国立医薬品食品衛生研究所は、2012年6月4日、食品安全情報(化学物質) No.11(2012.05.30)を発表した。WHOが福島第一原子力発電所事故直後1年間のヒト放射線暴露について評価報告書を発表した。欧州食品安全機関(EFSA)は、フランスが主張する遺伝子組換えトウモロコシMON810の販売禁止に科学的根拠はないと結論を出した。オーストラリア・ニュージーランド食品基準局(FSANZ)は、化学物質によるリスクの捉え方の基本をわかりやすく解説するコラムを発表した。
注目記事
【FSA】【WHO】2011年東日本大震災後の核事故による予備的線量推定
世界保健機関(WHO)は、福島第一原子力発電所事故直後1年間のヒト放射線暴露について評価報告書を発表した。
※ポイント:WHOが、福島第一原子力発電所事故に由来する放射性物質への暴露について各国の専門家による独立委員会を設置し、土壌や大気からの暴露、空気中からの吸入暴露、食品や飲料水による経口暴露を総合的に評価した最初の報告書です。
影響の可能性をあらわす実効線量が地域別に示されていますが、示された値を見るときに注意しなければならないのは、保守的な仮定をしているので過大評価になっているということ(たとえば、食品による経口暴露量の推定で食品中の放射性物質濃度としてすべてのモニタリング結果を用い出荷制限等は考慮しないなど)、今回は限られたデータと期間で実施したため予備的な評価という位置づけであるということです。
報告書の最後には、日本では暴露量を減らすためにさまざまな予防措置がとられているので、今後さらに詳しく調べれば暴露量は今回の報告よりも少ない値になるだろうと記載されています。また英国食品基準庁(FSA)も事故報告書の中で、日本政府の食品の安全性確保のための対応により日本に滞在する英国人は十分守られたとしています。
【EFSA】遺伝子組換えトウモロコシMON810についてのフランスの緊急対策に関する科学的意見
欧州食品安全機関(EFSA)のGMOパネル(遺伝子組換え生物に関する科学パネル)は、フランスがセーフガード条項による緊急対策としてMON810の販売を禁止する科学的根拠はないとの結論を出した。
※ポイント:欧州の遺伝子組換え食品に関する規則では、ヒトの健康、動物の健康及び環境へ深刻なリスクを及ぼす可能性がある場合には輸入停止などの緊急措置を発動することが認められています。
以前からフランス政府は遺伝子組換えトウモロコシMON810について緊急措置の対象になり禁止すべきと主張していましたが、2008年のGMOパネルの意見と同様に、今回もフランスの主張は科学的根拠に基づいて完全否定されたということになります。
この件については、欧州裁判所でもフランスによるMON810禁止は不適切だと判断されています。
【FSANZ】主任科学者のデスクから
オーストラリア・ニュージーランド食品基準局(FSANZ)の主任科学者Dr Paul Brentが、化学物質の安全性に関するコラムを発表した。
※ポイント:このコラムはぜひ読んでいただきたいものです。コラムの内容は、化学物質の安全性に携わる研究者が常日頃感じていることを代弁していて、化学物質によるリスクの捉え方の基本を分かりやすく説明しています。
(安全情報部第三室)
食品安全情報へのリンク
食品安全情報
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.11(2012.05.30)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2012/foodinfo201211c.pdf
今号の目次
【WHO】
1. 2011年東日本大震災後の核事故による予備的線量推定
【EC】
1. 食品獣医局(FVO)視察報告書
2. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)
【EFSA】
1. 食品添加物としてのスチグマステロールに富む植物ステロールの安全性についての科学的意見
2. ミツバチへの農薬のリスク評価開発の背景についての科学的意見
3. ウシラクトフェリンについての科学的意見
4. 健康強調表示に関する科学的意見
5. 遺伝子組換えトウモロコシMON810についてのフランスの緊急対策に関する科学的意見
6. 飼料添加物に関する科学的意見
7. データ募集
【FSA】
1. 貝のモニタリングのための動物試験の段階的廃止
2. 報告書は昨年の食品事故の件数が増えたことを示す
【MHRA】
1. スポーツとボディビルサプリメント
【CRD】
1. 農薬工業原料の同等性評価:不純物の変異原性ハザード
【RIVM】
1. 企業から提出されたデータを用いての食品添加物の暴露評価:パイロット研究
【ANSES】
1. 乳及び乳製品の成長因子:ANSESはがん発症リスクへの影響についての意見を発表
【EVIRA】
1. 222の一般機能健康強調表示が食品宣伝に認められる
【FDA】
1. 消費者向け情報
2. 警告文書(2012年5月15日、22日公表分)
3. 公示
4. リコール
【EPA】
1. EPAはIRIS開発プロセスについて全米科学アカデミーがレビューすることを発表
【CDC】
1. 発表:子どもの鉛中毒予防に関する助言委員会の報告書への反応:低濃度の鉛暴露は子どもに有害影響を与える:一次予防をあらためて喚起
【CFIA】
1. 2012年予算の追加情報:CFIAは肥料の安全性に注目する
【FSANZ】
1. 主任科学者のデスクから
2. 食品基準通知
【NZFSA】
1. 農薬使用規範についての朗報
2. パンの葉酸強化
【香港政府ニュース】
1. 肉検体は安全性検査で不合格
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2. クロム含量の高い漢方薬
3. 汚染サーディンに警告
4. 食品表示ガイドライン発表
【KFDA】
1. 日本の原発関連への食品医薬品安全庁の対応と管理動向
2. 食品添加物の酸化防止剤の摂取は非常に安全なレベル!
3. コーヒーミックス袋には科学が込められていた!
【その他】
・食品安全関係情報(食品安全委員会)から
・(ProMED-mail)原因不明の病気、ウォンバット オーストラリア
・(EurekAlert)ダイエタリーサプリメントはがんリスクを高くする