Doleサラダのリステリア

国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(微生物)No.03(2016.02.03)を発表した。

注目記事

【米国食品医薬品局ほか】Doleが包装済みサラダ製品自主回収

 米国食品医薬品局(US FDA: US Food and Drug Administration)によると、Dole Fresh Vegetables社がサラダ製品の自主的な撤去をおこなっている。同社は、オハイオ州Springfieldにある同社製造施設の稼働を一時的に中止しており、同施設で製造されたDoleブランドおよびプライベートブランドのすべての包装済みサラダ製品を市場から自主的に撤去している。

 米国疾病予防管理センター(US CDC)は複数州の公衆衛生当局および米国食品医薬品局(US FDA)と協力し、複数州にわたり発生しているリステリア(Listeria monocytogenes)感染アウトブレイクを調査している。

 リステリアアウトブレイク株の感染患者は、2015年7月5日から2016年1月21日までに6州から計12人が報告されている。これらの患者から分離された臨床株についてWGS解析(全ゲノムシークエンシング)が実施され、その結果、これらすべての分離株の間に高度な遺伝的関連が認められた。

 患者のリステリア臨床検体は2015年7月5日~12月23日に採取された。患者の年齢範囲は3~83歳、年齢中央値は66歳で、69%が女性である。12人全員が入院し、このうちミシガン州の患者1人がリステリア症が原因で死亡した。患者のうち1人は妊婦である。

 今回の撤去に関する詳細情報は米国疾病予防管理センター(US CDC)のサイト(http://www.cdc.gov/listeria/outbreaks/)から得られる。

 カナダ公衆衛生局(PHAC: Public Health Agency of Canada)もDole社同施設で製造された包装済みサラダ製品を喫食しないよう消費者に注意喚起を行っている。

【世界保健機関】第2次コーデックス信託基金が発足

 国連食糧農業機関(FAO)および世界保健機関(WHO)は、過去12年間にわたり第1次コーデックス信託基金(CTF1)を通じて、コーデックス委員会(CAC)での国際食品規格策定作業に参加する145カ国の2,385人に援助を行ってきた。この経験を生かすために、 FAO/WHOは2016年1月1日に新しいコーデックス信託基金(Codex Trust Fund- 2)を立ち上げた。今後12年間は、各国の能力向上を目指し100カ国以上に複数年にわたる援助が提供される予定である。

 WHOの食品安全・人獣共通感染症部長である宮城島一明博士は、「今回の新しいコーデックス信託基金に期待することは、2027年までにすべての国がコーデックスに十分かつ効果的に携わり、コーデックス規格の恩恵を得られるようになることである」としている。

 FAO/WHOのコーデックス信託基金は、2004~2015年に、経済が発展途上および過渡期にある諸国の2,300人以上が国際食品規格策定作業に参加することを支援し、コーデックス委員会への参加の効果を増強するため1,200人以上にコーデックスに関する研修を提供してきた。FAOおよびWHOはCTF1の成功を生かすため、後継の基金となるCTF2を2016年1月に立ち上げた。

 CTF2では、コーデックスへの参加者の幅を広げることから、コーデックスに参加する各国の能力を強固かつ堅実で持続可能なものにすることに焦点を移す。

 CTF2に関する詳しい情報はプロジェクト計画書(英語版、下記参照)から入手可能である。
http://www.who.int/foodsafety/areas_work/food-standard/CTF2ProjectDocument.pdf?ua=1

【欧州食品安全機関】エキノコックス陽性検体を検出せず

欧州食品安全機関(EFSA: European Food Safety Authority)が2015年に提出したエキノコックス(Echinococcus multilocularis)サーベイランス報告書の評価は、イヌへのエキノコックス感染の予防に関する欧州連合(EU)規則No 1152/2011に則して2014年にフィンランド、アイルランド、マルタ、英国およびノルウェーで実施され、2015年に結果が報告されたエキノコックスサーベイランスでの検体採取法、収集データの種類、検出法および結果について、それらの分析と批判的評価を記載したものである。

 このサーベイランスは、これらの国の全国でのエキノコックス検出を目的としている。しかし、エキノコックスに特化したこの2014年のサーベイランスプログラムにおいて、これらの国では陽性検体が全く検出されなかった。

 上記EU加盟4カ国で2014年に行われたサーベイランスの報告書について、エキノコックスサーベイランス報告書の評価に必要な関連要素を考慮し、サーベイランスシステムに関する記述が完全であるかどうかの評価が行われた。個々の検体についての報告データは、欧州食品安全機関(EFSA)のデータ収集フレームワークを介して各国から提出された生データにより評価された。法的要件の遵守状況の確認には記述統計学的手法が用いられた。代表的検体の無作為抽出が行われたと仮定し、また適用された検査の感度を考慮すると、EU加盟3カ国(フィンランド、アイルランド、英国)およびノルウェーは、EU規則の要件を満たし、有病率が最大で1%のエキノコックスを95%信頼水準で検出できるサーベイランスを実施したと言える。マルタで実施されたサーベイランスの全体的な地域感度(Area Sensitivity)は、要件の水準(0.95)に達していなかった。

(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.03(2016.02.03)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2016/foodinfo201603m.pdf

今号の目次

【世界保健機関(WHO)】
1. 第2次コーデックス信託基金(Codex Trust Fund- 2)が発足

【米国食品医薬品局(US FDA)】
1. Dole Fresh Vegetables社がサラダ製品の自主的な撤去を発表

【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. Dole社の加工施設(オハイオ州Springfield)で製造された包装済みサラダ製品に関連して複数州にわたり発生しているリステリア症アウトブレイク(2016年1月22日付初発情報、1月28日付更新情報)
2. 輸入キュウリに関連して複数州にわたり発生しているサルモネラ(Salmonella Poona)感染アウトブレイク(2016年1月26日付更新情報)
3. Karoun Dairies社が販売したソフトチーズに関連して複数州にわたり発生したリステリア症アウトブレイク(最終更新)

【カナダ公衆衛生局(PHAC)】
1. 公衆衛生通知―リステリアアウトブレイク: Dole社の加工施設(米国オハイオ州Springfield)で製造された包装済みサラダ製品を喫食しないよう消費者に注意喚起(2016年1月20日付初発情報、1月23、27日、2月2日付更新情報)

【カナダ食品検査庁(CFIA)】
1. 食品回収警報:リステリア(Listeria monocytogenes)汚染の可能性によりDoleブランドの一部の包装済みサラダ製品(カットサラダ、サラダミックス、サラダセット、葉物野菜)およびPC Organicsブランドの一部の葉物野菜を回収

【欧州委員会健康・消費者保護総局(EC DG-SANCO)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and Feed)

【欧州食品安全機関(EFSA)】
1. EU規則No 1152/2011に則して2015年に提出されたエキノコックス(Echinococcus multilocularis)サーベイランス報告書の評価

【フィンランド食品安全局(Evira)】
1. フィンランド産の豚肉でもメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が検出されることがある