国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(化学物質)No.16(2013.08.07)を発表した。
注目記事
【FAO】途上国では危険性の高い農薬は段階的に廃止すべきである
インドのビハール(Bihar)においてモノクロトホスが混入した学校給食の喫食により23人の生徒が死亡した悲劇は、途上国の市場から有害性の高い農薬を早くなくすべきという重要な注意喚起であるとFAOは述べた。FAO、WHOおよび世界銀行などの国際機関は、適切な保護や保管・廃棄のための知識および施設がない小規模農家が毒性の高い製品を入手できないようにすべきであると合意している。したがって、FAOは途上国政府に対し、毒性の高い農薬について市場からの排除を急ぐべきだと助言している。
※ポイント:モノクロトホスの混入が意図的だったのかどうかは不明ですが、この事件の問題点は、国連食糧農業機関(FAO)が述べているように、毒性が高い農薬が現在も身近に存在していたということでしょう。FAOでは、2002年に「農薬の流通および使用に関する国際行動規範」(International Code of Conduct on the Distribution and Use of Pesticides)を採択しており、国際機関、各国政府および業界が、この行動規範に基づき、ヒトの健康および環境に対し有害な影響がないような農薬の流通・使用を行うよう取り組むべきだとしています。
我が国では、「毒物および劇物取締法」において「劇物」や「毒物」に指定されるような毒性の高い農薬の登録は減少しており、現在は、多くは毒性がより低い「普通物」が使用されています。モノクロトホスは「劇物」に指定されており、登録はすでに失効しています。
【EFSA】EFSAは2年間食品まるごと試験の基本原則ガイドを発行
欧州食品安全機関(EFSA)は、ヒトでの長期摂取によるがん原性/毒性リスクを評価するために行う2年間食品まるごと試験に関する基本原則ガイドを発表した。国際的に認められた標準法(OECD TG 453)に則った齧歯類試験のデザインについての助言および試験上の限界について説明し、そのような試験を実施するかの決定はケースバイケースであること、既存の毒性学的、栄養学的、組成データを評価した後で行うべきことを強調した。また、試験を行う前に明確な特異的目標を設定することが必須であると指摘した。
※ポイント:毒性がある物質が食品に微量に含まれていたとしても、食品として摂取した場合に、その物質が実際にヒトにどの程度の影響を及ぼすのかを明確にするのは非常に難しいことです。ときどき、「食品による影響を見たいのだから食品を実験動物に与えればいいではないか」という指摘を耳にすることもありますが、その試験がいかに難しいかをこのガイドは示しています。
【BfR】食品と接触する物質
ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)は、食品と接触する物質に関するデータベース「食品と接触する物質についてのBfR勧告」を紹介するとともに、Q&Aを公表した。
※ポイント:食品と接触する物質について、ドイツだけでなく、EUでの取扱いの概要を分かりやすく説明しているので参考になります。
(安全情報部第三室)
食品安全情報へのリンク
食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.16(2013.08.07)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2013/foodinfo201316c.pdf
今号の目次
【FAO】
1. 途上国では危険性の高い農薬は段階的に廃止すべきである
2. 人気のあるFAOの本の最初の電子版オンライン発行
【EC】
1. フードチェーン及び動物衛生に関する常任委員会(SCFCAH):フードチェーンの毒性学的安全性に関する議事概要
2. 食品獣医局(FVO)査察報告書:ブルガリア、チュニジア
3. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)
【EFSA】
1. EFSAは2年間食品まるごと試験の基本原則ガイドを発行
2. EFSAの科学委員会によるリスク評価ガイダンス開発優先トピックスについての科学的意見
3. 農薬と水棲生物―EFSAは新しいガイダンスを発表
4. ヨヒンベの安全性評価に関する科学的意見
5. 食品添加物としての提案された使用法によるアドバンテームの安全性に関する科学的意見
6. BPAの主な消費者暴露源は食品で、感熱紙も意味のある暴露源の可能性がある
7. エディトリアル:EFSAは世界での授粉媒介者の減少に対応するためにEU及び国際レベルでの統合的で協調的な対応を要請
8. 健康強調表示関連
9. 香料グループ評価
10. 食品と接触する物質関連
11. 飼料添加物関連
12. 除草剤耐性遺伝子組換え綿MON 88913の食品及び飼料としての使用、輸入、加工のための販売申請についての科学的意見
【FSA】
1. 貝毒によるアウトブレイク
【BfR】
1. 食品と接触する物質
【FSAI】
1. 消費者はウマ肉問題を受けて購入習慣を変える
【FDA】
1. FDAは輸入食品の安全性確保のために対応
2. FDAは消費者に対しHealthy Life Chemistryダイエタリーサプリメントの健康リスクについて警告
3. 食品のグルテンフリー表示
4. 警告文書(2013年7月23日、31日公表分)
【EPA】
1. EPAは公衆衛生を守るために化学物質の評価プロセスを強化する
【USDA】
1. 動植物衛生検査局(APHIS):遺伝子組換えグリホサート耐性小麦の検出について更新
2. 食品安全検査局(FSIS):チリが異物混入により鶏肉をリコール
【FSANZ】
1. 通知
2. 食品基準改正142
【TGA】
1. 安全性助言(2013年7月23日公表分)
【香港政府ニュース】
1. スナックや揚げた食品に警告
2. 4食品が安全性試験に不合格
【MFDS】
1. 説明資料(明日新聞「GMOの安全性検査に穴」報道関連)
2. 高カフェイン飲料における表示基準等の遵守状況の実態調査結果
3. 勃起不全治療薬の成分検出:飲料製品の流通・販売禁止
4. アコニチン(Aconitine)成分が検出された食品を回収
5. 「ご飯にふりかけて食べるパウダー」製造・流通調査結果
6. 海外情報分析による予防的な食品検査強化
7. 外食栄養成分表示、簡単に確認しましょう
【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から
・(ProMED-mail)ハッフ病 米国: 原因同定
・(ProMED-mail)メタノール中毒 キューバ:致死的
・(EurekAlert)ジャガイモ毒への経路
・(EurekAlert)農薬がミツバチの健康を損なうことが示された