電子タバコによる肺損傷の調査

国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(化学物質)No.23(2019.11.13)を発表した。また、「電子タバコに関する参考情報」を食品安全情報(化学物質)No.23(2019.11.13)別添として発表した。

注目記事

【FDA】FDAは食品検査のための試験所認定プログラムを策定するための規則案を公表

米国食品医薬品局(FDA)は食品安全近代化法(FSMA)に従い、食品検査のための試験所認定プログラム(Laboratory Accreditation Program)を提案し、意見を募集する。この試験所認定プログラム案はISO/IEC 17011:2017とISO/IEC17025:2017を基礎に、FDAが追加した要求事項も含め、認定機関とそれに認定された試験所がそれぞれ従うべき基準と手続きについて、またFDAがどのようにプログラムを管理し監視するのかを記している。

※ポイント:食品の安全性を監視する上で鍵となる信頼できる質の高い検査データを得られるよう、FDA主導で管理するプログラムを作ろうとしています。試験所の認定については2004年頃から検討されていたようですが、FSMAでその設置が規定されたことを受けて最終化することになりました。食品安全のために必要なことを国の機関が考え先導して着実に適切に実行していくことの重要性を再認識させられました。

【香港政府ニュース】食品中の金属汚染物質に関する改定規則が発効

「Food Adulteration(Metallic Contamination)(Amendment)Regulation 2018」(改定規則)では食品中の金属汚染物質についての基準値を更新し11月1日に発行した。改定の目的は健康保護、実効性ある規則の推進、国内基準の国際基準への整合である。改定規則では、最大基準値を設定する金属汚染物質の種類と対象品目を増加し、個々の食品および食品グループの定義、乾燥/脱水/濃縮製品や配合製品へのMLsの適用の原則も規定した。

※ポイント:改定規則では非常に細かく基準値が設定されています。たとえば、総ヒ素の基準値の対象品目は11種(ボトル入り飲料水、ナチュラルミネラルウォーター含む)、無機ヒ素は6種といった具合です。香港へ食品を輸出する際には、これらをすべてクリアしていることを確認する必要がありますので、ご注意ください。

【別添】電子タバコに関する参考情報

米国疾病予防管理センター(CDC)の報告によると、米国内で電子タバコまたは蒸気吸入製品の使用に関連した肺損傷の患者数が2019年11月5日時点で2,000人を超えました。

死亡者は39名です。これまで、ほとんどの患者が主に街角や知人、違法販売者から入手したテトラヒドロカンナビノール(THC)含有製品を使用していたことはわかっていましたが、原因として疑われる成分は特定されていませんでした。しかし最新報告によると、患者29名の気管支肺胞洗浄液の検査で、すべてのサンプルにvitamin E acetate(和訳:トコフェロール酢酸エステル、ビタミンE酢酸エステル)が含まれていることが確認されました。FDAからも、患者が使用していた製品で同物質を検出したことが報告されています。

この結果について、肺における損傷の原発部位にvitamin E acetate が存在することの直接的な証拠ではあるが、現状ではその他の化学物質の寄与を無視することはできないとして、FDAとCDCは引き続き調査を進めて行くと報告しています。

食品の問題ではありませんが、被害が大規模で、以前に食品の包装に似せたe-リキッドが問題になったこともあったので、今号ではFDAとCDCの報告を中心に、電子タバコや蒸気吸入製品の使用による肺損傷に関する記事をまとめて「別添」としてご紹介しました。

(安全情報部第三室)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.23(2019.11.13)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2019/foodinfo201923c.pdf
食品安全情報(化学物質)No.23(2019.11.13)別添
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2019/foodinfo201923ca.pdf

今号の目次

【WHO】
1. 国際がん研究機関(IARC)

【FAO】
1. Codex

【EC】
1. 衣類にビスフェノールAが存在することについての科学的意見の要請
2. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. 食品添加物関連
2. 食品と飼料中のグリコアルカロイドとキノリジジンアルカロイドの化学的性質と毒性に関する研究の広範な文献検索と妥当性での選択―最終報告
3. 食品と接触する物質関連
4. 遺伝子組換え関連
5. 飼料添加物関連

【NHS】
1. Behind the Headlines

【ASA】
1. ASA裁定

【BfR】
1.人々はリスクをどう理解する?
2. ポリアミド台所用品:熱い食品との接触はできるだけ短く

【RIVM】
1. RIVMは土壌中PFASの暫定バックグラウンド値を計算する
2. フードサプリメントの安全性評価テンプレート
3. オランダの環境放射能:2017年の結果
4. 水道水を介した鉛暴露は時折高すぎる

【ANSES】
1. ミツバチを守るために植物保護製品の評価強化
2. 野生キノコの摂取による中毒増加:注意!
3. 食べられないカボチャに注意
4. Lubrizol工場での産業火災:ANSESの意見
5. ビスフェノールAをビスフェノールBに代えるのは避けるように

【FSAI】
1. 甲虫混入の可能性のためFu Xing FX小麦粉のリコール

【FDA】
1. FDAはグラスフロント型自動販売機のカロリー表示に関する最終規則を発表
2. FDAは食品中PFASの分析法と最近の調査からの最終結果を公表
3. USDA、EPA及びFDAは食品廃棄削減同盟のパートナーシップを発表
4. FDAは食品検査のための試験所認定プログラムを策定するための規則案を公表
5. FDAは一部の共同製造業者にFSMAのもとでの執行の自由裁量方針を継続する
6. 妊娠中あるいは授乳中にCBDを含めた大麻使用について知っておくべきこと
7. 抗生物質耐性との闘い
8. 公示:CholesLoは表示されない医薬品成分を含む
9. リコール情報
10. 警告文書

【NIH】
1. ODS Mary Frances Piccianoダイエタリーサプリメント研究演習

【FTC】
1. FTCは2017年大衆市場消費者詐欺調査の結果を発表
2. FTCはマルチレベルマーケターNeora、以前の名前Nerium、を違法マルチ商法を行ったとして訴える

【CFIA】
1. 食品安全性検査報告 2019年10月24日

【FSANZ】
1. レギュラトリーサイエンス戦略2019-2023
2.年次報告書2018-2019年
3. 食品基準通知

【APVMA】
1. 意見募集-2,4-Dの再検討

【TGA】
1. 安全性警告

【MPI】
1. 貝のバイオトキシン警告-Port Underwood

【香港政府ニュース】
1. 食品中の金属汚染物質に関する改定規則が発効
2. 包装済み冷蔵鶏肉のサンプルに残留動物用医薬品が検出された
3. カニのサンプルに基準値超過のカドミウムが検出された

【MFDS】
1.日本産輸入食品の放射能検査の結果
2.「ニベ」なのか「ニベのこども」なのかを表示で確認して下さい
3. 食品医薬品安全処、食品放射能安全管理の国際シンポジウムの開催
4. 食品医薬品安全処、輸入食品の安全管理のためのコミュニケーションの場を用意
5. リンゴなどの収穫前の残留農薬検査で安全な農産物の流通
6. 故意、常習的に虚偽・誇大広告した業者の点検結果発表
7. ペペロデー、修学能力試験備えギフト食品の全国一斉点検
8. 低糖/低塩で健康な一週間の給食キャンペーン運営
9. 無申告輸入器具・容器の回収措置

【FSSAI】
1. メディアコーナー
2. FSSAIは学校で子供たちに提供される食品の10項目憲章を提案

【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から
・(ProMED-mail)汚染ホウレンソウ-トルコ:チョウセンアサガオ疑い
・(ProMED-mail)電子タバコ関連疾患―北米(第4報):米国、ビタミンEとTHC
・(EurekAlert)血液凝固抑制剤を使用している人の33%が重大な相互作用の可能性がある市販のサプリメントを使用している
・(EurekAlert)良くある市販のコレステロールを下げるビタミンに関連する目の障害は回復できる

別添
電子タバコに関する参考情報(米国における肺疾患関連の情報を中心に)