【1】ファミリーレストランの復権
【2】虚偽表示が食の信頼を損ねる
【3】マクドナルドの苦境が鮮明に
【4】コンビニエンスストアのコーヒーが市場を蚕食
【5】かっぱ寿司と元気寿司が経営統合
【6】「熟成肉」が大ブームに
【7】クラフトビールの店が急増
【8】居酒屋チェーンの苦境が続く
【9】日本酒の復権、外食で進む
【10】和食の世界文化遺産登録
【番外】餃子の王将トップが殺害される
【1】ファミリーレストランの復権
「ロイヤルホスト」の既存店売上げが実に16年ぶりに前年をクリア。「デニーズ」も既存店が好調と、いわゆる“旧勢力”のファミリーレストラン(以下FR)の業績回復傾向が鮮明になった。高価格メニューの好調な売れ行きばかりが取り沙汰されるが、商品とサービスを地道に磨き上げる努力が実ってきたことを評価したい。
【2】虚偽表示が食の信頼を損ねる
過当競争の影響とか、消費者の行き過ぎたブランド信仰が問題といった指摘があるが、これは「業界の常識は世間の非常識」であったと率直に反省すべき。食材のブランドばかりに頼るのではなく、わが社が追求すべき品質とはどのようなものかを突き詰め、本来あるべき商品開発に立ち帰る契機としたい。
【3】マクドナルドの苦境が鮮明に
女性外国人トップ就任後初の大型政策として打ち出した新しい価格戦略が大不発。既存店売上げ2ケタ減という深刻な事態に陥った。マーケティングを優先して、商品をおいしくするという外食としての真っ当な努力を放棄した結果、コンビニエンスストア(以下CVS)に完全にしてやられる結果になった。
【4】コンビニエンスストアのコーヒーが市場を蚕食
セブンイレブンの「セブンカフェ」に代表されるCVSの淹れたてコーヒーが大ヒット。小売の商品としては異例に粗利益率が高いとあって、フランチャイズオーナーからも高評価を得ている。セルフ型コーヒーショップをはじめ外食業にとって強力なライバルが出現した。
【5】かっぱ寿司と元気寿司が経営統合
回転ずし業界で初の大型再編として話題に。とくに均一価格業態における競争の厳しさが浮き彫りになった。かつて「うちは寿司屋ではなくファストフード」と公言していた「かっぱ寿司」と、創業者がすし職人であった「元気寿司」
。異質の企業文化を持つ両社が、統合で化学反応を起こせるかに注目。
【6】「熟成肉」が大ブームに
ドライエージングで肉(とくに赤身肉)本来の味わいを引き出す手法が広く認知され、熟成肉を売り物にするレストランが急増。FRなどでも導入が進んだ。日本の肉食文化の成熟を示す動きだが、菌の働きを生かすものだけに品質管理体制を万全にして熟成を行なうことが望まれる。
【7】クラフトビールの店が急増
マイクロブルワリーのビール(地ビール)を売り物にした店が急増。新しいビアパブのスタイルとして定着しつつある。ピルスナーやアルトといった定番ものだけでなく、独特のフルーツ香があるものなど味わいは多彩。「とりあえずビール」の時代は終わり、ビールはますます「特別な商品」になるか。
【8】居酒屋チェーンの苦境が続く
外食大手のフォーマットの中で、最も苦境に立たされているのが居酒屋。その状況は2013年も続き、多くのチェーンで既存店売上げが2ケタ近い減少となった。均一価格業態など品質を犠牲にした低価格競争に明け暮れ、商品の差別化を放棄してきた結果。まさに業態の存在意義が問われている。
【9】日本酒の復権、外食で進む
縮小が続く日本酒マーケットだが、外食の現場では商品としての潜在力が見直されてきた。各地の酒蔵で経営者や杜氏の世代交代が進み、生産規模は小さいものの意欲的に酒づくりに取り組む酒蔵が増えている。そうした個性ある日本酒を提供する居酒屋や専門店では、女性など新しい客層をつかんでいる。
【10】和食の世界文化遺産登録
世界的な和食ブームに後押しされた観もあるが、評価のポイントが「日本の食の多様性」というところにあったのは率直に喜びたい。ミシュランに象徴されるグルメ的な視点ではなく、四季折々の食材の使いこなしや各地に伝わる料理の知恵に文化的な価値があると認められたことに意味があると思う。
【番外】餃子の王将トップが殺害される
年の瀬に起こったとんでもない事件。事件の背景がマスコミでいろいろ報じられているが、まずは早期の犯人逮捕、動機を含めた真相解明を望みたい。残念きわまりない事件だが、とりわけ危機管理の甘さが悔やまれる。そもそも、一部上場企業のトップが自分で車を運転して通勤してはいけないだろう。
●これまでの「10大ニュース」
《特別企画》2012年食の10大ニュース[一覧]
《特別企画》2011年食の10大ニュース[一覧]
《特別企画》2010年食の10大ニュース[一覧]