国立医薬品食品衛生研究所は、食品安全情報(化学物質)No.04(2013.02.20)を発表した。
注目記事
【欧州各国】牛肉製品へのウマ肉混入について
アイルランドおよび英国で販売された牛肉製品の検査において、一部の製品でウマ肉が混入していることが確認された。ウマ肉の混入量は、大部分の製品は痕跡程度であったが、中には60%を超える製品もあり、意図的混入が疑われている。
定量検査については、混入の判断基準を暫定1%とすることで食品事業者との合意が得られた。現時点では、ウマ肉が混入した原因は明らかになっていないが、英国では問題となった製品の製造工場で食品基準庁(FSA)および警察による強制調査が行われ、不正な混入への関与が疑われるとして数名が逮捕されている。
また、ウマへ使用される可能性があるが食用動物への使用は禁止されている動物用医薬品としてフェニルブタゾンの残留検査も実施されている。
現在は、アイルランドおよび英国だけでなく欧州規模のスキャンダルになりつつある。そのため、EUのフードチェーンおよび動物の健康に関する常任委員会(SCOFCAH)では、原産国に関係なく牛肉製品のDNA検査およびフェニルブタゾン検査を実施することで参加国が合意した。この検査は直ちに開始され、第一次として3月末までの検査結果が4月15日までに欧州委員会へ報告される予定である。
欧州以外の国では、香港が、ルクセンブルグの事業者が製造し英国から輸入されたビーフラザニアをリコールしている。
※ポイント:前々号と前号の食品安全情報でも紹介した記事ですが、その後、欧州規模の問題となり、騒ぎはますます大きくなっています。牛肉にウマ肉が混入したことは問題ですし、大スキャンダルになっているので食品安全情報の記事として取り上げていますが、健康リスクの問題ではありません。
今回の一連の記事を見ていて興味深いのは、各国が事件に対してどのように対処し、どのようなことを発表しているかです。たとえば、ウマ肉の混入した製品および関連業者の情報だけではなく、どこの施設でどのような検査を実施しているか、対処のためにどのような会合が行われて、合意されたことは何か、誤った報道内容についての訂正などが公的機関から連日発表されており、何か事件が起こった時の対応として参考になります。
【CFIA】穀物製品中の大豆の偶発的存在
カナダ食品検査庁(CFIA)およびヘルスカナダは、穀物ベース製品の製造業者および輸入業者へ向けて、偶発的存在による低レベルの大豆についてアレルギーの予防的表示(「大豆を含むかもしれない」など)は必要ないと助言した。健康リスク評価の結果、大豆の偶発的存在により大豆アレルギー患者にアレルギー反応を引き起こすことはないと結論した。
※ポイント:アレルギー表示は、今回のように偶発的に存在している場合や同じ製造ラインを使用している場合などは、予防措置として表示されていることがあります。ただし、予防だからといって厳しくし過ぎれば食べられる食品の選択肢を非常に少なくしてしまう可能性があります。アレルギーの感受性は個々で異なるため判断は非常に難しいですが、今回のようにリスク評価をした上で助言が出されるということが必要なのでしょう。
(安全情報部第三室)
食品安全情報へのリンク
食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.04(2013.02.20)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2013/foodinfo201304c.pdf
今号の目次
【EC】
1. フードチェーン及び動物衛生常任委員会(SCFCAH):1月31日の議事概要
2. 委員会規則(EU)No 107/2013:缶詰ペットフードのメラミンの最大許容量改正
3. ウェブサイト更新
4. FVO査察報告書
5. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)
【EFSA】
1. 遺伝子組換え生物関連
2. 健康強調表示関連
3. 食品と接触する物質関連
【DH】
1. 包装前面への栄養表示:意見募集への共同対応
【BfR】
1. BfRは食品包装用の勧告リストからアントラキノンを削除
2. ナノ材料の効果的規制方法としてのREACH規制
3. BfRシンポジウム「微量金属を例にしたリスク評価における生物学的利用度の役割」のプレゼンテーション概要
【RIVM】
1. 飲料水中の個々の物質の複合影響リスク評価:オランダの飲料水測定1996~2008年
2. 食品のナトリウム及び飽和脂肪含量:2012年のオランダの食品組成変化
【FDA】
1. 栄養成分表示:米国人が心臓に健康的な選択をするのを助ける
2. 米警察機構はフロリダの企業が販売した医薬品を押収
3. 警告文書(2013年2月5日、13日公表分)
【EPA】
1. EPAは米国で使用されている化学物質の包括的情報を公開/化学物質データ報告情報はEPAやその他に化学物質のより迅速な評価に役立ちより安全な化合物の使用を促進
2. EPAは農薬の関与する第三者によるヒト試験の参加者保護を強化
【NIH】
1. 消費者向けニュースレター
【CFIA】
1. 穀物製品中の大豆の偶発的存在
【香港政府ニュース】
1. 中毒症例調査
2. 漢方薬リコール
3. 漢方薬で男性が罹患
4. 粉ミルク輸出に意見募集開始
【KFDA】
1. 食品医薬品安全庁、殺虫剤10成分347製品の安全性措置施行、化粧品政策課
2. 2012年度の健康機能食品の機能性原料認定の状況分析結果を発表
3. 輸入酒類(諸葛亮)の流通・販売禁止及び回収措置
4. 発毛剤成分“ミノキシジル(Minoxidil)”が検出された健康機能食品の回収措置
【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から
・(Natureニュース)韓国の有害物質の流出に警告
【欧州各国】
・牛肉製品におけるウマ肉混入に関する記事のまとめ(公表機関別に記載)