リスク大でも認知度低い問題

国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(化学物質)No.20(2017.09.27)を発表した。

注目記事

【FSANZ】アレルゲン表示について

オーストラリア・ニュージーランド食品基準局(FSANZ)は2017年5月25日にアレルゲン表示義務の対象品目にハウチワマメ(lupin)を追加した。FSANZはアレルゲン表示の関連情報をまとめた専用ウェブサイトを作成し、表示義務の対象品目を紹介するポスター、表示免除の対象製品、警告文および注意書きなどについて詳しく紹介している。

※ポイント:この専用ウェブサイトは丁寧に作られており、さまざまな関連情報へのリンクも貼られています。警告文および注意書きについては、アレルゲン以外の食品についても一覧表で紹介しているので理解しやすいです。乳幼児へのリスクに細かく対応していることや、キニーネ、カフェイン、ミツバチの花粉、プロポリスを含む食品に注意書きが求められている点は興味深いです。

【FSS】杏仁(アプリコットカーネル)に関する更新情報

食品基準スコットランド(FSS)は杏仁(アプリコットカーネル)とビターアーモンドの販売に関して食品事業者に対する助言を更新する。委員会規則No 1881/2006(食品中の汚染物質の最大基準値の設定)を改正した委員会規則No 2017/1237において、生(未加工の粒を砕いたものも含む)の杏仁中のシアン化水素(HCN)の最大基準値(ML)20mg/kgが設定されたことによるものである。

※ポイント:アプリコットカーネルには天然にアミグダリンが含まれ、摂取量が多くなるとシアン中毒を生じます。そのため各国では、摂取する粒数を制限するなどの注意喚起をこれまでに何度も行っています。アプリコットカーネルはがん予防を謳って販売されることがあり、過剰摂取による中毒が絶えません。そのような背景をもとに、EUでは昨年にEFSAがリスク評価書を公表し、HCNの最大基準値を設定したようです。

【BfR】食品中の汚染物質:天然由来物質については健康へのリスクが過小評価されがち

ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は、食品中の汚染物質によるリスクに対する認知度について調査を行った。1,001人を対象に電話インタビューを実施した。

食品中の最もよく知られた汚染物質は、魚の水銀、卵や牛乳のダイオキシンであった(認知率はそれぞれ78%と70%)。それに引き換え、消費者保護に関する話題として比較的新しく取り挙げられた茶やハチミツ中のピロリジジンアルカロイド(PAs)および米や米製品中のヒ素は、回答者の少数にしか知られておらず(それぞれ13%および26%)、そのうちのたった36%と57%だけしか、これらの物質が健康への重大なリスクを生じることを理解していない。

食品中の汚染物質への一般的な考え方や健康への潜在的なリスクについての判断は集団によっても異なり、健康リスクに関する情報を伝える場合の課題は、十分な知識を有していない集団の意識レベルを高めることである。

※ポイント:リスクの大きさと消費者の認知度が一致しないのは各国共通の問題で、食品のリスクを伝えることの難しさと課題を改めて認識させられます。

(安全情報部第三室)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.20(2017.09.27)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2017/foodinfo201720c.pdf

今号の目次

【WHO】
1. 世界は抗生物質を使い果たしつつある、WHOの報告が確認
2. IPCS:健康のために水銀を歴史にしよう、化学物質管理ロードマップ

【EC】
1. 事業者向け通知:バイオサイド
2. 査察報告書:フランス、フィンランド、カメルーン、インド、ジンバブエ、デンマーク
3. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. 食品および飼料中へのデオキシニバレノール、そのアセチル化体及び修飾型の存在によるヒトと動物の健康へのリスク
2. グリホサートの潜在的な内分泌かく乱性についての農薬リスク評価に関するピアレビュー
3. 科学的評価に証拠の重み付けアプローチを適用することに関するガイダンス案についてのパブリックコメント募集結果
4. 科学的評価においてデータの生物学的妥当性を評価することに関するガイダンス案についてのパブリックコメント募集結果
5. クロアチアの成人を対象にした全国食品摂取調査
6. 香料グループ評価

【FSA】
1. 卵のフィプロニル情報更新

【FSS】
1. 杏仁(アプリコットカーネル)に関する更新情報

【NHS】
1. Behind the Headlines

【BfR】
1. 食品中の汚染物質:天然由来物質については健康へのリスクが過小評価されがち
2. グリホサート:BfRは申請者のオリジナル研究を徹底的に精査・評価した
3. 小さな硬い砂糖玉による窒息のリスク

【RIVM】
1. PFOAの水質基準提案
2. 公衆衛生のための市民科学:期待できるアプローチ

【EVIRA】
1. キノコの取り扱い

【FDA】
1. 米国食品医薬品局長官、州の農務局長に向け、「米国食品安全強化法に対応するため、州との協力を強め農家を守る新たな措置が講じられる」と説明
2. 警告文書

【NTP】
1. Abstract for TR-584:インドール-3-カルビノール
2. Abstract for Report TOX-85:テトラブロモビスフェノール A-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)
3. ゲノミクスの用量反応モデルへのNTPアプローチ案のピアレビュー

【FSANZ】
1. アレルゲン表示について
2. 基準改定通知

【TGA】
1. 安全性警告

【NSW】
1. リコール

【香港政府ニュース】
1. 偽造衛生文書が調査される

【MFDS】
1. 卵の関連記事
2. 実生活で活用できる糖類低減料理を作る
3. 子供達は、酸味キャンディーを一度に大量に摂取しないでください!
4. 食品医薬品安全処、秋夕(韓国のお盆)に備え人気食品の輸入検査強化
5. 回収措置

【その他】
・(EurekAlert)低レベル放射線ばく露は他の現代的ライフスタイルリスクより害が少ない