寒い日が続きますね。東京でも雪が降るようになりました。そんなときはさすがに自転車通勤をやめるのですが、郷里の北海道の友人の中には、MTB(マウンテンバイク)にスパイクタイヤを装着して、冬でも自転車通勤を続けている豪の者がいます。一種のトレイルランに近いかもしれませんが、心底尊敬します。上には上がいるものです。
バランスとチャレンジ
今回は浅草の中国料理の名門龍圓さんを訪問。こちらは、進化する東京の中国料理店の中でも群を抜くほどヌーベルシノワ的な要素が多いお店になっています。オーナーシェフの楢原一之さん(47)のこだわりぬいた食材と料理で楽しませてくれる。
こちらのオススメは、一人前6000円からというコース料理。シェフの創意と工夫にあふれたきらめくコースで、絶対に損はないと保証できるメニューだ。
もともと、中国料理と言えば、上海や北京、広東といった地方それぞれの特色が出る料理の系統があったが、今の東京は、どこの地方でもない、独特の料理が進化している。
岐阜の名店開化亭の流れを汲む都立大学の「チャイニーズレストランわさ」、蒲田で独特の進化を遂げる「チャイニーズレストラン聖兆」、スタイリッシュを突き進む恵比寿の「MASA’S KITCHEN 47」、そして、この浅草「龍圓」などが評判を呼んでいる。
中でも個人的に、バランスといい、味といい、チャレンジ精神といい、いちばんしっくりくるのがこちらの「龍圓」さんなのだ。
トロトロキャベツのパリパリ
毎回、コースを頼むたびに、どんな料理が来るかワクワクする。 今回のメニューは、
ピータン豆腐
カキの燻製
スミイカのサラダ
三浦のキャベツの春巻き
秋トリュフのカニ玉
豆苗入りの餃子
信玄鶏と三浦の野菜の炒め物
牛ほほ肉の紹興酒煮込み
チャーハン(スープあり)
あまおうとイチゴのアイスが乗った杏仁豆腐
というラインナップ。結果として大満足の一夜になった。
まず、ピータン豆腐。定番のおぼろ豆腐の下にピータン。ふわふわのおぼろ豆腐が、ふんわりと舌に広がり、ピータンがそのやわらかさを受けとめる。この先付ともいうべき一品で食欲が増す。
次のカキの燻製。燻製の香りと味が牡蠣にしっかりからみつき、独特の風合いになっている。そして牡蠣の中身は、ねっとりと上質なバターのような食感。深い味に思わず笑みがこぼれる。
スミイカのサラダ。さっと湯がいたスミイカに見えるが、決してそれだけではなくきちんと仕事がしてある。ぷりぷりした食感も楽しい逸品。ちなみに、こちらのサラダ、レタスが新鮮でシャキシャキしてる。
三浦のキャベツの春巻き。今回はこれが素晴らしかった。糖度12という、もはや果物並のキャベツ。これが実にうまく調理されていて、トロトロでありながら、ちゃんと歯触りはあって。うっとりとしたキャベツの甘味を、パリパリの春雨の皮が包んで……。まさに絶品。うっとりしてしまった。
さらにトロトロ
秋トリュフのカニ玉。カニ玉にトリュフを合わせるのが、楢原シェフのすごさ。もうここまでくると、中国料理の枠をはみ出してしまうように思える。このトリュフが濃厚なカニ玉と実に合うのだ。トロトロの半熟のカニ玉をふわりと包むトリュフの濃厚な香り。これはクセになる。
豆苗入りの餃子。この豆苗を使った餃子が、またジューシーで。小龍包か! と思うくらいのジュースが口の中に溢れる。出てきたら、ぜひ一口でバクリ! といってもらいたい。皮をちょっと破ると口の中にジューシーな具が溢れ、外側のカリッと焼き目がついた皮と素敵なハーモニーになって、たまらない気持ちに。
信玄鶏と三浦の野菜の柚子胡椒炒め。紫大根や独特なニンジンなど、シェフが気に入った野菜をふんだんに使った炒め物。とても野菜の味が濃い。鶏肉も、単にモモや胸だけでなく、砂肝や皮も使って、お肉の食感のコントラストがまた楽しくて。柚子胡椒がきいていて、ご飯がほしくなる逸品。
牛ほほ肉の紹興酒煮込み。下に敷いたマッシュポテトといい、もう中国料理というより、フレンチと考えた方がいい一皿。頬肉がトロトロでスプーンでもふわり、と入っていくような軟らかさ。濃厚な味がどっしりとおなかにくる。
サラサラをこらえて
チャーハン(スープあり)。具だくさんのチャーハン。これを半分ぐらい食べたあと、金華ハムのスープを入れて食べるのだが、これがまさに絶品。ただでさえ、パラッパラで口当たり軽くそれでいて具だくさんだから飽きがこないチャーハンなのに、スープを入れたら、さらさらとお口の中に入ってきてマコトにケッコー。
お茶漬けのようにかきこみたい気持ちを必死に抑えてじっくりいただく。印象としては、大分の鶏飯に近いかもしれない。実に実に素敵なお味だった。
そして、デザートが、あまおうとイチゴアイスが乗った杏仁豆腐。このあまおうが甘くておいしくて……おなか一杯になった。
こちらのお店は、ウーロン茶をお願いすると、ポットにお湯がなくなるとすぐに足してくれて、何杯でも飲める。お茶の味や香りの変化も楽しめる。こういう基本も忘れていないよいお店なのだ。
こんな優良店でも、場所柄なのか、他のお店に比べると比較的予約は取りやすいかな、という印象がある。コースは予約時のみ有効なので、トライしてみてほしい。
おなかいっぱいになって外に出ると、浅草は、もうすっかり寒くなってきて。つくばエキスプレスの駅が近いから、おなかいっぱいの幸せのまま飛び乗ると、あとは、眠りの世界へ一直線になる。
この夜も、幸せな夜になった。
●「龍圓」
東京都台東区西浅草3-1-9
Tel.03-3844-2581
営業時間:
火~土
12:00~14:00、17:30~21:00(L.O.)
日・祝
12:00~14:00、17:00~20:30(L.O.)
定休日:月曜日(祝日の場合は翌日休)