慌ただしさは相変わらず続き、職場に泊まり込み多発状態。それでもなんとか自転車を乗ろうとするのだけれど、そんなときに限って、雪だ、雨だとくる。のんびりもできない、スカッともしない。こんなときには、ひとときでも幸せに浸りたい! と、美味なるお店に吸い込まれる傾向にあるようです。
注目の神楽坂―江戸川橋ゾーン
職場のある新宿区の東の方、とくに神楽坂から江戸川橋方向へ向かう方面に、最近、素敵なお店が出来てきているように思う。先月取り上げた「幸せのはし」さんもこちらの方向。今回取り上げるのは、気鋭のイタリアン「ピアッティ カステリーナ」さんだ。
いろいろな料理漫画がある中で、イタリアンを扱ったものでいうと、やっぱり、せきやてつじ先生の「バンビ~ノ!」が最高峰。実写ドラマ化もされたので、ご覧になった方も多いと思うけれど、イタリアンの舞台裏が、これでもか! という演出力で魅せてくれて、読む者の心を捉えて離さないのである。
今回の「ピアッティ カステリーナ」さんでは、取引先の方を接待させていただいたのだが、実にいい夜になったのである。
フォアグラのフラン付いて1050円!?
もともと、西麻布にある「リストランテ カステリーナ」さんの支店として、昨年9月にオープンしたこちらのお店。特色を出すために、ある前代未聞の試みを始めた。
それが、スペシャリテのフォアグラのフランを、1050円のランチに出すこと!
イタリアンで1050円のランチと言うと、それなりの安いお値段なのだが、こちらの「ピアッティ カステリーナ」さんは、そこに一切の手抜きをせず、フォアグラのフランにさらに3品を盛り合わせた前菜、パスタ、自家製フォカッチャで1050円という破格のお値段!
イタリアン好きの中では、相当な話題を呼び、開店当初からすぐに毎日ランチタイムは行列が耐えないという状態だ。
オーナーシェフの大原易裕さん(35)は「完全な採算割れだけど、一過性のものではなく、ずっとランチタイムは続けていきます」とおっしゃる。
その言葉は、一度食べてもらえれば、きっとディナーにコースにとピートしてくれるはず、という自信からくるものだったけれど、まさにその通り。超破格のランチを食べて、このお店の味のファンになり、ディナー帯に訪れることになる人間が後を絶たなくなったのだ。かくいう自分もその一人!
目くるめく8品で5250円と
当夜のコースは、「コルソディ8ピアッティ」という8品のコース料理で5250円のコース。
これでも相当お値打ちのコースであることは、食べ進めていくと、驚きとともにわかるようになる。
ズワイガニとエンドウマメの一口
イベリコ豚舌のゼリー寄せ ラビゴットソースと自家製ピクルス
仏産ホワイトアスパラとヤリイカ、タンポポのソテー レモンチャツネ添え
スペシャリテ フォアグラのフラン
自家製オレキエッテ シャラン産鴨肉の白ワイン煮込み
シャロン種仔牛ロースのロースト 春キャベツのピューレと空豆添え
トマトソースのスパゲティ
ダージリンのアイス
取引先は仔牛のローストではなくイサキのポワレ ハマグリ、アサリのサフラン香るソースと。そしてチーズの盛り合わせも召し上がった。パンは自家製フォカッチャなど3種。
1品目からやられました
まず、ズワイガニとエンドウマメの一口にやられる。
繊細なカニのうま味と、豆のペーストの取り合わせが、舌の上で楽しく踊るのだ。いきなり期待が高まる。
そして、イベリコ豚の舌のゼリー寄せ。
もともと、テリーヌ好きとしてはたまらない一品だろう。ほどよい弾力とうま味のある豚の舌をぎゅっとゼリーで固めて出してくれる。そこに添えられるオリーブオイルと塩が、またバランスがとても素敵で。ああ、思い出しても舌がとろけそうだ。
そして、ホワイトアスパラとヤリイカとタンポポの取り合わせの妙。
シャキシャキのホワイトアスパラをうまーくヤリイカの弾力が捉えて、ニンニクがほどよく効いたソースで絡めて、うっとりしたところに、またタンポポの茎のシャキシャキがくる。素敵な音楽を聴くようなバランスがあった。
ずっと食べていたい
そこから、スペシャリテのフォアグラのフランへ。
ぜひ一度、食べてみてほしい、これを。軟らかさと、フワリとした口当たりと、濃厚な後味を。パンを食べずにはいられない。できたら、チーズ風味の自家製フォカッチャで、もう、隅々までぬぐうように、素敵なフランを堪能してほしいのだ。昼でも夜でも、味に一切の手抜きなし! お店の姿勢に頭が下がる。
そしてそして、個人的にその日のナンバーワンだったのが、オレキエッテ。このもちもちして平べったい、小さなお餅のようなオレキエッテ。食感もさることながら、鴨のしっかりした脂とうま味を全部捉えて離さない。口の中で、絶妙なこれまた音楽が流れる。室内楽のような味の競演。ずっと食べていたかった。
仔牛ロースのローストは、中までしっかり火が通っていながら、やわらかく、瑞々しく、ジューシーで、それでいて生臭くない。春キャベツのピューレがまた結構なアクセントだった。
ここまでで大満足。
満腹を爽やかに〆
パスタまでいくまえにちょっとお腹がくちくなった。最近の流行なのか、「最後のパスタは、30g、40g、80g、120gといかようにも調整できますがいかがしましょう?」とお店の方からよく聞かれるようになった。こちらのピアッティ・カステリーナさんも例外ではなかったので、40gをいただくことにした。
これは、若いトマトをまるごと食べるような若いお味がした。
で、どんなにおなかがくちくなっても、デザートは食べる。意地汚いことこの上ないが、やっぱり、デザートは食べたいもの。
紅茶、ダージリンのアイスも濃厚というより、爽やかな味がして、これはこれで大満足の〆となった。
このお味であれば、こちらの夜のコース5250円が、どれだけ超お値打ちか。
すでに昼だけではなく、夜も予約が埋まり続けている人気店になったけれど、なんとか予約の海をかいくぐって、ぜひ一度、行ってみてほしい名店だ。
●「ピアッティ カステリーナ」
東京都新宿区天神町68-3 橋本ビル 1F
Tel.03-6265-0876
営業時間:
11:30~15:00(L.O.13:30)
17:30~23:00(L.O.21:30)
定休日:日曜日
http://www.castellina.jp