牛生レバー提供容疑で焼肉店の店長と経営者が逮捕という話題が気になっているタクヤ。牛生レバーという食べ物は忘れようと言うリョウ。しかし、提供の道を拓く方法はあるとタクヤは言う。
生レバー食べてカンピロバクター感染か
リョウ 「来たか。ごくろう」
タクヤ 「ついに出ました、逮捕者が」
リョウ 「オレは何もしてないぞ」
タクヤ 「焼肉店でお客に生レバー食わせたなという容疑で、店長と社長が逮捕された話ですよ」
リョウ 「ああ。あのニュースはけしからんよ」
タクヤ 「ですよね」
リョウ 「問題起こした焼肉店『焼肉牛宗まるなか』京都男山店を経営してたのは、大阪・阪南町の丸中精肉店だ。朝日新聞のサイトによるとだ、ここが経営していた焼肉店はたったの『計3店舗』。なのに、ほとんどの新聞とテレビは『チェーン店』と書いてやがる。『チェーン』というのは、11店舗以上を直営するものを言うんだ。何も考えないで記事書いてるやつらが多すぎるんじゃないか?」
タクヤ 「そっちか」
リョウ 「読売まで『京都府八幡市内の焼き肉チェーン店』なんて書いてるんだから、渥美俊一は今ごろ天国で青筋立てて怒鳴りまくってるだろうな」
タクヤ 「また、そういうチェーンストア勤務の人でないとわからないネタを」
リョウ 「というわけで、どれもこれも1行目で読む気失せる記事ばっかだったんだが、コトの顛末はどうなってるんだ?」
タクヤ 「店舗数知ってるのに読んでないとおっしゃる。なんでも、8月30日夜に『焼肉牛宗まるなか京都男山店』で、9人のお客が食事をして、その後、4人が嘔吐、発熱。お客の1人からカンピロバクターが検出されたと。うち1人は約1週間入院して、保健所の調査に『生レバーを食べた』と話したそうです」
リョウ 「ふーん。それで、発熱・嘔吐の原因、カンピロバクターが由来したものは牛生レバーと、断定したわけ?」
タクヤ 「いや、今のところ保健所は食中毒の原因を特定していないですね。でも、警察が店などを捜索した結果、生レバーを提供していたことがわかったので、牛レバーの非加熱提供という食品衛生法違反の容疑で逮捕、と」
リョウ 「これ気をつけなきゃいけないんだよな。容疑者はまだ犯罪者と決まったわけじゃないんでね」
タクヤ 「警察発表によると、店長は容疑を認めていて、社長は『焼くよう説明していたはず』と否認しているそうです」
リョウ 「ま、しょせん警察発表だからな。続報を待つ、ということで」
肉の生食には死亡事故の可能性あり
タクヤ 「しかし、生レバー提供禁止が決まってからも、けっこう“脱法レバー”出してる店は見かけるのでどうかと思ってましたが、逮捕に踏み切る警察があったというのは、やっぱり当局はちゃんと本気で取り締まる気はあったんですね」
リョウ 「そりゃそうだろ。肉を生で食わせるっていうのは、相手を死なすことがあり得ることなんだからな」
タクヤ 「ま、お店やってる人には今一度こちらを読んでいただきたいと」
リョウ 「しかし、この丸中精肉店ていうのは、レストランの店名に洒落で『精肉店』とか『農場』とかという単語を使う最近よくあるナンチャッテものとは違って、プロの肉屋さんらしいな。なんでこんなヘタ打ったのかね」
タクヤ 「さあ。『よくわかっている相手から仕入れてきちんと処理すれば生でも大丈夫』と考えてたんでしょうかね。牛生レバーは、外側じゃなくて内部から腸管出血性大腸菌が検出されたので危険とされたわけですが、ベテランほど『こう処理すれば大丈夫』という長年の常識にとらわれていることがあるかもしれませんね」
リョウ 「生レバー禁止が決まったときは、『食わせろ』『提供させろ』と大騒ぎだったもんな」
タクヤ 「『肉の生食は日本の食文化だ』という意見もたくさんありました」
リョウ 「あれさ、ウソだろ? オレが子供の頃、冒険家の植村直己が北極圏犬ぞり行の準備のためにエスキモーと共同生活した話を本で読んですげーと思ったんだけどさ、食事は生肉だって聞いて、オレにはムリと思ったもん。それはアザラシとかだけど、どんな肉でも生で食うのはできないなーと思ったよ、あの頃」
タクヤ 「今ならエスキモーの食事、それどんな味だろう、おいしいのかな、食べてみたいかなぐらい思いますけどね。昔は肉を生食するなんて、普通にできることじゃないなという感覚はありましたよね」
リョウ 「味が想像つかなかったのと、間違いなく食中毒で死ぬか、寄生虫と一生のお付き合いとか、そんな風に思ったもんだよ。親父なんかとくに寄生虫怖がって『七代祟る』なんて言ってたもんな。ま、とにかく、生肉で殺菌なんてできないことなんだから、牛生レバーという食べ物があったことは忘れるしかないんだろうな」
タクヤ 「そうですかね? 手はあると思いますよ」
リョウ 「え? そんなのあるのか?」
放射線照射で食品や包材を滅菌
タクヤ 「たぶん、唯一可能性があるのは、食品照射ですよ」
リョウ 「食品商社? 商社に何ができるんだ?」
タクヤ 「商社じゃなくて、照射です。食品に放射線を当てることを食品照射と言うんです」
リョウ 「えーー。お前、こんだけ世の中が“放射能アレルギー”起こしてるときに、よくそんな話ができるな」
タクヤ 「え。だって、食品照射は放射性物質の使い方の中でもシゴク安全で平和なものだと思いますけどね」
リョウ 「まじかよ。それってつまり、食品に付いてる微生物とかを放射能を浴びせて汚染させてやっつけるってことなんだろ?」
タクヤ 「全然違います。あの、隊長、用語から間違ってるんですけど。『放射能』というのは、放射線を出す性質、または能力(デジタル大辞泉)のことですので、『放射能を浴びせる』という表現はアホです。隊長が言いたいのは、『放射性物質を浴びせる』でしょうね。モノと能力を混同しないでください」
リョウ 「ふむ。それはあれか、女子とは手をつなげるけど、女子力とは手をつなげないとか、そういうイメージでOK?」
タクヤ 「うーん。たぶん、そんな感じ」
リョウ 「じゃ、食品照射で当てる『放射線』ていうのはなんだ?」
タクヤ 「女子、女子力じゃ説明しにくいなぁ。あえて言えば、秋波ですかね。でもちょっと余計わかんなくなっちゃうなぁ、この喩えだと」
リョウ 「有名な喩えがあるな」
タクヤ 「あれは尾籠な話なので、食のサイトで紹介するのはちょっと……。原発屋さんなんかがよく使う喩えだとですね、放射性物質が蛍、光が放射線、光を出す能力が放射能、こんな感じです」
リョウ 「ふーん。ポエムだね。じゃなにかい。食品照射というのは、食品に蛍をたからせるわけではなくて、蛍の光を当てるだけよと、そういうこと?」
タクヤ 「そういう感じです。放射性物質で汚染するようなこととは全く違います」
リョウ 「そんなんで何か効果あるのか? だいたい、そんなやり方、実用レベルの話じゃないんだろ?」
タクヤ 「いえいえ、世界中で盛んに使われてますよ。食品照射された食べ物だって、私たちしょっちゅう口に入れてますし。あと、前回まで話してた包装資材だって、照射されたものがけっこう出回ってますよ」
リョウ 「それは殺菌のため?」
タクヤ 「『殺菌』というよりも、全滅させる『滅菌』ですね」
前回補足・蒸着フィルムの遮光性
リョウ 「そんなことあるのかぁ。じゃ、そこんところを詳しく」
タクヤ 「今日はこれから女子と約束があるので、このへんで」
リョウ 「なんだちくしょう。あ、待て待て、包装資材と言えば、読者からのお便りがあるので、それ読んでから行け」
タクヤ 「はい」
リョウ 「前回のお前の蒸着フィルムの説明で、遮光性があるという話だったんだが、それについて。『光とガスを遮断するアルミ蒸着フィルムとありますが、その遮断するためでしたら、アルミ蒸着でなく アルミ箔入りが最適です。蒸着では相当厚みがないと遮断はできず、減少させるだけでしょう。したがって例えば PET/Al/LLDPE(ラミネートは省略)のようにアルミ箔入りの方が目的に合致します。レトルトパウチの商品はほとんどが アルミ箔です』と、わざわざご連絡を頂戴したぞ」
タクヤ 「ありがとうございます。隊長、ポテチの袋とかランプにかざしたことあります?」
リョウ 「ないよ。ここにあるから、やってみるか……。あ、内側からのぞくと、外側の印刷文字が透けて見えるぞ」
タクヤ 「蒸着フィルムの遮光性というのは、それぐらいのものということです。あと、透明蒸着フィルムでも紫外線吸収剤を練り込んだフィルムを使ってUVカット性能を持たせた透明蒸着フィルムというものがいくつかリリースされています。いろいろな用途に、いろいろな性能の、いろいろな価格のものが次々に出て来てますので、ちょっとわくわくする分野です」
リョウ 「ふむ。じゃ、君は女子とワクワクして来なさい。またな」