- ビスフェノールA(BPA)の議論が進む
- 香港と台湾で地溝油が問題になる
- カフェインの過剰摂取について
- 精米中の無機ヒ素について国際基準が決定
- 人工甘味料と糖尿病リスクとの関連が話題になる
- EUやFDAが食品表示の改善に向かう
- EFSAが食用酵素のEU認可リスト作成のための安全性評価を進める
- ミツバチコロニー減少に関する調査が進む
- 2013年オレゴン州での遺伝子組換え小麦の検出に関する調査終了
- EFSAのアクリルアミドへの取り組みは続く
海外の食品安全関連情報を紹介する「食品安全情報(化学物質)」の記事の中からピックアップしました。順不同です(国立医薬品食品衛生研究所安全情報部第三室 畝山智香子・登田美桜)。
ビスフェノールA(BPA)の議論が進む
ビスフェノールA(BPA)は、ポリカーボネート(PC)プラスチック、エポキシ樹脂、他の高分子化合物の製品や、ある種の紙製品(たとえば感熱紙)に使用される化合物で、食品用のさまざまな器具や容器に使われてきました。しかし、女性ホルモンのエストロゲンに似ている可能性が指摘されたことから、容器等から食品への低用量の移行による健康影響について長く議論されてきました。
その議論の一つの区切りとして、2014年には欧州食品安全機関(EFSA)での評価や意見募集が終了し、2015年1月に科学的意見の最終版が公表される予定です。米国でも米国食品医薬品局(FDA)を中心にBPAの評価が行われ、現在食品中に存在している濃度では安全だとの見解を示しています。他に、オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)でも評価が行われています。
香港と台湾で地溝油が問題になる
排水溝やゴミ箱から集めた廃油の「地溝油」(gutter oil)を使ってラード等の食用油が製造・使用されたという問題です。他に飼料用のラードが食用に使用されたとの報告もありました。食用油そのものだけでなく、それが使用された菓子などの製品が流通していたため騒ぎはしばらく続きました。
カフェインの過剰摂取について
これまで、エナジードリンクによるカフェインの過剰摂取やアルコールとカフェインの混合品が問題になっていました。2014年には、米国で粉末純カフェインの摂取により健康な若者が死亡して問題になり、FDAが粉末純カフェイン摂取の危険性について助言を発表しました。
精米中の無機ヒ素について国際基準が決定
コーデックス委員会において、精米中の無機ヒ素の最大基準値(0.2 mg/kg)が設定されました。玄米中の最大基準値とコメのヒ素汚染の防止および低減に関する実施規範については現在も議論の最中です。
またヒ素の関連では、米国環境保健研究所(NIEHS)がヒトの飲料水中と同程度の低濃度ヒ素に暴露されたマウスで悪性肺腫瘍が観察されたとの試験結果を学術雑誌Arch Toxicolに報告して話題となりました。ヒ素による肺がんはヒトでも観察されているために根拠としてはかなり意味がある試験結果なので、米国ではヒ素の基準(とくに飲料水)が厳しくなる可能性があります。
人工甘味料と糖尿病リスクとの関連が話題になる
イスラエルWeizmann科学研究所のEran Elinavらのチームが、Natureオンライン版に発表した研究がメディアでも大きな話題になりました。その研究は、人工甘味料(主にサッカリン)が腸内細菌を変えることを示唆したもので、この変化が2型糖尿病の早期警告兆候である耐糖能異常につながる可能性があると主張したものです。
しかし、他の科学者からは、この研究が主にマウス試験の結果で結論していることや、実験で変化が見られたのはサッカリンなのに結論を人工甘味料とひとくくりにして主張するのは間違えだといった指摘が多くでました。
EUやFDAが食品表示の改善に向かう
EUでは、新しい食品表示規制が2014年12月13日から発効しました。新しい規制では、とくにアレルゲン表示が強化され、フォントの強調やレストランなどで提供される未包装食品でのアレルゲン情報提供の義務化などが盛り込まれています。一方、米国では、栄養成分表の更新、グルテンフリー表示規則の発効、チェーンレストランのメニューや自動販売機でのカロリー・栄養表示規則の最終決定などがありました。
EFSAが食用酵素のEU認可リスト作成のための安全性評価を進める
EUでは、規則(EC)No 1331/2008のもと食品添加物、食用酵素及び香料に関する認可手続きを統一することが定められ、食用酵素を食品に使用するためには、新規及び既存に関係なく認可申請とEFSAによる評価を経た上で認可リストに掲載されることが必要になりました。2014年5月に、その最初の評価結果が公表されました。今後EFSAでは、何百もの食用酵素について評価作業が行われる予定です。
ミツバチコロニー減少に関する調査が進む
ミツバチのコロニー減少に何が影響しているのか、欧州全体(EPILOBEE計画)、カナダ、米国、オーストラリアなど各国で大規模な調査やレビューが活発に行われています。それらは現在も継続中ですが、今のところ、ネオニコチノイドの影響について統一的な結論は得られておらず、他のさまざまな要因(病気、等)による影響についても調査が進められています。
2013年オレゴン州での遺伝子組換え小麦の検出に関する調査終了
昨年の10大ニュースの一つにも挙げた、オレゴン州の農場で遺伝子組換え(GE)グリホサート耐性小麦が自生していることが発見されたという問題についての米国農務省動物衛生検査局(USDA APHIS)による調査が終了しました。
調査報告によると、この事例は孤発事例で、自生した原因はわからなかったとのことです。また、2014年7月にモンタナ州でGE小麦(オレゴン州のものとは別品種)が確認されたことも報告されました。
EFSAのアクリルアミドへの取り組みは続く
EFSAは、食品中のアクリルアミドに関する科学的意見についての意見を募集するとともに、FAQやインフォグラフィックの公表などを行いました。インフォグラフィックはイラスト付きで概要がわかりやすくまとめられていておすすめの資料です。
EFSAは、食品中のアクリルアミドは全ての年齢の消費者にがんを発症するリスクを増加させる可能性があるという以前の見解を再確認しています。これまでは加工食品などの事業者が製造した食品についてデータが収集されてきました。しかし、家庭の調理でもアクリルアミドは生成することから、EFSAは、より正確な暴露量を求めるためにデータ収集の方法を改善して家庭での調理や摂取に関するデータを蓄積することを推奨しています。