2014年食の10大ニュース[2]

  1. 食品表示基準案まとまる
  2. 新たな機能性食品表示制度の導入決定
  3. 消費税8%開始と10%延期決定
  4. TPP交渉足踏み
  5. 食品値上げ常態化
  6. エネルギー価格暴落
  7. 牛丼チェーンの模索
  8. ダイエー・ブランド消滅
  9. 「セブン-イレブン」の存在感
  10. NHK朝ドラ「マッサン」好調

新しい時代の胎動

 新しい時代の命が芽生え、胎動を感じるまでに至っている。誕生までにはしばらく時間がかかりそうだが、遠い将来ではない。

 アベノミクスが始動し、放たれた「財政出動」と「金融緩和」という第一の矢・第二の矢は初期の効果を発揮している。問題は「成長戦略」という第三の矢である。一部でよい。本効果を早い時期に実感したい。日本の未来を信じることができれば、国民は消費を行い、若人は結婚を考え、企業は設備投資を開始する。

 到来する新しい時代の特徴を挙げよう。人口減、世帯人員減・単独世帯増、高齢化、健康志向、格差拡大、低成長、ネット活用・情報化、グローバル化、原料価格高止り等である。暗くなる要素が多いのは、確かだ。しかし、好ましい循環が始まれば、社会の雰囲気は変わる。劇的に改善が進んでもおかしくない。

1. 食品表示基準案まとまる

 難航していた食品表示基準案がまとまった。アレルギー、製造所固有記号、栄養成分表示等の改正が盛込まれた。従来の問題点が相当程度解消される。適正な表示実現に向けて、食品メーカーは準備を進めたい。一方、表示を有効に活用するために、消費者も学ぶ必要がある。

2. 新たな機能性食品表示制度の導入決定

 本制度の是非は議論があるだろう。それでも、導入が決まった以上、新市場を築いて社会に有用な制度にしたい。予想していた以上にしっかりした骨組みになる模様だ。2015年初めにはガイドラインが公開されると聞く。特許未取得の特定保健用食品であれば、ジェネリック・トクホが出てくるかもしれない。

3. 消費税8%開始と10%延期決定

 消費税8%がスタートした。日本の未来を信じる国民・企業が多ければ、消費は回復したに違いない。かなりの国民は財布の紐を閉めてしまった。企業と社員の関係も、似た部分がある。将来性のある企業は、給料を上げられるはずである。法人減税が検討されている。社員の給料に還元していただきたい。

4. TPP交渉足踏み

 日本の農林水産物は高品質でブランド力があるが、高コストだ。コスト低下に努めるとともに、高価格でも売れる市場を開拓したい。東南アジアや中東の富裕層を意識したマーケティングが必要だ。日本の食材はもちろん、環境と調和して生産される木材の価値向上は可能である。ホヤ等の東北産魚介類もしかりで、韓国への輸出も再開させたい。

5. 食品値上げ常態化

 今年は食品値上げが常態化した感がある。インフレ政策や円安の影響は確かにある。ただし、ベースにあるのは発展途上国の生活向上と畜産物需要増による穀類価格上昇と考える。コーヒーやカカオにも波及している。気象異常等の要因が重なれば、さらなる高騰と供給不足は免れない。

6. エネルギー価格暴落

 あらゆる活動に影響する重要な要素がエネルギー価格である。暴落したことは、日本にとって極めて幸運な状況である。円安のデメリットを緩和するだけではない。新しい時代の誕生を安産に導く大きな要因となる。この状況に甘んずることなく、第三の矢の改革を着実に進めなくてはならない。

7. 牛丼チェーンの模索

 牛丼の安売り競争は、早晩行き詰ると考えていた。新参の「東京チカラめし」は早々に縮小、業界トップの「すき家」は労働条件でつまずいた。「松屋」はプレミアム牛丼で値上げし、「吉野家」も追随。外食や居酒屋の多くが苦境と聞く。外食の雄「マクドナルド」の苦戦は中国食材問題によるものだけではなかろう。ただし、「吉呑み」という工夫も芽生えている。

8. ダイエー・ブランド消滅

 かつて一世を風靡した大手スーパー・ダイエーが上場廃止になり、ブランドが消滅した。全国の地場スーパーを傘下に収め、メーカーから価格決定権を奪い、価格破壊で大量販売を行った。高度成長時代の本ビジネスモデルは、新しい低成長の時代にはそぐわない。スーパーも新たな戦略を模索中である。

9. 「セブン-イレブン」の存在感

 新しい時代に対応すべく脱皮を重ねてきた象徴が、コンビニの「セブン-イレブン」であろう。高齢者や単身世帯向け商品の充実、プレミアム商品開発等のマーケティングは見事である。挽きたて豆による美味なコーヒー提供には脱帽。この勢いで、ドーナツ市場まで進出するという。競争者であるネット販売の力も取り込もうとしている。

10. NHK朝ドラ「マッサン」好調

 ウイスキー造りに人生をかけた人物とその妻を描いた作品である。実在メーカーのドラマ化は、NHKとして画期的であり英断を称えたい。神経を尖らすメーカーもあるが、業界全体がドラマの恩恵を受けている。工場創業の地「山崎」の名を冠した製品が今年の「Jim Murray’s Whisky Bible 2015」で世界最高に輝いた。不思議な縁を感じる。

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About 横山勉 99 Articles
横山技術士事務所 所長 よこやま・つとむ 元ヒゲタ醤油品質保証室長。2010年、横山技術士事務所(https://yokoyama-food-enngineer.jimdosite.com/)を開設し、独立。食品技術士センター会員・元副会長(http://jafpec.com/)。休刊中の日経BP社「FoodScience」に食品技術士Yとして執筆。ブログ「食品技術士Yちょいワク『食ノート』」を執筆中(https://ameblo.jp/yk206)。