タイ産エビの主流となっていたバナメイエビが、今年天候不良等によって供給難を生じている。代わって、ブラックタイガーに力を入れていたベトナムが、バナメイエビ増産に転じてきている。
低温と洪水で大打撃
タイ産のエビは、数年前からバナメイエビ(Litopenaeus vannamei)が主流になっている。ブラックタイガー(Penaeus monodon)と比較して病気に強くて管理がしやすく、歩留まりがよいため、今ではほとんどの生産者がバナメイエビを養殖している。
そのタイのバナメイエビの原料不足が深刻化している。
原因としては、今年の3月中旬からタイ全域で気温が異常に低い日が続いたことが大きい。例年この時期のタイの最高気温は35~40℃程度だが、今年は最高気温が25~30℃とかなり低い日が続いた。
その結果、養殖池の水温も低くなり、稚エビの生存率の低下や、成長スピードが著しく遅くなるといった影響があった。さらに、この歩留まりの悪さから養殖池に稚エビ投入を見合わせる養殖業者も多く、全体的な生産量が落ちる傾向になった。
その上3月末、悪いことにタイ南部で大規模な洪水が発生した。スラタニ(スラートターニー)県を中心とするタイ南部は養殖バナメイエビの70%の生産をカバーし、弊社の取引先メーカーの契約池もこの地区に多く存在していた。ところが今回の洪水の結果、養殖過程にあったバナメイエビ5~6万tが瞬時に失われたとの報告が上がってきた。この数値はタイ国の年間生産量の10%に相当する。また洪水によって道路等のインフラにも被害が出ており、養殖池から工場まで短時間での搬入が出来なくなり、鮮度面での問題も発生してきている。
端境末期に加え、低温・洪水の被害によって良質バナメイエビ原料の確保が厳しい状況は、当然調達コストにも影響してくる。洪水以降は原料価格が20%程上昇しているが、価格はもとより量の調達が厳しい状況が継続している。洪水から3カ月が経過し、インフラは回復してきて価格は落ち着く方向にあるが、高値推移傾向は否めない。
ベトナムのバナメイ・シフトに期待
一方、タイの事情を受けてか、ベトナムのバナメイエビの輸出量は増加傾向だ。ベトナムのエビ輸出額は前年比で約3億ドル増の18億~19億ドルに達し、そのうちバナメイエビの輸出額がエビ輸出額全体の半分を占めると思われる。
これまでのベトナムはブラックタイガーで差別化する政策を取っていたが、今年初めてバナメイエビ輸出額がブラックタイガーの輸出額と同じ額に達するのだ。
ベトナムの品質管理レベルは数年前と比較して格段に進歩している。調達の際には最新情報を確認することをお勧めしたい。
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●参考記事:2013年輸入エビ調達難・バナメイエビ時代は終わるのか?
※このコラムに当初使用していたバナメイエビ産地で撮影したエビの写真は別種のエビの可能性があるため写真を差し替えさせていただきました(2013年10月27日)。