日本フードサービス協会が7月31日に発表した「平成30年外食産業市場規模推計」(附属機関=外食産業総合調査研究センター)は、外食産業(料理品小売業を含まない)の市場規模は25兆7,692億円と推計した。前年比ではプラス888億円、0.3%の微増となった。
部門別に見ると、給食主体部門の営業給食(飲食店、宿泊施設など)が前年比0.4%増、料飲主体部門(娯楽、遊興目的の飲食を提供する施設)が同0.5%増となった一方、給食主体部門の集団給食(学校、事業所、病院、保育所の給食)は0.4%減となった。
全体の7割近くを占める営業給食が牽引し、料飲主体部門が補強しながら、しかし集団給食が足を引っ張った形と言える。
発表資料では全体結果の背景として「1人当たり外食支出額はわずかに減少したものの、訪日外国人の増加、法人交際費の増加などにより」と説明しているが、さらに業種・業態を細かく見ていくと、単純ではない動きが見えてくる。
ファストフード系が伸びている
営業給食のうち飲食店の内訳を好調な順に並べると、その他の飲食店(ファストフードが含まれる)2.4%増、そば・うどん店1.3%増、すし店1.2%増、食堂・レストラン(ファミリーレストランが含まれる)0.1%となっている。ファストフード、うどんチェーンの好調を感じさせる数字だ。
また、この調査には客単価/価格レンジの思想がないので扱いにくいが、すし店はファミリーが利用する回転ずしと、接待利用や富裕層利用のあるタチのすし店の好調の両面が現れているように見える。半面で、ファミリーレストランは集客に苦心していることをうかがわせる。
また、機内食等は増減なし、宿泊施設0.1%増。インバウンドが増えるなかでも宿泊施設の飲食が伸びないのは、館内での食事が減っていることが考えられる。
宿泊業界では、ツアーやパックの設定で食事を分離すると集客につながるという報告がいくつかある。また、地方の宿泊業関係者の話では、昨今の外国人旅行者には日本旅行に慣れて、低価格の飲食店やコンビニエンスストアをうまく使って長期滞在する人も増えているという証言もある。
事業所給食のシュリンクと保育の伸び
集団給食の内訳を不調な順に並べると、事業所1.1%減、病院0.3%減、学校増減なし、保育所給食2.0%増となっている。事業所給食をさらに分けると、社員食堂等給食1.6%減、弁当給食0.1%減となっている。
事業所給食はかねてよりコンビニエンスストアや他の外食に浸食されていることが報告されている。また、病院は病院の減少、病床数の減少、入院の減少が背景にあるだろう。一方、厚労省「保育所等関連状況取りまとめ」(2018年9月)によれば、保育所等利用定員は前年比9万7,000人増の280万人、保育所等を利用する児童の数は同6万8,000人増の261万人で、これが反映していると考えられる。
カフェの躍進とアルコール業態の復調
料飲主体部門の伸びは、発表資料にある「法人交際費の増加」が反映したものかと見えるが、断言しにくい。最も増加しているのは喫茶店の1.6%増で、居酒屋・ビヤホール等は0.7%増、料亭、バー・キャバレー・ナイトクラブはともに増減なしとなっているからだ。伸びが目立つのはカフェ市場だ。居酒屋・ビヤホール等は前年と前々年の数字が悪いなか、ある程度の復調が見られるということのようだ。
中食は外食よりも伸びている
また、本調査では料理品小売業を含めた広義の外食産業(いわゆる食の外部化)の市場規模も推計している。今回、料理品小売業(弁当給食を除く)は2.2%増の7兆3,237億円で、広義の外食産業の市場規模は33兆929億円と推計された。
本調査は日本標準産業分類に準拠しているため、この料理品小売業には百貨店や総合スーパーの直営部門、コンビニエンスストア(他に分類されない飲食料品小売業)は含まれない。これらを含めると、さらに中食市場の拡大、狭義の外食を浸食している様子がはっきりするだろう。
また、注目すべき市場で本調査に含まれないものとしては、テーマパークと駅ナカのフード部門がある。今日のフードサービスの全貌をつかむには、新しい統計が必要だと考えられる。
- 平成30年外食産業市場規模推計について
- http://anan-zaidan.or.jp/data/2019-1-1.pdf