4月も後半、ようやく、ようやく温かくなってきた、と思ったら内陸では雪とか。都内も朝晩は寒さがまだ残っていて、風が強い日は冷たささえ感じます。防寒用品は日中いらなくても、念のためまだ鞄に忍ばせて走っています。
ふらりと入ってビックリ眼!
散歩のとき何か食べたくなって……というのは、尊敬する偉大なるグルマンにして小説家の池波正太郎先生の傑作食べ物エッセーのタイトルだが、たまにあてどなく会社の近くを散歩することがある。
そして、以前、行きついたのが、パッと見、無国籍なような、それでも「餃子が売り」というような宣伝をされてる飯田橋の「PAIRON」(パイロン)さん。
あのときにはランチだったけれど、その餃子のおいしさに瞠目し、それ以来、通い続けることとなった。
こちらのお昼はおかずと餃子のセットメニューが700円程度で食べられて、お弁当もやってる。そのリーズナブルさやおいしさも合わせて語りたいけれど、やっぱり、特筆すべきは、夜のメニューなのだ。
壁にびっしりと書かれたメニュー。筆づかいやちょっとしたイラストにもセンスが感じられる。中華がベースなのだが、「広東!」「北京!」という系統立てた料理屋さんより、いい意味でずっとくだけた感じ。
で、こちらの売り物、餃子の種類がすごい。
まず、メインの「白龍(パイロン)餃子」(390円)。それが焼き、蒸し、水の3種類ある。
それから、ニラたっぷりの「青龍(チンロン)餃子」(390円)がこれまた焼き、蒸し、水の3種。
「黒餃子」(390円)は、ニンニク入りで、パンチがきいてる。
「宝餃子」(500円)は、焼き小籠包風味で、アツアツ。
「レッドドラゴン」(390円)は、ピリリとした辛さがステキ。
パリパリの皮の「しそ餃子」(450円)に、小さめでビールのお供に最適の「ひとくち餃子」(390円)、「セロリ餃子」(390円)、皮蛋入りの「ニラ玉餃子」(450円)まであって、ええと……何種類だ?(笑)
これらがぜーんぶおいしいのだから、餃子好きにはたまらない。ひたすら注文し続け、お腹いっぱいになるまで、たらふく食べてしまうことになるのだ。
基本を教わり研究重ねた万能皮
そもそもこのお店は、2年前にオープンした、いわば新店。それが食べ物激戦区ともいうべき、神楽坂―飯田橋界隈で「餃子好きならココ!」という位置を占めることになったのは、理由があった。
そもそもオーナーの山本龍太郎さん(39)が、飯田橋で飲食店をはじめたのが10年前。特別、料理人の修業はしなかった、と言うが、凝り性なためか、そこからお弁当屋さんを経て「PAIRON」を出すまでに、さまざま食べ物を試行していったという。
そして、とある評判の餃子店に、息子さんの友人ということもあって、休日押しかけて弟子に。コツを体得した上で、店長下井陽一郎さん(29)と共に独自の餃子を研究し、今に至る、というのだ。
「PAIRON」の餃子、とくに看板の「白龍餃子」と「青龍餃子」は、皮が命。もっちもちの皮の食感が実にいいのだ。
この皮の食感も、何度も試行錯誤を重ねて、編み出したもの。この皮は万能で、焼き、蒸し、水の3種類の餃子になっても、いずれも素晴らしい食感と後味を感じさせる。そこからの応用で、「レッドドラゴン」「宝餃子」「黒餃子」などが生まれた。
そして、もちもちの皮の反対側として、パリパリの皮が特徴の「しそ餃子」や「ひとくち餃子」も揃えているのである。
そしてそして、なによりうれしいのが、餃子の味に変化をつけるため、本場の小籠包のように、白髪ネギや、針ショウガをトッピングとして置いてある(プラス50円)。これらの薬味を使うと、味に驚くほどの変化があるのだ。
こちらの餃子の味。醤油と酢のつけ汁は基本だが、「白龍餃子」を例にすると、もちっとした食感が実に素敵な皮の中から、ジューシーな肉汁いっぱいのあんが登場し、口の中にあふれてくる。
これを「あちちち」と言いながらほおばると、まぁ、口の中で餃子の楽園が広がる。
パリッ、もちっ、じゅわーという食感の焼き餃子。
アツアツ、しっとり、肉汁じゅわーの蒸し餃子。
つるんつるん、とろんとろん、もちっもち、じゅわーの水餃子。
いずれも甲乙つけがたい味だ。
他の餃子も推して知るべし。かくしてノンストップ餃子大会となるわけである。
つまみも飯も一級品でお値段やさしく
しかし。「PAIRON」は、餃子だけではない。
お通しとして出てくる生キャベツも、かかっているタレが食欲をそそる。
「レバーの甘露煮」(280円)の奥深い味、「セロリの浅漬け」(250円)のしっとり具合と言ったら……実にビールに合うのだ。
言い忘れたが、こちらの品は、いずれもリーズナブルな居酒屋価格。それでいて味は一級品なのがうれしいところ。
「ピータン豆腐」(390円)の味のよさ、「焼豚の中華サラダ」(390円)のほどよさ、「卵の八角煮」(100円/1個)のうっとりする半熟具合、「大根もち」(350円/2枚)のねっとり……。そして忘れちゃいけない、「香腸」(350円)の甘さといったら……実に飲みものに合うのだ。
そしてそして、餃子や極旨おつまみでお腹いっぱいになってきたら……シメが待っている。
「魯肉飯」(ルーローファン/690円・半380円)、そして「玉子ご飯」(300円)。
この2つとも実にヤバい。
「玉子ご飯」は、食べるラー油が振りかけられていて極旨、魯肉飯は、ご存じの八角の風味がたまらないそぼろ風味の肉みそが、ご飯を止まらなくさせる。
お腹いっぱい食べて飲んで、支払いは居酒屋並み。
一人で行って、さくっと餃子で締めるのもよし、大人数で行って、とことんまで堪能するのもよし。このお店に行くとみんなが幸せな顔で出てくる。
「駅から遠いので、味にはこだわらないと。そして、いい意味でもサプライズをお客さんに与え続け、楽しんで、居心地良くいてもらうことが大切ですね」と、店長の陽一郎さん。
まずは、行ってみるべし!
●PAIRON (パイロン)
東京都新宿区新小川町8-32
Tel.03-3260-6571
営業時間:
月~木 11:30~14:30、17:00~23:00
金 11:30~14:30、17:00~23:30
日 12:00~21:00
定休日:土曜