国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(化学物質)No.21(2017.10.11)を発表した。
注目記事
【Interpol】違法なオンライン販売の医薬品に対しINTERPOLが最大規模の活動を展開、数百万もの医薬品を押収
国際刑事警察機構(INTERPOL)の第10回パンゲア作戦(Operation Pangea X)が、オンラインで違法に販売されている医薬品および医療機器に的を絞って実施された。期間中に世界中で約400件が検挙され、危険性を有している可能性がある医薬品が5,100万米国ドルを超える金額に相当する分量押収された。
第10回パンゲア作戦には、最多となる123カ国から197の警察機構、税関および保健管理局が参加し、世界中で、はやり最多となる2,500万件の違法医薬品や偽造医薬品が押収された。この活動では1,058件の捜査が行われ、3,584件のウェブサイトが通信を遮断され、3,000件の違法な医薬品のオンライン広告が停止に追い込まれた。
※ポイント:パンゲア作戦の規模は年々大きくなっており、日本も参加しています。参加国からは自国で実施されたパンゲア作戦の結果が報告されていて、今号でもいくつか紹介しています。たった数日の取り組みなのに、毎年、世界中で、多くの違法医薬品等が押収され、逮捕者が出ていることを考えると、オンライン上での違法広告/販売の問題がどれほど深刻なのかがおわかりいただけると思います。
対象には医薬品だけでなく、ダイエタリーサプリメントや栄養補完製品など日本では食品として販売される製品もあります。
【EC】フィプロニル事件
欧州委員会(EC)はフィプロニル事件のフォローアップに関する高官レベル会議を開催し、食品不正に対する対策をEU規模で強化するための19の具体的措置について合意した。
※ポイント:今回のようにEU規模で問題になりそうな事案が発生した時に、一国ではなく、加盟国が連携して統一した管理体制を構築できるようにすることを目的としています。とくに、食品不正の迅速な検知、情報共有の改善(RASFFなどの現行システムの活用)、専任の担当官の配置などを検討する内容になっています。
【EFSA/BfR】グリホサート評価関連
グリホサートに関するEUの評価文書が申請者からの提出文書を盗用しているのではないかという報道を受けて、欧州食品安全機関(EFSA)とドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)が各々のウェブサイトで説明文書を公表した。
※ポイント:各説明文書は、このような報道の原因は、農薬評価がどのように行われているのかを報道関係者が十分に理解していないことが原因だと指摘しています。とくに、農薬のリスク評価の過程で評価者が、規制上要求されて申請業者から提出された資料と、評価のために別途集められた学術文献などの資料をすべてレビューした上で、その要約や関連する部分を抜き出して評価書にまとめることは、国際的にみても標準的な評価手続きだと説明しています。
リスク評価のやり方を一般の人に理解して貰うことは難しいことかもしれませんが、評価結果を伝える上でも大切なことだと思います。この記事を読んで、日本の食品安全の情報を提供する者にとっても課題の一つだと感じました。
【EFSA】EU数カ国でのヒスタミン中毒事例の評価
2017年にEU域内でヒスタミン食中毒の発生が急増したことから、欧州委員会の要請を受けて、EFSAは「食品および飼料に関する緊急警告システム(RASFF)」に通知された、EU数カ国におけるマグロの摂取によるヒスタミン中毒事例を検証した。
※ポイント:今年EUではマグロによるヒスタミン中毒の大規模アウトブレイクが発生しました。その遡り調査の結果です。漁船から加工業者、さらに小売店までの全業者の取引の関係図を作成して、どの段階で何が原因でヒスタミンが発生したのかを突き止めようとしたようです。
結果は、フードチェーンのさまざまな段階の複数の業者が関係していたことが示唆され、EFSAは各段階での適切な温度管理と衛生管理を勧告しています。報告書にまとめられた取引の関係図を見れば、その複雑さと、原因究明の難しさ、複数要因が関与していることがわかります。
【BfR】欧州におけるシガテラ事例の増加
シガテラは熱帯・亜熱帯の海域で捕れた魚を原因とする魚中毒である。ここ数年、欧州ではスペインとポルトガルの島々でシガテラが報告されるようになり、新たな情報によると地中海においてシガトキシンを含む魚の発生が増加している。EFSAが支援し、ドイツを含む6加盟国14機関が参加して、欧州でのシガテラの発生状況と疫学的特徴を明らかにすることを目的とした「EuroCigua」プロジェクトを紹介する。
※ポイント:「EuroCigua」プロジェクトは2016年から4年計画で開始していて、全体の管理はAECOSAN(the Spanish Agency for Consumer Affairs Food Safety and Nutrition)が担当しています。
(安全情報部第三室)
食品安全情報へのリンク
- 食品安全情報
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
- 食品安全情報(化学物質)No.21(2017.10.11)
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2017/foodinfo201721c.pdf
今号の目次
【Interpol】
1. 違法なオンライン販売の医薬品に対しINTERPOLが最大規模の活動を展開、数百万もの医薬品を押収
【EC】
1. 新規食品-認可リスト
2. フィプロニル事件
3. 欧州委員会 保健・食品安全総局長Vytenis Andriukaitisの世界心臓の日に向けてのメッセージ:心臓をより健やかに保つための食品および飲料の考え方
4. 報道資料:EUとFAO、食品廃棄と薬剤耐性の問題に協力して取り組む
5. 査察報告:ジンバブエ、リトアニア、
6. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)
【EFSA】
1. グリホサート
2. 欧州議会の議長がEFSAを訪問
3. パブリックコメント募集:ナトリウムの食事摂取基準
4. EFSAのパネルメンバーを採用している組織の調査
5. EU数ヵ国でのヒスタミン中毒事例の評価
6. ゾキサミドについての農薬リスク評価ピアレビュー
7. エトキサゾールについての農薬リスク評価ピアレビュー
8. 白きょう病菌Beauveria bassiana IMI389521株についての農薬リスク評価ピアレビュー
9. ミツバチの健康に関するデータの収集と共有
10. 食品添加物としての12の加工デンプン(酸化デンプンE 1404、他)の再評価
11. 動物飼料に使用する亜麻仁のシアン化水素の除去工程の評価
【FSA】
1. 2 Sisters Food Group へのFSA調査について更新
【FSS】
1. 表示されていないセロリのためLoch Arthur Creameryはチーズをリコール
【NHS】
1. 2型糖尿病の人は「炭水化物を食事の最後まで取っておく」べきとする研究結果
【ASA】
1. ASA裁定
【BfR】
1. グリホサート評価関連:BfRは盗用の告発を一蹴
2. 欧州におけるシガテラ事例の増加
3. リスク評価の過去、現在、未来の世界的な課題―消費者の健康保護強化
4. BfR Science News
【RIVM】
1. 卵のフィプロニル
2. ProSafe白書
【ANSES】
1. フランス食品環境労働衛生安全庁、植物医薬品安全性監視計画の一環で、養蜂受粉技術科学研究所と連携協定を結ぶ
2. キノコ中毒が増加: 要注意
【EVIRA】
1. 昆虫食がまもなく食事の一部となる
【FDA】
1. FDAは栄養成分表示最終規則の法令遵守日の延期を提案
2. グルテンフリー表示基準が実際にもたらした影響
3. 色素認証報告
4. リコール情報
5. 警告文書
【FTC】
1. FTCは消費者がオンライン広告のアフィリエイトマーケティングを理解するのを助ける
2. FTCはElimidrol「オピエート離脱症状」製品を購入した消費者に合計21万ドル以上の返金小切手を送っている
【APVMA】
1. オーストラリアにおける昆虫授粉媒介者リスク評価のロードマップ
2. 主任科学者のブログ:世界のレギュラトリーサイエンスを新しい分析法を使って進歩させる
【MPI】
1. 貝のマリンバイオトキシン警告-Taranaki海岸線
【NZMH】
1. Medsafeはインターネットでの医薬品の購入の危険性を強く訴える
【MFDS】
1.日本産輸入食品の放射能検査の結果
2. 廃採卵鶏の検査強化で市販流通を事前遮断
3. 消費者安全のため食品への注意事項表示強化!
4. 回収措置
【HSA】
1. Geylangにて過去5年で最大の違法精力剤、$700,000相当を押収
2. HASは国際刑事警察機構(INTERPOL)のパンゲア作戦において、禁止物質を含む39,000以上の違法健康商品、末端価格$133,000を押収
3. クロルヘキシジンによる深刻なアレルギー反応のリスクに関する安全性レビュー
【その他】
・(ProMED-mail)スコンブロイド魚中毒-ヨーロッパ(02):スペインのマグロ
・(ProMED-mail)食中毒 イタリア:(ロンバルディ)包装済みホウレンソウ、マンドレイク汚染の可能性
・(EurekAlert)男性がエプソム塩摂取後重症肝障害になった
・(EurekAlert)エネルギードリンクの害を最小化する方法をみつける
・(EurekAlert)デンマークの動物の抗菌剤使用は減少傾向が続く
・(EurekAlert)世界中のハチミツからネオニコチノイドが検出される
・(EurekAlert)シーソルトのカビ汚染は食品をダメにする可能性
・(EurekAlert)カナダではグルテン不耐は診断されていないようだ