増粘多糖類っていろいろあるじゃないかの巻

タラガムの原料、タラの種子
タラガムの原料、タラの種子。

増粘多糖類が何なのか説明しろとリクエストしたリョウ。ところが前回は糖の説明で時間切れとなった。

グリコも多糖類

リョウ 「来たか。ごくろう。ポカポカしてきたからアイスコーヒーを作っておいてやったぞ」

タクヤ 「あざす。増粘多糖類の説明の続きをしに来ました」

リョウ 「頼む。しかしだよ、単糖がたくさんつながったら甘くないなんて理屈に合わんじゃないか。多糖っていうのは、それじゃあ、たとえばどんなものだ」

タクヤ 「でんぷんも多糖ですね。あれは味しないでしょう? その仲間にアミロースというのもあります」

リョウ 「アミロース知ってるぞ。それが多い米はおいしくないって聞いたことがある」

タクヤ 「ですね。グリコーゲンというのも多糖です」

リョウ 「肝臓で作るやつだ。江崎グリコのグリコはグリコーゲンのグリコだ。海のミルク、カキにも入ってるぞ」

タクヤ 「そうです。あとセルロース」

リョウ 「ああ。植物の繊維だよな。細胞壁はセルロースから出来てるんだろ」

タクヤ 「知識にムラのある人だ」

リョウ 「何か言ったか?」

タクヤ 「いえいえ。で、そういう多糖類の中で、食品に粘りを出すのに使うのが、増粘多糖類というわけです。ゲル化させるために使う場合はゲル化剤と言ったり、液状の素材がちょうどよく混ざった状態を保つために使う場合は安定剤と言ったり、同じ物質でも用途によって呼び名は変わります」

リョウ 「プリンには『ゲル化剤(増粘多糖類)』と書いてあったな。ゲルって何だ?」

タクヤ 「こんにゃくみたいに固まっているのがゲル。シャバシャバした液状なのがゾル、です」

リョウ 「今またざっくり説明しただろ。大丈夫か」

タクヤ 「えー、分散系というものがあります。小さな粒子が他の気体とか液体とか固体の中に混ざっちゃってるものです。分散というもので、混ざっちゃってる粒子がある一定程度より小さい場合はコロイドと言いまして……」

リョウ 「あ、もういいや。要はあのプリンみたいに固まってるものがゲルってことだな」

タクヤ 「そです」

ガムシロのガムはアラビアガムのガム

タラガムの原料、タラの種子
タラガムの原料、タラの種子。

リョウ 「じゃあさ、増粘多糖類が何かそんな糖というか単糖がわや~ってくっついたものとかどうとかはいいんだけど、つまり、これは何だ? 何かから採れるものなのか、それとも化学反応で作ったりするものなのか」

タクヤ 「これがですね、実にたくさんの種類があります。さっきセルロースと言いましたが、セルロースも増粘多糖類として使われます」

リョウ 「へぇ。それは植物由来ということか」

タクヤ 「セルロースは樹木から取ったり、海藻から取ったり、サツマイモから取ったり、いろいろな種類の製品があります」

リョウ 「木からねぇ」

タクヤ 「樹木から取る増粘多糖類は他にもいろいろありますが、たとえば樹液から取るアラビアガムも代表的なものですね」

リョウ 「アラビアガムって、接着剤の原料だろう? 食えるのか?」

タクヤ 「隊長、今アイスコーヒーに何入れました?」

リョウ 「ガムシロ」

タクヤ 「ガムシロップのガムはアラビアガムのガムですよ」

リョウ 「あ、そうだったのか!」

タクヤ 「今はアラビアガム以外の増粘多糖類を使っていたり、単に砂糖を溶かしたものだったりいろいろですが、言葉の由来としてはそうです」

リョウ 「へぇ」

タクヤ 「ガムと付くものには、ほかにローカストビーンガムというのがあります。LBGって略称で呼ぶとプロっぽいです」

リョウ 「そりゃ、やっぱり何かの木の樹液なのか?」

タクヤ 「いえ。これはカロブ樹というマメ科の木の種子から取ります」

リョウ 「カロブ樹? 知らん木だな」

タクヤ 「地中海沿岸にしかないようですね。和名ではイナゴマメって言います。イナゴみたいな形の莢の豆が成るんですが、これを丸ごと乾燥したものはキャロブといって食用です」

リョウ 「どんな味がするんだろうな」

タクヤ 「食べたことないですが、話によるとチョコレートっぽい風味があるとか」

リョウ 「ほう」

タクヤ 「宝石の重さの単位でカラットというのがありますね」

リョウ 「突然何だ? 1カラットは0.2gだ」

タクヤ 「あのカラットという言葉は、イナゴマメのギリシャ語名が語源だそうです。その豆の重さぐらいということなんでしょうね」

リョウ 「へぇ。じゃ、まあ昔からなじみのある植物っていうことなんだろうな。『なんとかガム』っていうのは他にもあるのか?」

タクヤ 「グァーガムというのがあります」

リョウ 「沖縄でマチグヮーと言ったら市場のことだ」

タクヤ 「関係ありません」

リョウ 「楳図かずおが昔『まことちゃん』というマンガを描いたそうだ」

タクヤ 「それはグァーじゃなくて『グヮシ!』でしょ」

リョウ 「詳しいな。お前、年いくつだ?」

タクヤ 「グァーガムというのは、グァー豆というマメ科の1年草のマメから取る増粘多糖類です」

リョウ 「そんな豆もあるのか」

タクヤ 「インドなどで作っているようです。豆や種子の類では、やはりマメ科のタラという木の実から取るタラガム、同じくタマリンドの種から取るタマリンドシードガムというものもあります。サイリウムシードガムというのもありますが、サイリウムというのは、道端で踏まれても踏まれても育つオオバコです」

リョウ 「まだありそうだけど、また聞かせてくれ」

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もの書き稼業 きた・はるか 理科好きの理科オンチ。