2010年もあとわずか。今年も食にまつわる話題は数多く、それぞれの話題がかかわる領域、影響を与える領域も多岐にわたりました。それらを振り返りながら、来る年に備え、夢も膨らませたいものです。
そこでFoodWatchJapanは、食の科学、技術、流通に造詣の深い識者の方々に「2010年食の10大ニュース」をピックアップしてもらいました。トップバッターは食品技術士の横山勉さんです。
- 宮崎県の口蹄疫
- 猛暑の影響さまざま
- 民主党の迷走(遺伝子組換え作物サイト閉鎖等)
- 健康食品の広告氾濫
- 食品安全情報ネットワーク本格稼働
- 秋の味覚異変
- 食べるラー油ヒット
- 伝統のクジラに注目
- ビール類低迷
- クニマス棲息発見
ニュースのトップは、宮崎県の口蹄疫。関係者の方々は、本当に大変だったと思う。
夏の記録的猛暑はさまざまな影響を及ぼした。米の作柄は平年を下回り、品質も低下。野菜は高騰し、発生時期がずれた毒キノコで食中毒が頻発した。
民主党の迷走は政治に止まらない。BSE全頭検査の国費復活をマニフェストに掲げていた党である。デントコーンとスイートコーンを区別できない人が大臣になると、現場は大変だ。GMO(遺伝子組換え作物)サイトが閉鎖されたことはその象徴である。再開されたサイトには、GMOへの懸念が加わっていた。日本はこんなことをやっている場合なのか。
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)は推進すべきで、日本農業再生のチャンスである。政争の具にしてはいけない。
健康食品やサプリメントの広告が、特に目立った年であった。「シジミ1,000個分」といったアピールに、市民は違和感を持ってほしいものだ。健康食品等とパチンコの広告で一息ついているメディアだと思うが、限度があるだろう。健康に関してタバコが値上げされ、これは正しい判断だった。ただし、メディアは「国際的にまだ安すぎる」と報じてほしかった。
食の正しい理解は、今年も進んだとはいえない。GMOは前述の通り。殺処分された種牛もクローン技術で問題なく復活できるが、社会に受容されるはずもない。それでも、FSIN(食品安全情報ネットワーク)の本格稼働には期待している。科学的に正しくない情報を是正する試みであり、多くの市民に注目いただきたい活動である。
今秋は国産マツタケが豊作といっても口に入る訳はなく、例年通り中国産を味わった。「来遊量は前年を下回る」というサンマ予報が的中。高値だったサンマは、庶民の食卓から遠のいた。
アルコールはビール類が低迷し、ハイボールが躍進した。若者のビールとアルコール離れが進んでいるという。それでも、私としてはスタートはビールに統一したい。皆が異なるドリンクを頼んでは、乾杯まで時間がかかって仕方がない。
辛いものは苦手だが、食べるラー油がヒットした。また、クジラが映画や裁判で話題になった。日本橋「おいでませ山口館」で購入したクジラの竜田揚げを懐かしく賞味する機会があり、継続したい文化と再認識した。年末の天皇誕生日、絶滅とされていたクニマス発見に、陛下が会見で触れられた。美味とのことだが、市民が口にできるには時間がかかるだろう。
2011年は、ホッとするニュースがもっと増えてほしいと願う。
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