国立医薬品食品衛生研究所が月2回発表している「食品安全情報」(化学物質)は、食品の安全性に関する国際機関や各国公的機関等の最新情報を提供している。本欄では、実際にその情報収集・執筆を担当している研究官に、FoodWatchJapan読者へのおすすめの記事を紹介してもらう。No.11(2011.06.01)の注目キーワードは、フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)、内分泌攪乱物質の規制上の定義、オート麦への小麦混入、マウスを使用しない化学分析法、などだ。
注目記事
【CFIA, 香港政府ニュース, AVA】台湾産の食品及び飲料のDEHP汚染について
台湾で一部の食品や飲料、医薬品からフタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)が検出されたため、カナダや香港、シンガポールで警告が出されている。原因は当該製品に使用された食品添加物(乳化剤)「起雲劑」にDEHPが混入していたため。健康リスクは低いものの、使用された製品の範囲が広いため、しばらくは回収騒動が続きそう。
【BfR】ヒト健康への脅威の可能性に関する内分泌攪乱物質の規制上の定義
「内分泌攪乱物質」の規制上の定義について、ドイツと英国による共同制作方針書が作成された。この定義によると、実験動物で影響が観察されたとしても、ヒトにあてはまらなければ規制対象の内分泌攪乱物質ではないと判断される。
【ヘルスカナダ, CFIA】小麦アレルギーのカナダ人にとって重要な情報
オート麦や大麦などの製品でも、栽培や収穫の方法によっては小麦が混入する場合がある。そのため、造業者や輸入業者に対しては小麦が極微量含まれる可能性を消費者へ伝えることをすすめ、消費者へは購入する際に注意するよう呼びかけている。
これはオート麦や大麦の製品に小麦が必ず混入しているという意味ではないが、アレルギーは極微量でも重篤な反応を生じるリスクがあるということと、日本で流通する大麦及びオート麦の大部分は輸入品で混入の可能性は否定できないので、小麦アレルギーの方は可能性があるということは承知しておいた方がいいと思われる。
【CFIA】カナダ政府は貝毒に対するより迅速な新規試験法を採用
貝毒の試験法をマウスバイオアッセイからマウスを使用しない他の方法にしようと長年議論されているものの、類似化合物の分離や標準品の確保が難しいことが壁となって実際にはうまくいっていない。そのため、カナダ政府が麻痺性貝毒の検査法としてマウスバイオアッセイの代わりに新規の化学分析法を開発・採用したのは画期的。
食品安全情報へのリンク
「食品安全情報」
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/index.html
食品安全情報(化学物質)No.11(2011.06.01)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2011/foodinfo201111c.pdf
今号の目次
【WHO】
1. 第64回世界保健総会が多数の決議を採択して閉会
【FAO】
1. バイオエネルギーの良い点と悪い点を計る新しいツール
【EC】
1. ヨーロッパ対がん週間:がん予防のために共同誓約
2. 第4回ナノテクノロジーの安全性に関する会合
3. 食品用香料 燻製香料
4. 食品及び飼料に関する緊急警告システム(RASFF)
【EFSA】
1. 食品中アルミニウムの生物学的利用度に関する新しい研究の評価についてのEFSAの声明
2. EFSAはGM植物の食品と飼料評価のための更新ガイドラインを発表
3. 「低脂肪および低トランス脂肪、不飽和脂肪とオメガ3脂肪が多いファットスプレッド」とLDLコレステロール濃度低下に関する健康強調表示の立証についての科学的意見
4. EFSAはアスパルテームの完全リスク評価を行う
5. 飼料添加物に関する科学的意見等
6. 香料グループ評価
【FSA】
1. 「グルテンフリー」ガイド発行
2. 食品事故報告書発表
【DEFRA】
1. 原産地表示の調査発表
【CRD】
1. 食品中残留農薬に関する専門委員会(PRiF):企業への残留農薬情報提供要請
2. 英国残留農薬委員会の残留農薬モニタリング:最新データ
【BfR】
1. 独英共同政策方針書:ヒト健康への脅威の可能性に関する内分泌攪乱物質の規制上の定義
【RIVM】
1. 砂地の最上部地下水の硝酸濃度と農業政策の影響:1992~2009年の減少の可視化
2. 地方公衆衛生サービス向け環境健康ガイドライン:室内環境の水銀と健康
【EVIRA】
1. EU Fish II -バルト海の重要な汚染物質
【FDA】
1. FDAは早産児にSimplyThickを与えないよう警告
2. Globe All Wellness社は表示されていない医薬品成分を含むダイエタリーサプリメントを自主回収
3. FDAは執行や法令遵守活動をオンラインで情報開示
4. 限定的健康強調表示:100%乳清タンパク質部分加水分解乳児用ミルクとアトピー性皮膚炎リスク削減
【CDC】
1. 10の偉大なる公衆衛生上の成果 米国2001~2010年
【USDA】
1. USDA/AIAの2010/2011冬のミツバチ消失調査報告書
【FTC】
1. FTCは「無料お試し」で消費者を欺くオンライン販売業者を告発
【US GAO】
1. 水産食品の安全性:FDAは輸入水産食品の監視を強化し限られたリソースをより効果的に活用する必要がある
【NYC DOHMH】
1. 医師向け健康助言 第7号:ある種のアーユルベーダ医薬品に関連する鉛中毒
【CA OEHHA】
1. サンフランシスコ湾の魚介類の摂取のためのガイド
【Health Canada】
1. 小麦アレルギーのカナダ人にとって重要な情報
2. OECD MRL計算プログラム
【CFIA】
1. 穀物ベースの製品の製造業者と輸入業者向けアレルゲン表示情報
2. カナダ政府は貝毒に対するより迅速な新規試験法を採用
3. 台湾食品及び飲料のDEHP混入について
【FSANZ】
1. 血中Cry1Abタンパク質とGM食品を関連づける研究についてのFSANZの対応
2. 食品基準通知
【APVMA】
1. どのような科学的研究が規制対応を促すのか?
【香港政府ニュース】
1. 肉4検体が安全性検査に不合格
2. ちまきは安全性検査に合格
3. 台湾食品及び飲料のDEHP混入について
4. 魚から微量のI-131が検出された
【KFDA】
1. 日本原子力発電所関連食品医薬品安全庁対応及び管理動向
2. 海外インターネット販売の性機能改善製品に注意喚起
3. 流通食品のベンゾピレンは安全な水準 汚染物質課
4. 農産物の重金属について安全管理を強化する
【AVA】
1. AVAは台湾産「サンライトブランド」の飲料の輸入を一時停止
【HSA】
1. HSAは「メタボリックアドバンテージ」に規制対象物質の甲状腺と甲状腺ホルモンを発見
【FSSAI】
1. Btナスの一部放出は「汚染し認可される」:専門家
【その他】
・(米国小児科学会)臨床報告 子どもや青少年にスポーツドリンクやエネルギードリンクを与えることは適切か?