日本国内のコンビニエンスストア(以下CVS)の店舗数は、2015年12月末時点で5万3,544店(日本フランチャイズチェーン協会加盟チェーン9社合計:サークルKサンクス、スリーエフ、セイコーマート、セブン-イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ポプラ、ミニストップ、山崎製パンデイリーヤマザキ事業統括本部、ローソン)とのことです。2010年の同月には4万3,372店だったので、5年で1万点増えたということです。大都市などでは出店がとくに多く飽和状態にも見えますが、全国的に見ると大手チェーンが展開を開始したばかりの県があり、今後もCVSの店舗数はまだまだ増えていくでしょう。
そうざいに力を入れるコンビニエンスストア
かつては、CVSと言えば店頭にたむろする若者が問題になるなど10代〜20代の人向けの店というイメージがありましたが、現在はそれより上の年齢層の利用もしっかり取り込んでおり、とくに60代後半に入った団塊の世代を中心にシニア層も重要な顧客層として重視しています。
ターゲットがこのように上の世代へシフトするにつれて、品揃えの傾向も大きく変わりました。象徴的な例としてインスタント食品に注目すれば、かつてどのCVSにもカップめんがありましたが、袋めんを置く店は少なかった。それが、今ではたいていのCVSがカップめんと袋めんの両方を扱っています。つまり、ポットややかんで湯をわかすだけでなく、自前の鍋も使えば食器も使うお客を対象としているということです。
その他の食品の品揃えにも変化があります。CVSはもともと、買ってそのまま食べられるおにぎり、弁当、レジ周りのフライやおでんなどのホット商品などのRTE(Ready To Eat)を重視してきました。それは、現在もオフィス街や幹線道路沿いでビジネス客が多い店舗では変わらぬ傾向ですが、現在増えている住宅街立地の店舗では、そうとは言えません。むしろ、ご飯のつかないそうざい類や日配品(牛乳・乳製品、ハム・ソーセージ類、コンニャク、豆腐、納豆、漬物、練物等)の棚を増やしているCVSが多いものです。あるCVSの商品開発担当者ははっきりと言います。「そうざいは売れるけれども、弁当が売れなくなった。弁当をこれからどの程度扱うべきかが悩みだ」。
季節の食材を使うことが次の戦略だが
CVSでそうざいが売れる理由は、いくつかの事情が複合しています。「買い物難民」という言葉がメディアで扱われるようになったとおり、スーパーマーケットが地域から撤退したことで生鮮品を買いにくくなった人たちがいます。これはとくにシニア層で深刻な問題です。また、子育て世代では、共働きが普通になり、妻が毎日家で食事を用意するということが必ずしも標準でなくなってきています。ここで夫が食事を用意する場面が増えるわけですが、そこで手っ取り早くそうざいを買って帰るスタイルが浮上してきます。
さらに、夫婦ともに仕事・子育て・介護などで多忙となって、週末にレジャーがてらたっぷり買い物をするというスタイルよりは、仕事帰りに少しずつ買い物をして帰る方を選ぶ人が増えているとも考えられます。
CVS各チェーンが近年販売しているそうざいについて、以前、料理人や食品関連の仕事に従事するプロに試食してもらって、その結果を雑誌の記事で発表したことがありますが、概して評判のよいものです。とくに、昔のそうざいのように塩味や甘味が強すぎず、日常の食事にも使いやすいという評価が聞かれました。
しかし、各社とも好評価となると、次は何をセールスポイントとして他チェーンに勝つかということが問題となります。これに対して、複数のCVSの商品開発担当者たちが口を揃えたのが、「次は季節感だ」ということでした。
ところが、これが難しいと言います。その原因は、店舗数の多さでした。あるコンビニの役員はこう話します。
「たとえば、春になれば、お客様はタケノコを使った料理が食べたいという。しかし、店舗数は万単位。あるそうざいを商品化しようとした場合、1日当たり数万から10万点を揃える必要がある。それだけの数に使用するタケノコが国内で計画通り入手できるかと言えば、今のところノー。すると、中国産の少なくとも1年前に収穫したタケノコの缶詰を使うしかない。それは本来、季節の料理としてお客様が求めているものとは違う」
「スケールメリットならぬ、スケールデメリットです」——同じ悩みは各社で共通でした。しかも、もちろんタケノコだけの話ではなく、あらゆる野菜、旬のあるあらゆる食材について、この悩みがあり、本来国産、さらには地域産で作りたい季節商品が、多くの場合外国産頼みになってしまうものだということでした。
求められていながらまかなわれないというのは、もったいない話なのですが。
※このコラムは日本食農連携機構のメールマガジンで公開したものを改題し、一部修正したものです。