レタスは8月の主要産地の雨の影響を受けて、9月も価格は高騰。価格が高いときのレタスは、量・歩留まりとも低下する上、品質としてもよくない。そんな中、人工光で結球のよいレタスを安定して生産できるようになったという会社が訪ねてくれた。
8月の雨で高騰。10月まで続くか
8月10日より前は高原主要産地露地物の収量は比較的良好だった。しかし、8月10日から事情が変わってきた。この日以降は雨量が多く、雨が降らなかった日は2日しかなかった。期待していた北海道もゲリラ豪雨にやられて収量は大幅減。
この結果、日本全体の収量が大幅に下がり、9月の相場高騰を招いている。9月第1週の市場相場はケース5000円を超えてきている。
レタスの規格は1ケース8kg~10kgで通常1000円前後だが、原料不足が深刻になるとこれが5倍、ひどいときには10倍を超えるときまである。10月上旬から茨城県産が潤沢に出てくるまでは、こうした高騰が継続すると思われる。
価格上昇、歩留まり悪化、品質低下
レタスは雨が降ると結球が甘くなる。また重量が乗ってくる前に外葉が腐り始める。そのため、産地は通常のサイズになる前に収穫を開始する。その時の生理障害の度合いにもよるが、通常の60%の重量で収穫してしまう。
加工工場では、結球が悪い軽いレタスは最終製品になるまでの歩留まりが悪化する。通常1ケースに8kg入っている場合、最終製品は4.5kgは取れる。ところが、原料状況が悪くなったときは1ケースに5~6kgしか入ってこなくなる。そのため、同じ量の製品を作ろうとすると倍の2ケースが必要になる。
したがって、製品歩留まり通常の60%から20%~30%まで落ちてしまう計算だ。しかもケース単価は前述のとおり。もちろん弊社では市場相場価格での仕入れはしていないが、歩留まりの悪化はダイレクトにコストアップになる。
さらに原料の品質も悪化する。雨のときのレタスは葉が軟らかくなり、変色もしやすく、肥料や殺虫剤の効きも悪くなるので虫の混入率も上がる。価格が安いときの健康な野菜はこの状態の全く逆であり、味もよい。
植物工場産で結球のよいレタスが登場
チェーン本部としての供給責任を考えると、この定期的に来る天候不順に対するリスクヘッジを考えないといけない。その一つの道として、安定供給には絶対的なメリットのある植物工場の可能性を検証する必要がある。
8月の初め、とある取引先が「レタスを見てほしい」と事務所に持ち込んできた。状態は全くもって普通で、どちらかというとかなりしまっていて重たい感じがした。弊社も植物工場のリサーチを始めて久しいが、露地物より重く結球したレタスにお目にかかったのはこれが初めてだった。
1年半ぶりぐらいに再会したその担当者氏は、ニヤッと笑い、「これは植物工場で作ったレタスなんですよ! やっと結球レタスが安定的に生産できるようになりました」とうれしそうに話してくれた。2年ぐらい前に結球レタスの技術開発ができたという話は聞いていたが、その後音沙汰がなかった。しかし今回やっと安定供給ができるようになったので、一番に持ってきてくれたということだった。
価格は3~4倍。それでも魅力はある
一般的に植物工場製品は露地物と比較してコストが高く、約3倍から4倍になる。現在商業ベースに乗っていると思われる工場は、私が知る限り2社しかない。
コストを気にしなければ、どこでも野菜を作ることができる植物工場にはメリットがある。たとえば中近東や沖縄など、気候的に葉物野菜が作れなかったり向かないところではメリットがある。物流コストと鮮度を考えれば、生産コストが高くても必要とされる場所はある。
しかし、北から南まで野菜の産地リレーを確立できる有利さを持つ我が国では、植物工場のメリットはあまりないと言えるかもしれない。しかしながら、コスト部分が解決できれば、天候に左右されない安定生産には魅力がある。