カビ毒ニバレノールのリスク

国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(化学物質)No.13(2013.06.26)を発表した。

注目記事

【EFSA】食品および飼料にニバレノールが存在することによる動物の健康と公衆衛生リスクについての科学的意見

 ニバレノールは、各種Fusarium属が作るかび毒である。欧州委員会は、欧州食品安全機関(EFSA)に食品および飼料中にニバレノールが存在することによる動物の健康と公衆衛生リスクについて科学的意見を求めた。入手できるデータから、EFSAのCONTAMパネル(フードチェーンにおける汚染物質に関する科学パネル)は、ニバレノールには遺伝毒性はないと結論し、ラット90日混餌投与試験での白血球数の減少をエンドポイントとして5%追加リスクを採用したベンチマーク用量(BMD)解析の結果から耐容一日摂取量(TDI)を1.2μg/kg 体重/日とした。

 欧州18カ国から2001~2011年に集めた食品、飼料、未加工穀物の調査結果によると、ニバレノールの平均濃度が最も高かったのは、オート麦、トウモロコシ、大麦、小麦およびそれらに由来する製品であった。穀物と穀物ベースの食品、とくにパン、ロール(※1)、穀物を製粉した製品、パスタ、ベーカリー製品、朝食シリアルがヒト暴露に大きく寄与していた。

※ポイント:食品安全委員会もニバレノールのリスク評価を2010年に行っていますが、結論で出されたTDI(※2)はEFSAと異なる値になっています。食品安全委員会は、同じデータを用いてLOAEL(※3)0.4mg/kg体重/日に安全係数1000を採用して、ニバレノールのTDIを0.4μg/kg 体重/日としています。これは、デフォルトの安全係数100に、90日試験だからという理由で追加の安全係数10を考慮しているからです。一方EFSAは、ベンチマーク用量解析でBMDL05(※4)0.35mg/kg体重/日を求めて、安全係数300を適用しています。追加の安全係数を3にするか10にするかで違いが出ているというわけです。

※1 bread and rolls:breadは食パン、rollsはそれ以外のパンを指す。
※2 TDI:耐容一日摂取量。1日当たりその量を生涯毎日摂取しても健康に影響がないと考えられる値。
※3 LOAEL:最小毒性量(Lowest Observed Adverse Effect Level)。有害な影響が観察される最少の値。
※4 BMDL05:有害な影響の反応率に所定の変化を生じる用量の下限値がBMD。BMDL05は所定の変化が5%。
(FoodWatchJapan編集部註)

【NHS】Behind the headlines:新しいカラーコード食品栄養表示開始

 食品の包装前面(FOP:Front of pack)に表示される栄養情報の記載内容について、抜本的な見直しが発表された。英国政府、食品メーカーおよび小売業者が、消費者が購入・喫食するものについて健康的な選択をしやすいように、新しい標準化FOP表示に合意した。標準化FOP表示には、総エネルギー、脂肪、飽和脂肪、糖、塩の各含有量、1日栄養摂取量ガイドライン値に占める割合とその高低を信号色で示すカラーコード、並びに高低の文字表示(高・中・低)などが採用されている。

※ポイント:英国の包装前面への食品栄養表示は、これまで一部の食品事業者が自主的に行っていましたが、表示内容に統一性がなく、消費者の間で混乱が生じているとの調査結果が出されていました。これを受けて、昨年から英国では食品栄養表示の統一化への取り組みが開始され、今回の発表に至っています。この新しいFOPの良いところは、製品をひっくり返して裏を見なくても、健康に関連が深い基本栄養素について、1日栄養摂取量ガイドライン値に占める割合が分かり、しかもカラーコード表示もあるので、消費者が一目で理解できるところでしょう。例えば、買い物をする時に同じ栄養素が赤信号の食品ばかりを手にしてしまうと、その栄養素を取り過ぎることが一目瞭然というわけです。

(安全情報部第三室)

食品安全情報へのリンク

食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html

食品安全情報(化学物質)No.13(2013.06.26)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2013/foodinfo201313c.pdf

今号の目次

【WHO】
1. FAO/WHOの第77回合同食品添加物専門家会合(JECFA)審議:要約及び結論

【EC】
1. 遺伝子組換え食品と飼料、環境リスクに関する常設委員会
2. 危険な食品を販売させない:欧州委員会はEUの食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)の年次報告書を発表
3. 食品獣医局(FVO)査察報告書:ハンガリー、オランダ、モルジブ、ガーナ、グアテマラ、アゼルバイジャン、ポルトガル、タイ
4. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)

【EFSA】
1. アルラレッド-――ADIの改定はないが不確実性を減らすために新しい試験を薦める
2. 食品及び飼料にニバレノールが存在することによる動物の健康と公衆衛生リスクについての科学的意見
3. 食品サプリメント成分としての「セチルミリストレイン酸複合体」の安全性に関する声明
4. とさか抽出物についての科学的意見
5. 健康強調表示関連
6. 遺伝子組換え生物関連

【FSA】
1. 牛肉製品のさらなる検査結果発表
2. 新規食品成分に関する意見募集
3. FSA研究プロジェクト:In vitro消化管モデルを用いた食品中アルミニウム及びマンガンの生物学的利用度評価

【HSE】
1. 農薬使用者の健康研究(PUHS:Pesticide Users Health Study)
2. 残留農薬モニタリング:2012第4四半期の結果

【NHS】
1. Behind the headlines:新しいカラーコード食品栄養表示開始

【RIVM】
1. 2011年成人の陰膳調査:デザインと実施

【EVIRA】
1. 業者は野菜及び果実の生産国について表示義務がある

【FDA】
1. 警告文書(2013年6月11日、18日公表分)
2. 公示(2013年6月17日公表分)
3. リコール

【USDA】
1. オレゴンでの遺伝子組換え小麦の検出についての声明

【NIH】
1. ニュースレター

【TGA】
1. GNY痩身錠剤 MSV、ESV及びGRLと表示

【香港政府ニュース】
1. 台湾食品は安全性検査に合格
2. 経口用製品に警告

【MFDS】
1. 説明資料(KBS「殺虫剤の有害物質で虫を捕まえようとして人を捕まえる?」報道関連)
2. 政府共同で不法屠畜根絶対策を発表
3
3. デパートのフードコートでも注文前にカロリーを確認しましょう
4. 食医薬品安全処、高カフェイン飲料の管理方法模索のためのコミュニケーションの場を用意――第2回消費者フォーラム開催――

【AVA】
1. マレイン酸を原因とする台湾産の澱粉ベースの製品のリコール更新

【HSA】
1. HSAは人々に対し痛みや多数の医学的状態用と宣伝する2つの違法製品に警告

【FSSAI】
1. 中国からの乳製品の輸入禁止

【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から
・(ProMED-mail)麻痺性貝毒中毒 米国(AK)
・(ProMED-mail)シガテラ魚中毒 中国