2018年食の10大ニュース[2]

外食分野での2018年の10大ニュースをピックアップ。

  • 入管法改正
  • ノーショウ問題/直前キャンセル問題
  • M&A加速
  • キャッシュレス、定休日、24時間営業廃止……働き方改革広がる
  • 「ポータグルメ」元年
  • 「おひとり様」消費が成長、市場の約2割を占める
  • サバブーム
  • 背徳メニュー
  • 進化系炭酸飲料ブーム
  • タピオカミルクティー
次点
東京都の受動喫煙防止条例案 可決
TPP発効、欧州関税引き下げ(チーズ、ワイン、生ハムなど)

(順不同)

入管法改正

 入管法(出入国管理法)の改正が決定。2019年4月に施行される。新設の在留資格の認定基準など運用に課題が残るものの、外食産業にとっては朗報と言える。

 人手不足だから、日本人が採用できないから、という理由で「外国人」に頼るのではなく、生活習慣や文化の異なる従業員との協働の在り方、シニア、主婦など休眠労働力の活用なども含めたダイバーシティや、労働市場のグローバル化の契機とすべきである。

ノーショウ問題/直前キャンセル問題

 経済産業省が主宰する有識者勉強会より答申が発表され、飲食店側が消費者に対してキャンセル料の構成を説明する責任を負った上で、コース予約の場合は全額、席のみ予約の場合は平均客単価の約5割程度を請求することができる、とされた。

 しかしながら重要なのは、ペナルティの強化や罰則規定の整備でもなく、無断キャンセルや直前の大型キャンセルなどを発生させない、消費者啓蒙と飲食店側の予防対策の進化だ。

M&A加速

 2017年より外食業界で続いてきたM&Aが加速、「やまやグループ」による「つぼ八」買収を初め大型案件が話題となった。

 単に買収という見方ではなく、トリドールホールディングス×晩杯屋、ダイヤモンドダイニング×エスエルディーなど異業態の統合による多角化戦略推進や、やまやグループ×つぼ八では事業規模拡大、バルニバービ×老舗旅館といった異業種統合型など、外食企業のダイナミックな戦略推進として興味深い。

キャッシュレス、定休日、24時間営業廃止……働き方改革広がる

 2018年に話題となった飲食店のキャッシレス化やセルフオーダー端末導入、セントラルキッチン、外注を活用した職人レスでの調理など、生産性向上のための取り組みが拡大。

 一方で、24時間営業の廃止、定休日を設けるなど、従業員の働き方を改革する動きは中小の飲食店にも広がりを見せている。

「ポータグルメ」元年

 デリバリー、テイクアウト、キッチンカーが増えている。“外食・中食ボーダレス”な市場における競争の中、グローサラントやイートインなども含め、クオリティの高い食事が、場所を問わずに楽しめるようになってきた。また「時間をかけず」に「おいしいもの」を食べる……という時間効率の高さ(タイムパフォーマンス)は、今のとくに若い世代の志向にも合致している。

※「ポータグルメ」とは、2018年12月に「ホットペッパーグルメ外食総研」が、2019年の飲食トレンドとしてリリースした概念。

「おひとり様」消費が成長、市場の約2割を占める

「おひとり様」消費が増え続け、とくに首都圏では市場の20%(※)を超えた。業態では立ち食いのラーメン・うどん・そばが前年比119.6%(※)をはじめ、「おひとり様」を多く受容すると思われる軽食主体の業態が堅調だ。ほか、居酒屋でカウンター席の「おひとり様」増加や、“一人焼肉店”などが人気の広がりを見せている。

※「ホットペッパーグルメ外食総研」の「外食市場調査2017年度」より。

サバブーム

 SABAR、九州熱中屋など、新鮮なサバ、クオリティ高い鯖料理を訴求する飲食店が支持を集めているほか、缶詰「サバ缶」を使った料理レシピ公開も増えている。「サバ缶」は、2014年に長年不動の一位であった「ツナ缶」を抜いて以来続伸し、月によっては生産数で前年比の2倍を記録するなど好調だ。

 背景にはEPAやDHAなどサバが持つ特徴的な栄養素が、健康志向の中で再注目されていることにもあるようだ。

背徳メニュー

 健康志向、栄養学的な節制メニュー人気の反動で、「ときにはおいしいものを思いっきり食べたい」という欲求に応えた商品が増えた。白子やあん肝などをふんだんに使った「痛風鍋」などは背徳鍋とも言われ、居酒屋などで人気。

 また、2000キロカロリー超またはニンニクをたっぷり入れたカップ焼きそば、しびれる刺激の「花椒」を使ったメニューなど、エンターテインメント的なメニューも人気だ。

進化系炭酸飲料ブーム

 ハイボール、生レモンサワーのブームが進化。強炭酸、高アルコールなど、より刺激性の強いものや、生レモンを皮ごと使ったもの、梨やスイカなどを山盛り使ったサワーなど、素材感を売りにしたものが登場。ほか、薫り高い乙類焼酎を炭酸で割って楽しむ飲み方や、リモンチェロやオレンジチェロなどリキュールを使ったサワーなど、個性的なドリンクメニューが増えている。

タピオカミルクティー

 原宿、新宿などで、専門店が増えたほか、ファストフードをはじめ大手外食チェーンでもタピオカを使用したメニューが増えた。ここ数年来の「台湾ブーム」の影響も大きいと考えられる。また、タピオカドリンクに1時間並んでその行列までも動画でとってアップする……というエンタメ性(ストーリージェニック)な要素もウケた。

《次点》

 下記は、業界への影響が大きく話題となったが、法律や条例の改正などの導入・発効がまだ先であるため、実際の市場影響がまだ限定的であることから、次点とさせていただいた。

  • 東京都の受動喫煙防止条例案 可決
  • TPP発効、欧州関税引き下げ(チーズ、ワイン、生ハムなど)

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About 竹田クニ 2 Articles
「ホットペッパーグルメ外食総研」エヴァンジェリスト たけだ・くに 1963年生まれ。株式会社リクルートで東京、静岡、長野などで営業責任者、を経験したのち、旅行業界のネット予約移行期に営業責任者として業界の進化に伴走するほか、地域活性事業のプロデューサーとして事業受託、講演活動など行う。ホットペッパーグルメリサーチセンターの立上げとともに飲食情報事業に異動し初代センター長に就任。現在はエヴァンジェリストとして、外食産業に関わる調査企画、執筆、講演などのほか、外食産業の生産性向上をテーマに各種業界団体との連携協働、農水省など中央官庁への政策提言活動も行っている。