サーモンに関連のリステリア

国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(微生物)No.23(2018.11.07)を発表した。

注目記事

【欧州】サーモン製品の喫食に関連して複数国にわたり発生しているリステリア

 欧州疾病予防管理センター(ECDC: European Centre for Disease Prevention and Control)発。欧州連合/欧州経済領域(EU/EEA)において複数国にわたるリステリア(Listeria monocytogenes ST8)感染アウトブレイクが発生し、全ゲノムシークエンシング(WGS)解析によって患者計12人がデンマーク(6人)、ドイツ(5)およびフランス(1)で特定されている。これらの患者のうち4人は、リステリア感染が原因で、もしくはリステリア感染中に他の疾患が原因で死亡した。

 2017年8月に最初の患者クラスターがデンマークで確認され、調査の結果、ポーランド産のready-to-eat(そのまま喫食可能な)冷燻サーモンの喫食との関連が特定された。その後2017年10月にフランスから、デンマークでのアウトブレイク調査で特定されたポーランドの加工業者が製造したサーモンマリネの検体から上記と同じL. monocytogenes株が検出されたことが報告された。これは、汚染がポーランドの当該加工業者の施設で発生した可能性があるとの仮説を裏付けるものである。

 しかし、ポーランドの当該加工施設で採取された環境および食品検体に由来する分離株についてはWGSデータが欠損しているため、ポーランドの当該加工施設で本アウトブレイク株(L. monocytogenes ST8)による汚染が起きたことを確認することは現時点では不可能である。さらに、汚染食品の当該バッチに使用されたサーモンの一次生産者であるノルウェーの業者に関する詳細情報が報告され評価が実施されるまでは、一次生産レベルでの汚染の可能性も排除できない。

 デンマークでのアウトブレイク調査の結果を受けて2017年9月に対応措置が講じられたが、フランスでサーモン製品から同じL. monocytogenes株が検出されたこと、および、ドイツで新規患者が報告されたことから、汚染源はまだ不活化されておらず、汚染製品はデンマーク以外のEU加盟国にも出荷されたことが示唆される。

 感染源が完全に除去されるまで、侵襲性リステリア症の新規患者報告が続く可能性がある。妊婦、高齢者および免疫機能が低下している人は、重篤な臨床経過や死亡の可能性を伴う侵襲性リステリア症の罹患リスクが高い。

【WHO】国際食品安全当局ネットワーク(INFOSAN)四半期報告

 国際食品安全当局ネットワーク(INFOSAN)は、各国の食品安全を担当する官庁の国際的ネットワークで、国際連合食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO: World Health Organization)が共同で管理している。その第3四半期報告(2018年7~9月)が発表された。

 当四半期に、世界保健機関(WHO)加盟の延べ141カ国が関連した食品安全事例32件に対応した。

 このうち生物学的ハザード関連の事例は19件で、内訳は、サルモネラが8件、および、アニサキス、セレウス菌(Bacillus cereus)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、クロノバクター(Cronobacter sakazakii)、サイクロスポラ(Cyclospora cayetanensis)、大腸菌、リステリア(Listeria monocytogenes)、シュードモナス(Pseudomonas)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)が各1件であった。

 また、物理的ハザードは6件(金属4件、ガラス2件)、化学的ハザードは4件(ヨウ素2件、ホウ素1件、ヒスタミン1件)、未知のハザードは2件、および非表示のアレルゲンは1件(甲殻類)であった。

 これら32件の事例に関連した食品のカテゴリーは、多い順に、ハーブ・香辛料・調味料(6件)、スナック・デザート・その他の食品(6)、魚・その他の水産食品(5)、乳・乳製品(5)、ボトル入り飲料水(2)、乳幼児用食品(2)、野菜・野菜加工品(2)、シリアル・シリアル関連製品(1)、果物・果物加工品(1)、およびナッツ・油糧種子(1)であった。1件については食品カテゴリーが不明であった。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.23(2018.11.07)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2018/foodinfo201823m.pdf

今号の目次

【世界保健機関(WHO)】
1. 国際食品安全当局ネットワーク(INFOSAN)四半期報告(2018年7~9月)

【汎アメリカ保健機構(PAHO)】
1. コレラの流行に関する更新情報(2018年10月11日付)

【Morbidity and Mortality Weekly Report (CDC MMWR)】
1. 食品由来疾患アウトブレイクサーベイランス(米国、2009~2015年)

【欧州疾病予防管理センター(ECDC)/欧州食品安全機関(EFSA)】
1. 合同迅速アウトブレイク評価:サーモン製品の喫食に関連して複数国にわたり発生しているリステリア(Listeria monocytogenes ST8)感染アウトブレイク

【欧州委員会健康・食品安全総局(EC DG-SANTE)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and Feed)

【オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)】
1. オランダでの食品由来アウトブレイクの発生状況に関する報告書(2017年)

【ProMed mail】
1. コレラ、下痢、赤痢最新情報