残留農薬によるリスク評価法

国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(化学物質)No.15(2013.07.24)を発表した。

注目記事

【EFSA】EFSAは農薬の累積評価グループ法を提示

 欧州食品安全機関(EFSA)は、複数の残留農薬に暴露されることによる累積リスクを評価するための方法として、農薬をグループ分けする新しいアプローチを開発した。これは、特定の臓器やシステムに同様の毒性学的性質を示す農薬を同定し、いわゆる累積評価グループ(CAGs)に分類するという手法である。

※ポイント:EFSAは、化学物質への複合暴露のリスク評価を優先課題の1つとして取り組んでいます。本報告は、この課題に関して、これまでさまざまな機関が発表した報告をEFSAがレビューし、統一された用語、方法論、枠組み、EFSAの今後の課題についてまとめたものです。複合暴露を評価するのは難しいですが、今回EFSAが提案したグループ化という新しいアプローチは1つの参考になります。

【BfR】ハーブティーおよび茶のピロリジジンアルカロイド量は過剰

 ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)は、現在「食品および飼料中のピロリジジンアルカロイド測定」という研究プロジェクトを実施している。最初の調査として各種茶(既製品、ハーブ、医療用)を調べ、遺伝毒性発がん物質であるピロリジジンアルカロイド(PA)0~3.4mg/kgが検出された。BfRは、今回の結果は急性健康障害を起こす濃度ではないが、PA濃度が高い茶やハーブティーを長期にわたり摂取すると健康リスクの可能性があるため、茶やハーブティーのみならず、さまざまな飲料を交互に摂取すべきだとしている。

※ポイント:ピロリジジンアルカロイドは天然の植物に広く分布している化学物質です。天然だから安全、天然だから健康によいと言う人もいますが、それには何ら科学的根拠がなく、逆に天然で何が入っているかわからない分だけリスクが高いと言えます。今回の報告はその代表的な例で、さまざまなハーブティーから遺伝毒性発がん物質であるPAが検出されました。しかしながら、リスクが高くなるのは高濃度で長期に摂取した場合なので、ハーブティーはときどき楽しむ程度に飲んで、リスクを分散させるためにもさまざまな飲料を飲むことにしましょうと助言しています。

【FDA】FDAはリンゴジュースのヒ素の「アクションレベル」を提案

 米国食品医薬品局(FDA)は、リンゴジュースの無機ヒ素のアクションレベルとして、米国環境保護庁(EPA)の飲料水基準と同様の10ppbを提案した。

※ポイント:米国で2011年に、リンゴジュースからヒ素が検出されとの情報をもとに、不安を煽るような報道がされたという経緯があります。ヒ素は環境中に存在するためさまざまな食品で検出されるのは当然なのですが、無機ヒ素に長期的に暴露すると健康リスクがあることから、10ppbという基準を設定し、業界とともに無機ヒ素の摂取量をさらに低減化しましょうという取り組みです。ただし、これまでの検査でリンゴジュースから検出された無機ヒ素濃度はすべて10ppb以下だと発表していることには注意が必要です。

(安全情報部第三室)

※10ppb=0.01ppm=0.000001%(編集部註)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html

食品安全情報(化学物質)No.15(2013.07.24)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2013/foodinfo201315c.pdf

今号の目次

【EC】
1. 農薬に関する常任委員会:4月22~23日の議事概要
2. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. 第45回コーデックス残留農薬部会のEUの立場への科学的支援
2. 食品中アクリルアミド―EFSAは2014年に意見案へのパブリックコメントを募集
3. EFSAは農薬の累積評価グループ法を提示
4. 「化学物質混合物」を評価する-現在のアプローチと将来の優先課題

【FSA】
1. Troop報告書を受けたFSAの行動計画が発表された
2. FSA が発表した最新研究
3. 国民意識追跡調査の結果発表
4. ラトビア産ミートパイからウマDNAが検出された

【ASA】
1. ASA裁定:ホメオパシーについて

【UK Parliament】
1. 英国下院環境食料農林委員会:食品の汚染に関する5番目の報告書

【BfR】
1. ハーブティー及び茶のピロリジジンアルカロイド量は過剰
2. 食品防御および安全性のためのツールについてのBfR/FDAワークショップシリーズ
3. 畜産における抗生物質:初めて収集した摂取量を代表するデータ

【ANSES】
1. ANSESの魚及び水産物についての助言の要約

【FDA】
1. FDA規制は、使用されていないことをもとに乳児用ミルクの包装にビスフェノールA(BPA)の使用をもはや認可しない:決定は安全に基づくものではない
2. FDAはリンゴジュースのヒ素の「アクションレベル」を提案
3. FDAは提案されている生産物安全性規則の働きかけを強化
4. ダイエタリーサプリメントのDMAA
5. Volcano Companyは全世界/全国で、非表示の活性成分を含むダイエタリーサプリメントとして販売されているVolcano Male Enhancement Liquid及びVolcano Male Enhancement Capsulesをリコール
6. Herbal Give Care LLCはEsbelin Siloutte Te及びEsbelin Siloutteビタミンサプリメントを健康リスクの可能性があるため全国でリコール
7. 警告文書(2013年7月9日、16日公表分)

【USDA】
1. USDAはバイオテクノロジー規制申請の結果などを発表

【FSANZ】
1. GM大豆申請に意見募集
2. 新しい植物育種技術に注目
3. 通知

【APVMA】
1. 2010年有害事象経験報告書を発表
2. ダイオキシンと農薬

【TGA】
1. 安全性助言(2013年7月16日公表分)

【MFDS】
1. 説明資料(韓国消費者院「子ども用食品安全保護区域販売食品10製品中7製品にタール色素使用」報道関連)
2. 説明資料(東亜日報「不良味パウダー大混乱、製品名をなぜ明らかにしない」報道関連)
3. 食品医薬品安全庁と水産協同組合中央会の業務協約締結
4. 乳児用の粉ミルク及び離乳食、有害物質管理強化
5. 米国産輸入小麦.小麦粉調査結果、未承認遺伝子組み換え小麦検出されず
6. 米などの穀類のカビ毒汚染レベルは非常に低い

【FSSAI】
1. 食品基準改定

【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から
・(ProMED-mail)下痢性貝毒中毒、2011 米国
・(ProMED-mail)有機リン中毒、学校給食 インド
・(ProMED-mail)ハッフ病 米国
・(EurekAlert)抗酸化物質・・過ぎたるはなお及ばざるがごとし?
・(EurekAlert)コメのヒ素による健康リスク発覚
・(IARC関連)一部の医薬品やハーブ製品の発がん性
・(Toxicology in Vitro:Editorial)科学に基づかない予防措置が、常識や確立された科学やリスク評価原則に反して、欧州委員会のEDC規制への助言を導いている
・(DTU Food/ National Food Institute)我々の食品中の汚染物質を同定する