国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(微生物)No.07(2015.04.01)を発表した。
注目記事
【EFSA】エボラはフードチェーンで伝播するか
欧州食品安全機関(EFSA: European Food Safety Authority)は、ヒトのザイール株エボラウイルス(ZEBOV)感染アウトブレイクがこれまでに発生したことがあるアフリカ諸国から輸入された生の食品の喫食によって欧州連合(EU)域内でヒトがエボラウイルスに感染するリスクについて、科学的ならびに技術的な助言を行うよう欧州委員会(EC)から要請された。
これまでに報告されたZEBOV感染アウトブレイクで、患者に関連した食品として野生動物の肉(bushmeat)以外の食品が特定されたことはないという結論に至った。これらのいずれも実際に起きたという記録はない。
また、リスクの発生には以下のような一連の事象を要し、多くのハードルが含まれると結論付けられた。
- 輸出される生の食品が原産地でZEBOVに汚染される
- EU諸国に到着した輸入食品がその中に増殖能のあるウイルスを含んでいる
- 汚染された食品の取扱いと調理(どちらも喫食直前に台所や厨房で消費者または従業員が行う)および喫食を介してヒトがウイルスに曝露する
- 曝露したヒトがウイルスに感染する
ただし、データや知見が不足していることによる不確実性が非常に高く、これらの輸入食品の喫食によるZEBOVの感染リスクを定量的に評価することや、そもそも食品由来の伝播が起こり得るかどうかを明らかにすることは不可能である。
【ACMSF】フードチェーンにおけるウイルス
イギリスの食品微生物学的安全性諮問委員会(ACMSF:Advisory Committee on the Microbiological Safety of Food, UK)は、フードチェーンにおけるウイルスについて広範な調査報告書を発表した。この報告書には、食品由来感染症の最も重要な原因ウイルスであるノロウイルス、A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルスについての調査結果が収載されている。
報告書でACMSFは、英国政府当局向けに多くの提言を行っている。これには、さらに調査が必要な分野があること、消費者向けに明確なアドバイスが必要であること(貝類や豚肉製品の加熱方法、葉物野菜や皮が軟らかい果物の洗浄に関する情報などについて)などが含まれている。政府当局はこれらの提言を詳細に検討し、適宜対応する予定。
食品中のウイルスの検出能力の大幅な改善と疾患実被害の最新の推定により、食品由来疾患の原因としてウイルスは非常に重要で、かつ予防可能であることが明らかである。
(注目記事のまとめ:FoodWatchJapan編集部)
食品安全情報へのリンク
食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(微生物)No.07(2015.04.01)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2015/foodinfo201507m.pdf
今号の目次
【米国疾病予防管理センター(US CDC)】
1. Blue Bell Creameries社のアイスクリーム製品の喫食に関連して発生しているリステリア症アウトブレイク(2015年3月24日付更新情報)
2. キュウリに関連して発生したサルモネラ(Salmonella Newport)感染アウトブレイク(米国、2014年)
【欧州食品安全機関(EFSA)】
1. フードチェーンを介したエボラウイルス(EBOV)伝播のリスクに関する最新報告書-パート2
2. スタニング法の評価基準の説明会
3. 非動物性食品:何がリスクか?
4. 欧州食品安全機関(EFSA)の生物学的ハザード(BIOHAZ)パネルのためにリスク順位付け用のツールボックスを開発
【欧州委員会健康・消費者保護総局(EC DG-SANCO)】
1. 食品および飼料に関する早期警告システム(RASFF:Rapid Alert System for Food and Feed)
【英国食品基準庁(UK FSA)】
1. 食品衛生ランク付け方式の評価報告書
【食品微生物学的安全性諮問委員会(ACMSF)】
1. ACMSFがフードチェーンにおけるウイルスについて調査報告書を発表
【オーストラリア保健省(The Department of Health, Australian Government)】
1. 冷凍ベリー製品に関連して発生しているA型肝炎(2015年3月25日付更新情報)
【ProMed mail】
1. コレラ、下痢、赤痢最新情報
食品安全情報(微生物)No.7 / 2015(2015.04.01)