国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(微生物)No.10(2020.05.13)を発表した。
注目記事
【スコットランド】カンピロバクター感染に関する新たな調査結果
スコットランド食品基準庁(FSS: Food Standards Scotland)は、スコットランドで細菌性食中毒の最大の原因となっているカンピロバクターに関する新しい調査結果を発表した。
調査の結果、スコットランドでは、より富裕度の高い地域でより多くの患者が報告され、最も貧困な地域に居住する患者で重症化および入院リスクが高いことが確認された。
また、全カンピロバクター患者の約14%が入院に至っており、入院は以下のうち1つ以上のリスク要因と関連する可能性が高いことが示された。
- 年齢が65歳以上である。
- 基礎疾患を有する。
- 感染前90日以内に胃酸産生を抑制するためのプロトンポンプ阻害薬を処方された。
必要な治療に応じて患者ごとに医療費は異なり、65歳以上の患者に関連する費用が最も高くなっている。この年齢層ではカンピロバクター感染の罹患率が最も高く、他の年齢層より入院リスクも高く入院期間も長いが、基礎疾患がその原因の1つとして考えられる。また、より貧困な地域の居住者は感染の臨床転帰が重症となる可能性がより高いため、医療費も高かった。
【欧州】人獣共通感染症細菌と指標細菌の抗菌剤耐性
欧州疾病予防管理センター(ECDC: European Centre for Disease Prevention and Control)および欧州疾病予防管理センター(ECDC)は、欧州連合(EU)域内のヒト、動物および食品由来の人獣共通感染症細菌と指標細菌の抗菌剤耐性に関する2017/2018年次要約報告書を発表した。
ヒト、動物および食品から得られた最新のデータは、分離されたサルモネラ株のほとんどが多剤耐性(3種類以上の抗菌剤に耐性)であることを示した。
ヒト由来株では、とくに一部のサルモネラ血清型でシプロフロキサシン耐性が多く見られ、高濃度のシプロフロキサシンへの耐性率が2016年の1.7%から2018年は4.6%へと上昇した。カンピロバクターのシプロフロキサシン耐性率については、19カ国中16カ国が「非常に高い」または「極めて高い」と報告した。
シプロフロキサシンへの高い耐性率は、家禽由来のサルモネラ株および大腸菌株でも報告されている。シプロフロキサシンは、ヒト治療用として「極めて高度に重要」なランクに分類されるフルオロキノロン系抗菌剤である。フルオロキノロン系抗菌剤の有効性が失われた場合、ヒトの健康に重大な被害が生じる可能性がある。
しかしながら、「極めて高度に重要」な2種類の抗菌剤への複合耐性率に関しては、サルモネラでのフルオロキノロン系抗菌剤と第三世代セファロスポリン系抗菌剤、およびカンピロバクターでのフルオロキノロン系抗菌剤とマクロライド系抗菌剤が依然として低レベルである。
(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)
食品安全情報へのリンク
- 食品安全情報
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
- 食品安全情報(微生物)No.10(2020.05.13)
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2020/foodinfo202010m.pdf
今号の目次
【欧州疾病予防管理センター(ECDC)】
1. サルモネラ症―2017年疫学報告書
【欧州疾病予防管理センター(ECDC)/欧州食品安全機関(EFSA)】
1. 欧州連合(EU)域内のヒト、動物および食品由来の人獣共通感染症細菌と指標細菌の抗菌剤耐性に関する年次要約報告書(2017/2018年)
【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and Feed)
【英国食品基準庁(UK FSA)】
1. コロナウイルスと食品について知る必要があることは何か
2. 英国産市販冷蔵丸鶏から検出されるカンピロバクター(Campylobacter jejuniおよびC. coli)の抗菌剤耐性
【スコットランド食品基準庁(FSS)】
1. スコットランドにおけるカンピロバクター感染に関する新たな調査結果
【ProMED mail】
1. コレラ、下痢、赤痢最新情報2020(02)