新年も早や3日。暮れから正月にかけて飲みまくったぞ、という諸兄も多いと思うが、肝臓のご機嫌はいかがだろうか。
漢方によれば肝機能低下は腰に悪い
もしかして、腰痛で困っている人はいないだろうか。アルコールによる肝臓への“虐待”(と言い切ってしまう)と腰痛は深い関係にあるのだ。
漢方の考え方では、肝機能が低下すると“筋を傷(やぶ)る”ことがあるという。どういうことかというと、肝機能低下で筋すなわち筋肉がこわばって硬くなり、萎縮して引きつりやすくなる。
以前、ある資料を読んでいたら、「ギックリ腰や腰痛は肝機能低下と関係が深い」とあった。過度の飲酒で肝機能は弱まって、筋肉が硬くなったところに、重いものを持つなどしてギックリ腰を起こす。筋肉が適度にゆるんでくれないために、背骨に過度の圧力をかける結果なのだという。
加えて、肝臓の“敵”はアルコールばかりではない。「ストレス」も肝臓の機能を弱める強大な敵となっているのだ。
豊富なグリコーゲンとタウリン
衰えた肝機能を回復する“薬食い”として、日本で昔から親しまれてきたのが「カキ」(牡蠣)であることをご存じの向きも多いだろう。今回はその“薬食いぶり”について科学的見地から紹介する。
カキは日本に住む者にとって、非常につきあいの長い貝だ。縄文時代の遺跡である貝塚は縄文人が食べた貝殻の集積地だが、そこに残る貝殻のうちで最も多く発見されるのがカキの殻だという。
カキは昔から、体力のない人の“補養食”あるいは“強精強壮食”として用いられ、また、衰えた肝臓を元気にする食品として知られてきた。通説として知られている肝臓を元気にする食品には、牛乳や大豆、魚介類がある。それに共通する成分が良質のタンパク質だ。なかでも効果的とされるのがカキだが、その理由は、タンパク質だけでない含有成分の多種多様さだという。
カキがたくさん含む成分の1つがグリコーゲンだ。動物性の糖質であるこの成分は“肝臓の活力原”とも言われているが、カキが含む量は、他の魚介類のそれをはるかに超える。
もう1つがタウリン。これは、魚介類の中でもヌルヌルしていることが特徴であるタコなどのヌルヌル成分であるが、カキはこの成分もとくに多く含有している。タウリンの肝機能改善に役立つ作用としては、肝臓の代謝を促進する働きをはじめ、胆汁分泌促進作用、解毒作用に優れているなどが挙げられる。
また、カキは亜鉛も多く含む。亜鉛は肝臓酵素を活性化する働きに優れている。さらに、詳細は略するが、その他多種多様の微量栄養素も、二日酔いや悪酔いの原因であるアセトアルデヒド(アルコールが体内で変化し発生する有害物質)を解毒する作用を持っているという。
多角的に肝臓を守る食品。それがカキという食品のようである。
多種のビタミンとアミノ酸も
カキの“薬食い”的役割は肝機能だけではない。先のタウリンで言えば、よく強壮ドリンクのCMで「タウリン配合!」などと叫んでいるが、それを訴えたい根拠はある。タウリンは疲労回復に役立つからだ。その他、血圧降下、コレステロール除去、自律神経調整など。インスリンの分泌を促進して血糖値を下げる働きがあるため、糖尿病気味の人によいという話もある。
また、微量ミネラル(人の体内に微量しか存在しないため、食品で摂取するしかないミネラル)をバランスよく含有しているのがカキの大きな特徴である。とくに先の亜鉛をはじめ、銅、セレンなどを豊富に含んでいて、これらはいずれも抗酸化作用を有している。
なかでも亜鉛は先ほど述べた肝臓酵素を活性化する働きのほかに、精力減退、糖尿病、動脈硬化、関節リウマチ、白血病、がん、味覚障害などさまざまな病気への改善効果が期待できる。
さらに、カキの栄養成分は、ビタミン類ではA、B1、B2、B6、B12、C、D、E、H、コリン、イノシトール、葉酸などほとんどの種類を含み、アミノ酸に関しても必須アミノ酸をはじめとした20種類を含有している。
カキこそ、年末年始の“暴飲暴食”で疲弊した体を癒すにももってこいの食品と言えそうだ。