今年のエビ事情はかつてないほど深刻であると前回書いたが、そのときより状況はさらに悪化している。
メキシコEMS禍にアメリカ需要期
価格自体は一見高止まりして落ち着いているように見受けられるが、新規の取引を開始しようとしても、年内の着荷はまず無理で、既存顧客に対してもディレイ(供給遅れ)が発生している。
2013年は世界各国でEMS(Early Mortality Syndrome/前回参照)が発生して状況を悪くしている。そのEMSがメキシコでも発生しそうだということを前回書いたが、ついに大規模発生という事態に陥った。そこへ来て、アメリカのクリスマス需要対応の最盛期を迎えた現在、メキシコに買いを入れられないことから、インドネシア、タイ、エクアドルにいっせいに注文を出したことが、原料不足に拍車をかけることとなった。
中国産水揚げは6割か
もう一つ原料不足の原因と考えられるのが、最大産地の中国の減産だ。筆者のもとには中国の2013年の水揚げは前年比60%という情報が伝わってきている――これは確認のしようがない噂ではあるが、信憑性は高いと受け止めている。
現在、中国とベトナムの国境沿いの防城港からの輸出をCIQ(customs=税関、immigration=出入国管理、quarantine=検疫のこと。これらを執行する当局)が何らかの理由で禁止している。この防城港付近の地区は、ベトナムからのエビの調達の拠点となっており、Seafood.com Newsでの情報では1日に300tのエビがベトナムから中国へ密輸されているらしい。エビの種類はバナメイ(養殖)とベトナム産シーピンクあたりだそうだ。この密輸のエビは中国国内向けで海外輸出はしないとのことだが、密輸原料はCIQ検疫外なので残留抗生物質や病気が心配される。この時期エビを輸入する際には十分に注意したい。
天然ものも暴騰
またこの間に月間1万t近い量が中国に流れていることから、ベトナム国内も原料不足で、ベトナム最大のエビ加工メーカーの稼働率は約20%まで落ち込んでいるとのことだ。この結果、原料不足はベトナム国内のバナメイだけでなく天然ものにまで波及し、浜値が暴騰している。最大生産地の中国が国内向けの供給すらおぼつかない状況では、海外向けにまで回らないという状況だ。
タイの養殖バナメイについても状況は似たようなもので、前年比50%まで落ち込む見込みだ(下表参照)。
この傾向は早くても2014年6月の水揚げまでは解消されないだろう。そのときにEMS禍が落ち着いていれば7月・8月には供給不足が解消されるかもしれないが、今のところよい見通しは立てづらい状況だ。
年 | 池揚げ |
---|---|
2010年 | 552 |
2011年 | 506 |
2012年 | 482 |
2013年 | 220 ※ |
※2013年は見込み値。