国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(化学物質)No.22(2015.10.28)を発表した。
注目記事
【WHO】IARCの赤肉と加工肉の評価はハザード評価である
WHOのがん機関であるIARCが赤肉と加工肉(※)の摂取の発がん性を評価した。
蓄積した科学文献を詳細に検討した結果、IARCが招集した10カ国22人の専門家は、ヒトでの発がん性に関する限定的根拠と発がん性を支持する強いメカニズム的根拠に基づき、赤肉(red meat)を食べることはおそらくヒト発がん性がある(グループ2A)に分類した。関連は主に直腸結腸がんで観察されるが、膵臓がんと前立腺がんでも関連が見られる。
加工肉(processed meat)は、加工肉が直腸結腸がんを誘発するというヒトでの十分な根拠に基づき、ヒト発がん性がある(グループ1)に分類した。
なお、IARCの5分類はがんを誘発するかどうかの根拠の強さを特定しているものであり(ハザード評価)、暴露によるがんの起こる可能性を評価したもの(リスク評価)ではない。すなわち、この分類はがんを誘発する根拠の強さであり、暴露に関するリスクのレベルを特定してはいない。同じグルーブに分類されても暴露量やその物質の影響の強さによりリスクは大きく異なる場合がある。
IARCモノグラフプログラムはハザード評価であってリスク評価ではないことを繰り返し強調している。
専門家は加工肉を毎日50g食べる毎に直腸結腸がんのリスクが18%増加すると結論した。
「個人にとっては、加工肉を食べることによる直腸結腸がん発症リスクは小さいままであるが、このリスクは食べる量が増えると増大する」とIARCモノグラフ計画部長のKurt Straif博士は言う。「加工肉を食べている人々の数が多いことを考えると、世界のがん発症率に与える影響は公衆衛生上重要である」
IARC長官のChristopher Wild博士は「これらの知見は肉の摂取量を制限するようにという現行の公衆衛生上の助言をさらに支持する」という。「同時に赤肉は栄養がある。従ってこれらの結果は、政府や国際規制機関が赤肉や加工肉を食べることのリスクとベネフィットのバランスをとり、可能な限り最良の食事助言を提供するためにリスク評価を行うことを可能にする」と述べている。
※赤肉と加工肉
- 赤肉(red meat)
- 牛、シカ、豚、羊、馬、ヤギを含むほ乳類の筋肉/食肉のこと(魚や鶏肉は対象外)。
- 加工肉(processed meat)
- 塩漬け、発酵、燻製等によって香り付けや保存性を高めるようにした肉のこと。大部分の加工肉は豚肉か牛肉であるが、他の赤肉や鶏肉、臓物、血液のような肉以外の部分を含む場合もある。加工肉の例には、ホットドッグ(フランクフルト)、ハム、ソーセージ、コーンビーフ、切り干し肉/ビーフジャーキー、缶詰肉、肉を主原料とした調整品やソースがある。
【参考】
- 赤肉と加工肉の摂取の発がん性に関するIARCモノグラフQ&A
Read the IARC Monographs Q&A on the carcinogenicity of the consumption of red meat and processed meat. - http://www.iarc.fr/en/media-centre/iarcnews/pdf/Monographs-Q&A_Vol114.pdf
- 赤肉と加工肉の摂取の発がん性
Carcinogenicity of consumption of red and processed meat
Lancet Oncology
Published Online: 26 October 2015 - http://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045(15)00444-1/abstract
- IARCモノグラフは赤肉と加工肉の摂取を評価する
IARC Monographs evaluate consumption of red meat and processed meat
26 October 2015 - http://www.iarc.fr/en/media-centre/pr/2015/pdfs/pr240_E.pdf
- IARCモノグラフ第114巻:赤肉と加工肉評価についてのビデオコメント
(赤肉と加工肉の摂取の発がん性についてのIARC評価への、モノグラフ計画部長のKurt Straif博士のコメント)
Video commentary on the Volume 114 evaluations
26/10/2015 - http://www.iarc.fr/en/media-centre/iarcnews/2015/mono-volume114_straif_audiovideo.php
- IARCモノグラフQ&A
Read the IARC Monographs Q&A - http://www.iarc.fr/en/media-centre/iarcnews/pdf/Monographs-Q&A.pdf
- 食品安全情報blog(畝山智香子)にある解説
- http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20151027#p3
- http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20151028#p4
【WHO】低線量イオン化放射線とがん死亡リスク
WHOは、医学誌「BMJ」に掲載された「低線量イオン化放射線は固形がんによる死亡リスクを増加させる」と主張する論文を紹介するプレスリリースを発表した。
これによると、この研究の著者の一人であるIARCの研究者Isabelle Thierry-Chef博士は、「この知見は原子力産業の労働者を保護するためだけではなく、医療従事者や一般人にとっても重要である。なぜならば労働者の暴露された線量がCTスキャンを繰り返し受けることによる患者の暴露量などと同程度だからである。そのような医療用の画像解析方法のリスクとメリットについて厳密にバランスをとることの重要性を強調する」と述べている。
この研究の労働者の平均年齢は58才で、多くの疾患の有病率が増える年齢である。このコホートをさらにフォローアップすることは重要である。
(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)
食品安全情報へのリンク
- 食品安全情報
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
- 食品安全情報(化学物質)No.22(2015.10.28)
- http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2015/foodinfo201522c.pdf
今号の目次
【WHO】
1. 国際がん研究機関(IARC):モノグラフ 第114巻 赤肉と加工肉について、低線量イオン化放射線は固形がんによる死亡リスクを増加させる
2. 新しい報告が気候汚染物質由来健康リスクを減らすための4つの方法を同定
【EC】
1. Andriukaitisコミッショナーがミラノ万博で食品廃棄にスポットライトをあてる
2. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)
【EFSA】
1. EFSAの会議がミラノで始まる:食品安全の将来を形作る
2. 閉経後の女性のための食品サプリメントのイソフラボン:有害だという証拠はない
3. 健康強調表示関連
4. 鉄の食事摂取基準に関する科学的意見
5. 銅の食事摂取基準に関する科学的意見
【FSA】
1. 英国複数年次国家管理計画2014年年次報告書発表
2. FSAのトップページでニセアルコールに注意
【PHE】
1. 砂糖摂取量を減らすための対策の新しいエビデンスレビュー
【NHS】
1. Behind the headlines:ルバーブの色素が「がん消滅に役立つ」という主張、議論の多い「砂糖税」報告書がついに発表された
【BfR】
1. 大多数の消費者はドイツの食品が安全だと信じている
2. 2013年全国残留物管理計画及び輸入管理計画の結果、動物由来食品の安全性は高水準だと確認
【FDA】
1. 消費者向け情報:一部の輸入ダイエタリーサプリメントや処方ではない医薬品はあなたに害を与えるかもしれない
2. 公示
【USDA】
1. Good Food ConceptsはHACCP計画を完全履行しないで作られた、不正商標表示の牛肉、豚肉、鳥肉製品をリコール
【FSANZ】
1. 2014-2015年次報告書
【MPI】
1. 二つ目のインスタントココナツミルクパウダーに食品安全警告
【香港政府ニュース】
1. カニは安全性検査に合格
2. 飲料水に関係した鉛の血液検査
【MFDS】
1. 日本産輸入食品の放射能検査の結果
2. 食品添加物は、食品添加物公典名称をそのまま表示
3. 乳牛を肉牛に虚偽表示して販売した無許可畜産物加工業者の摘発
4. 私たちの子供の健康おやつ、子供嗜好食品品質認証マークをお探しですか!
5. 食品医薬品庁、「食品に使用できる原料」を中心に食品原料管理システムの切り替え
6. 桔梗入れた偽人参・紅参製品? もう安心してください!
7. 子供が好む食品など栄養成分表示の準拠点検
【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から
・(Eurekalert)グリホサートとアセタミプリドはミツバチには比較的毒性が低いことを研究が発見
・(Eurekalert)研究が低レベル放射線に関連するがんリスクのより正確な推定を提供する
・(Eurekalert)期待にも関わらず、ビタミンDとカルシウムは直腸結腸がんリスクを減らさない
・(Eurekalert)研究者が世界中の数百万人に蔓延している「ビンロウジ」依存の重要な手がかりを発見
・(Eurekalert)健康食品販売店は18才未満には薦められないパフォーマンスサプリメントを10代に薦めている
・(ProMED-mail)カルバミン酸中毒、ペット 米国: (FL)
・(ProMED-mail)アフラトキシン、穀物 マラウイ
・(オレゴン州司法長官)オレゴンは米国で認められていない成分の入った栄養サプリメントを販売したことでGNCを訴える