国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(微生物)No.08(2020.04.15)を発表した。
注目記事
【スコットランド】ウシが保菌している大腸菌O157についての新しいエビデンス
および英国食品基準庁(UK FSA)は、ウシが保菌する大腸菌O157に関する調査プロジェクトを4年間にわたって実施し、重要な新しいエビデンスを収載する報告書を発表した。
ウシの大腸菌O157保菌率は英国全域にわたり同程度で、スコットランドでは過去10年間比較的変化していないことが示された。ただし、スコットランドのウシでは、super-shedding(糞便中への大量の排菌)に関連する大腸菌O157の特定のサブタイプPT21/28の保菌率がイングランドおよびウェールズのウシよりも高いことが判明した。このサブタイプはヒトの重度の感染症の原因であることが知られており、スコットランドにおけるヒトの大腸菌O157罹患率がイングランドおよびウェールズの約3倍であるのは、地域的にこのサブタイプへの曝露が多いことが潜在因子になっている可能性も考えられる。
また、ウシからの大腸菌O157の排菌およびウシ間での伝播を抑制するために開発されたワクチンの試験も行った。その結果、このワクチンはヒトの大腸菌O157への曝露および感染の低減に有効である可能性が認められた。しかし、このワクチンの市場出荷を可能にするには、農場での実用性および公衆衛生対策としての有効性を評価するさらなる試験が必要である。
【ドイツ】コロナウイルスから自分の身を守る対策を取る人が増加
ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR: Bundesinstitut für Risikobewertung)は2020年3月24日から、コロナウイルスに関するモニター調査「BfR-Corona-Monitor」を毎週行い、その結果を公表している(第1回は2020年3月24日に実施し510人が参加。第2回は3月31日に実施し500人が参加)。
今週の調査の結果から、「自分の身を守るための行動を取っていない」と報告した回答者が先週より10%減少したことが明らかになった。BfRのHensel所長によると、回答者の78%がウイルス感染を防ぐために特別な注意を払っており、コロナウイルスがもたらすリスクが非常に明確に認識されていることが示されている。
回答者が実施している予防策としては、引き続き「人込みを避けること」が最も多く報告された。しかし、先週と比較して、「マスクや手袋などの保護衣を身に着けること」が重要であるという認識が高まった。
一方、ウイルスの封じ込めのための措置を支持したいとする回答者は減少している。行事の中止、旅行の制限および隔離措置については、依然として90%を超える人が適切であると考えているが、外出禁止令や接触禁止を許容する回答者は減少した。接触禁止については回答者の88%が適切と考えられるとしたが、外出禁止令を許容する回答者は67%に減少した。
コロナウイルス感染の経路としては、「他者との接近」(79%)および「ドアノブへの接触」(63%)を引き続き有力視する回答者が多かった。しかし、食品についても感染経路の1つとして注目が高まっているとみられ、食品を介した感染リスクが高いとした回答者は、先週の12%から今週は18%へと増加した。現時点での知見によると、食品を介して感染する可能性は低く、このような感染経路があったとしても衛生対策を通じて封じることができる。
(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)
食品安全情報へのリンク
- 食品安全情報
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
- 食品安全情報(微生物)No.08(2020.04.15)
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2020/foodinfo202008m.pdf
今号の目次
【米国農務省(USDA)】
1. コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するFAQ(食品安全関連の部分を抜粋)
【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. エノキダケに関連して発生しているリステリア(Listeria monocytogenes)感染アウトブレイク(2020年4月8日、3月27日付更新情報)
【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and Feed)
【スコットランド食品基準庁(FSS)】
1. ウシが保菌している大腸菌O157についてスコットランド食品基準庁(FSS)および英国食品基準庁(UK FSA)が重要な新しいエビデンスを発表
【ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)】
1. コロナウイルス感染症(COVID-19)から自分の身を守るために対策を行う人が増加