトブレイク(2020年9月23日付更新情報)
3. 小規模飼育の家禽類との接触に関連して発生したサルモネラ感染アウトブレイク(最終更新)

【カナダ公衆衛生局(PHAC)】
1. 公衆衛生通知:米国から輸入されたレッドオニオンに関連して発生しているサルモネラ(Salmonella Newport)感染アウトブレイク(2020年9月14日付更新情報)
2. 公衆衛生通知:七面鳥生肉および鶏生肉に関連して発生したサルモネラ(Salmonella Reading)感染アウトブレイク(最終更新)

【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and Feed)

【ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)】
1. 食品を保温保存する際の食品由来疾患予防策

【デンマーク国立血清学研究所(SSI)】
1.2018〜2019年のデンマークのカンピロバクター感染症